シンバスタチン服用中にイトラコナゾールのパルス療法を受けて横紋筋融解症を来たした例。

こんにちは☺アロマ薬剤師🌿ゆき🌿です。今日は併用禁忌についての話を書きます。ちょっと真面目な話です😩

わたしが以前、過去の電子薬歴を見ていて見つけた症例です。

Aさん(仮)当時64歳は、内科で高コレステロール血症の治療を受けていましたが、ある時皮膚科から爪白癬の治療を受けることになりました。

これがその際の処方です。

イトラコナゾール400mg/日(爪白鮮のパルス療法。)
シンバスタチン10mg/日

当時担当した薬剤師は、イトラコナゾールとシンバスタチンが併用禁忌に当たる為、疑義照会しました。けれど皮膚科医師からは処方通りとの返答で、調剤したと記録にあります。

読み進めます。

イトラコナゾール服用3日目でAさんは顔面浮腫、体重も3~4kg増えました。血圧も低下していたそうです。Aさんは医師に電話で相談、イトラコナゾールとシンバスタチンを中止するように言われました。

中止したところ、浮腫みは治まったとの事です。

いったい、Aさんに何が起こったのでしょう。

イトラコナゾールはアゾール系の抗真菌薬です。薬物代謝酵素を阻害することが知られています。

機序として、薬物代謝酵素の活性中心であるヘム鉄にイトラコナゾールが配位結合することで、酵素を可逆的に阻害します。

そのため、阻害作用の発現にマクロライドのようなタイムラグがありません。飲んだ日から阻害作用が現れます。

阻害様式からは非特異的に複数のCYP分子種を阻害すると予想されますが、実際にはCYP3A4を強く阻害します1)。

そしてシンバスタチンの代謝はCYP3A4に強く依存します。

そうです。イトラコナゾールにより、シンバスタチンの代謝が阻害され、シンバスタチンの体内濃度が上昇したのです。

その結果、横紋筋融解症を発症したのでしょう。

浮腫は横紋筋融解症による腎不全によるものと考えられます。

横紋筋融解症は、骨格筋細胞の壊死や融解により、筋細胞内成分が血液中に流出した状態を言います。

流出した大量のミオグロビンが尿細管を閉塞し、急性腎不全を併発することが多いとされます。

それだけではなく、循環血液量減少にともなうショックや、高カリウム血症により突然の心停止をきたす危険があります。

早期大量輸液、高カリウム血症対策と尿アルカリ化、強制利尿が急性腎不全の治療およびその予防としておこなわれます。

Aさんには命に関わるような危険があったのです。

Aさんに起こったことは、予見できなかったのでしょうか。

PISCSと言う理論から、今回の併用でシンバスタチンの体内濃度がどの程度上昇したのか予測することが出来ました。

イトラコナゾールのCYP3A4代謝阻害率IR〉0.9

シンバスタチンのCYP3A4代謝寄与率CR=1.0

AUC上昇率=1/(1-IR・CR)・・・①

①式より、併用によってシンバスタチンのAUCは10倍以上になったと予測されます2)。

当時はPISCS理論はまだ発表されていなかったので、後知恵と言われればそうですが、添付文書で併用禁忌であること、症例報告を見れば危険な併用であることは分かったはずです。

Rhabdomyolysis-induced acute renal failure due to itraconazole and simvastatin association.  2011;26(2):79-80.

わたしたちは、どうしたら良かったでしょう?

少し長くなりますが、以下の引用をご一読下さい。

・・・薬剤師に疑義照会義務を負わせている法の趣旨は、「医師等の処方の過誤を正し、医薬品使用の適正を確保し、過誤による生命、健康上の被害の発生を未然に防止する」ためにあります。薬学的に疑義が残り、医薬品の適正使用にならないような場合に、医師が対応しないからといってそのまま調剤してしまったとすれば、この目的が達成されないことは明らかです。

このような趣旨で設けられた義務である以上、形式的に医師に確認をしたとしても、薬剤師の薬学的疑義が解消され、適正に使用されることが確認できなければ、薬剤師は義務を果たしたとはいえないと解釈されます。

今回の質問のような場合、薬剤師には注意義務違反(過失)が認められ、損害賠償責任を負うことになります。また,刑事責任や行政責任に問われる可能性も否定はできません。

・・・医師が疑義照会に応じないことはありえます。「医師と薬剤師の関係から考えると仕方ないのではないか」、「薬剤師が責任を負うのはおかしいのではないか」という意見もあるかと思います。薬剤師が医師を介して患者に責任を負っているのであれば、そのような考え方もできるでしょう。

しかし、薬剤師はあくまで独立の専門職であり、患者に対して直接責任を負っています。薬剤師は医師のために調剤をしているのではなく、患者のために調剤をしているのであり、患者のために最善を尽くさなければ義務を果たしたとはいえません。医師が疑義照会に応じず、医師との関係から疑義照会をしにくいとしても、患者にその不利益を負わせてよいことにはなりません。

「患者に健康被害が起こるかもしれないが、医師が疑義照会に応じないから仕方がない」と考えて調剤することは,患者に対して「健康被害(最悪の場合は死に至る)が起きても仕方がない」と判断しているといわれかねません。このような場合、患者に対して最善を尽くしたとは到底いえませんので、薬剤師は責任を負うことになります。当然のことですが,薬剤師が患者に対する義務を果たしたかどうかの判断のポイントは、あくまで患者のために最善を尽くしたかどうかなのです3)。

重い言葉です。

今回書いたケースも、形式的な疑義照会と言われて仕方ないですし、司法のステージに進んでもおかしくなかった事例です。

司法的判断がすべてとは言いませんが、引用した赤羽根先生は弁護士であるとともに薬剤師でもあります。わたしには、薬剤師と言う職業に期待を込めた言葉と思えました。

あなたならどうしますか?

参考文献

1)Vol.50 No.7 2014 ファルマシア 655 https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/50/7/50_654/_pdf

2)薬物動態の変化を伴う薬物相互作用2015 鈴木洋史,大野能之

3)薬局・薬剤師のためのトラブル相談Q&A47 赤波根秀宣 じほう

https://www.jiho.co.jp/Portals/0/ec/product/ebooks/book/45871/45871.pdf

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