蓄積率とritschel理論で反復投与時の最高血中濃度を予測する。



蓄積率とritschel理論で反復投与時の最高血中濃度を予測する。

☑️はじめに

半減期が延長している患者さんが薬を飲んだら、定常状態の最高血中濃度は何倍になりますか?

薬剤師あるあるの臨床疑問です。血中濃度が上がるのは予想出来るけど、でも何倍?だれかタスケテ…

この疑問に答えるのが「蓄積率」と言う概念です。半減期と投与間隔から表を見れば、公式の計算も不要です。

疑義照会や処方提案も、具体的な数値を示しながらだと、成る程と思ってもらえるはず。

薬剤師ならマスターしたい蓄積率。反復投与して定常状態になったときの最高血中濃度を予想出来るようになります✨

それでは見て行きましょう✨

☑️Ritschel理論、半減期と投与間隔の持つ意味

薬が体から無くなるより早い間隔で薬を飲めば、体内濃度が高くなるのは直感的に分かると思います。

ある薬物を反復投与した場合、投与間隔(τ)を半減期(t1/2)で割ったものが3以下であれば、半減期の5倍の時間で定常状態に達します。

これをRitschel理論と言います。
τ/ t1/2≦3
τ:投与間隔 t1/2:半減期

☑️薬学の蓄積率とは。公式で求め、定常状態の最高血中濃度を予測

この時、蓄積率(R)を使用すると、薬物の定常状態における最高血中濃度(Css.max)を簡便に計算することが出来ます。
R=1/(1-exp(-kel・τ))
=1/(1-exp(-0.693τ/ t1/2))
Css.max=R・Cmax
kel:消失速度定数

灘井 雅行 薬物動態の基礎と薬物投与設計への応用 日児腎誌 Vol.19 No.2 111-123

出典: www.jstage.jst.go.jp

公式を書きましたが、暗記する必要はありません。後で掲げる表を見れば、計算すら不要になります。

後、蓄積率の適応にあたって幾つか留意すべき事があります。

蓄積率の適応にあたって留意すること ①体格の補正

Cmaxが外国人のデータである場合、体格を補正する必要があります。おそらく体重は日本人より大きく、元データの分布容積が大きいので、そのままでは血中濃度を実際より小さく評価する可能性があります。
Cmax=F・S・D/ Vd
F:バイオアベイラビリティ S:塩係数 D:投与量 Vd:分布容積

蓄積率の適応にあたって留意すること ②半減期の補正

薬物が腎排泄型で、患者の腎機能が低下している場合、元データに比して半減期が延長している、全身クリアランスが小さくなっているので、そのままでは患者の血中濃度を実際より小さく評価する可能性があります。腎機能に応じた半減期を文献検索すべきです。
Cltot=kel・Vd=0.693Vd/ t1/2

☑️蓄積率は、具体的な薬物動態の求め方ではなく、通常の何倍になるかを求める方法

①②で見てきたように、蓄積率はざっくりした予想です。具体的な血中濃度を予測するよりは、半減期が延長している場合に、定常状態の最高血中濃度が通常の何倍になるか、と言う観点で使用するのが良いです。

☑️実例:表を用いて簡便に最高血中濃度を推定してみる

お待たせしました。いよいよτ/ t1/2と蓄積率の関係を計算した表を利用して、簡便に最高血中濃度を推定してみましょう。

パラメーターは投与間隔と半減期の2つだけです。投与間隔を半減期で割った数値に対応する蓄積率が、次の表から得られます。

 
τ/ t1/2 >4 3.0 2.0 1.5 1.0 0.8 0.7
蓄積率R 1.0 1.1 1.3 1.5 2.0 2.4 2.6

☑️レボフロキサシン(商品名クラビット)は、腎機能が低下して半減期が延長すると、定常状態の最高血中濃度は何倍になる?

