高齢者の高血圧は、脳卒中などを予防するためにどのくらいまで薬で下げたら良いでしょうか?

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こんにちは。研修認定薬剤師の奥村です。今回は高齢者の高血圧の降圧目標の話です。

70歳台男性の患者さんが来局されました。血圧が160に近く、降圧剤を追加することになったそうです。バルサルタン40mg 2週間分が追加されていました。高齢者の血圧は幾らまで降圧したらよいでしょうか。

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JSH2014では高齢者の降圧目標150/90と設定しています。このカットオフ値の妥当性を裏付けするものに、VALISHと言う臨床研究があります。試験組み入れの対象となったのは、70-84歳の患者でsBP>160、脳卒中既往が6%台、脂質異常症治療が23%程度含まれると言う患者で、今回の患者さんにも外的妥当性があると判断しました。

VALISH試験では未治療またはCa拮抗薬等服用中の比較的健康な高血圧の高齢者において、バルサルタンをアドオンした降圧療法を行い、1次エンドポイントである複合心血管イベントの発症率はsBP140未満と140-150では有意な群間差を認めませんでした。

3079人のトライアルで検出力不足であり、試験前に見積もった程のアウトカムの差が無かったのでしょう。1次エンドポイントの絶対リスク減少(ARR) 0.14%/年 治療必要数(NNT) 714人, ハザード比0.89;95%信頼区間0.60-1.34(p=0.38)、また2次エンドポイントの致死的・非致死的脳卒中に関してもハザード比0.68;95%信頼区間0.36-1.29(p=0.237)と有意差はありませんでした。

http://circ.ebm-library.jp/trial/doc/c2002375.html

Target blood pressure for treatment of isolated systolic hypertension in the elderly: valsartan in elderly isolated systolic hypertension study. PMID:20530299

この結果から、今回の患者さんも診察時に150/90未満を目標とすればよいかと思われます。

バルサルタンは2-4週の服用で効果が十分に発揮されるため、次回、降圧効果を確認します。ARBの副作用である血管浮腫が起きてないか、また今後カリウム値を測定していれば、高カリウム血症を起こしていないかも確認が必要でしょう。