レボフロキサシンは添付文書を参照すると、腎機能正常であれば半減期9.17時間ですが、中等度低下で15.88時間に、高度低下で33.67時間に延長しています。

クラビット錠500mg 添付文書

国内においてクレアチニン・クリアランス値(Ccr)により群分けし、レボフロキサシン500mgを空腹時単回経口投与した場合、腎機能の低下に伴い血漿中濃度の生物学的半減期の延長、尿中濃度の低下及び尿中排泄率の低下が認められた。

出典: www.info.pmda.go.jp

腎機能に応じた減量基準に従わず、常用量500mgを24時間おきに投与した場合、τ/ t1/2は、各々2.6、1.51、0.71なので、蓄積率Rは、各々1.1~1.3、1.5、2.6と推定され、定常状態の最高血中濃度は、単回投与時のCmaxのR倍と予測されます。

☑️蓄積率と言う概念で、腎機能低下時のリスクを可視化出来る

レボフロキサシンの中枢神経系への副作用は用量依存性があるとIFに記載されていますから、蓄積率と言う概念を使用することにより、減量しない処方の有するリスクが可視化されると考えます。

クラビット錠500mg インタビューフォーム

腎機能低下患者(Ccr<50mL/min)において、添付文書に示されている用法・用量で調節した場合、用量依存的と考えられる中枢神経系副作用は認められなかったが、用法・用量を調節せず、500mg、1日1回連日投与されていた症例に、痙攣等の中枢神経系副作用が認められたことから、腎機能が低下している症例では添付文書の記載に従い、腎機能に応じて用法・用量を調節し投与すべきと考えられた。

出典: www.info.pmda.go.jp

☑️まとめ

蓄積率の求め方が分かって頂けたと思います。簡単なので、ぜひマスターして薬局の日常業務に取り入れましょう。

処方提案でもスムーズに行くかと思います。

☑️参考文献

1)灘井 雅行 薬物動態の基礎と薬物投与設計への応用 日児腎誌 Vol.19 No.2 111-123

読んで下さってありがとう☺
ゆきでした。

薬剤師の仕事に興味を持ったあなたに、全力でお勧めのコミックがあります‼☺

購入は⬇から。もちろん送料は無料です📚✨


☑️コラム

 

わたしが蓄積率を調べるきっかけとなる出来事がありました。

 

ある時、透析患者さんにクラビット®️500mgが連日で処方になりました。平均透析クリアランスは10mL/分程度。メーカーサイトではクレアチニンクリアランス20以下に準じた用法用量を推奨していたので、病院に疑義照会したのです。

結果は「高い血中濃度を維持したいので処方通りでお願いします。」

高い血中濃度ってどれくらい高くなるんだろう?この疑問を解消するために得た知識が今回の記事になりました。

また白鷺病院のデータベースを参照したところ、MIC1μg/mL以下であれば、CCr20以下に準じた用法用量で十分なCmax/MIC比を得られる、との論文が引用されていました。
( Sowinski KM: Am J Kidney Dis 42: 342, 2003; PMID :12900817)

もちろんリスクベネフィットを考えて処方の是非を最終的に判断するのは医師です。

しかし薬の専門家として、「半減期の延長により蓄積性が生じます。7日間の反復投与により最高血中濃度は2.6倍に上昇します」と判断材料を提供することは、業務の質の向上に繋がるのではないか、とわたしは考えています。

☑️関連記事

ザイザル半錠を1日2回服用すると、1錠1日1回と比較して、定常状態の体内濃度のピークをー32%抑える。

1日1回夕食後にリリカを飲んでいて、ふらつきが翌日の午前中まで続く人は、1日3回に分けて飲むと、ふらつかなくなる可能性があります。蓄積率を応用して定量的に考察しました。

⬇蓄積率をマスターするぞ、と思って下さったあなた、バナークリックをお願いします✨

にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ
にほんブログ村

自分だけ知ってるのはもったいないと思って下さったあなた、⬇のSNSボタンでシェアをお願いします😉

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA