OATP1を介したスタチンの相互作用と横紋筋融解症リスク。

横紋筋融解症の発症リスクはスタチン単独療法で低く、アトルバスタチン、プラバスタチン、およびシンバスタチンで0.44/10,000人年と報告されています。スタチンにフィブラートを併用すると、特に高齢の糖尿病患者でリスクが増加するのが観察されました。発売中止となったセリバスタチンは発症リスクが高く、単独で5.34/10,000人年でした。また、アトルバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチンとフィブラートとの併用療法では5.98/10,000人年とリスクが上昇し、特にフィブラートと組み合わせたセリバスタチンは1,035/10,000人年の発症をもたらしました1)。

基礎研究の知見から、セリバスタチンによる横紋筋融解症は、SLCO1B1遺伝子によってコードされる肝取り込みトランスポーターOATP1B1の遺伝子変異、及びOAT1B1を介した相互作用の関与が想定されています2)。また、大規模なコホート研究で、プラバスタチンを含むCYP3A4で代謝されないスタチン内服患者におけるクラリスロマイシンの安全性の検討がありました。結果、アジスロマイシンに比して急性腎傷害による入院を1.65倍、高カリウム血症による入院を2.17倍、全死亡リスクを1.43倍有意に増加させました。理由として、肝取り込みトランスポーターOATP1B1とOATP1B3がクラリスロマイシンにより阻害される機序が考えられています3)。ただ、クラリスロマイシンの海外用量は1,000mg/dayですので、外的妥当性の解釈には注意が必要です。

スタチンとOATP1を阻害する薬剤の併用は慎重を期した方が良いかも知れません。新規薬剤では、心不全に適応のあるアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害剤サクビトリルと、アトルバスタチンの併用による横紋筋融解症が報告されています。カナダの添付文書には、併用によりアトルバスタチンのCmax2倍、AUC1.3倍に増大させること、サクビトリルがOATP1B1および1B3を阻害することが記されています4)。

最後に、横紋筋融解症を回避する為のマネジメントについて触れておきます。米国のStatin Muscle Safety Task Forceのアルゴリズムでは、スタチンを休止するCKの判断値を正常上限値(upprr limit of the normal range:ULN)の3倍としています。日本臨床化学会(JSCC)の標準化対応法によるCKの基準値は男性55~204IU/L 女性42~164IU/Lですが、試薬や機器によっては若干異なるため、上限値(ULN)を250とする施設もあります。ULNを200IU/Lとすると600IU/Lが判断値となります。CK≦3xULNであれば継続投与し、CK>3xULNまたは筋症状があれば2~4週間休薬して経過を見ます。休薬によって症状が改善した場合、その薬を中止・他のスタチンを低用量で投与開始し、とくに異常がなければ最大容量または目標とするLDL値が得られるまで増量するとしています。

1)Incidence of hospitalized rhabdomyolysis in patients treated with lipid-lowering drugs. PMID:15572716
2)OATP1B1-related drug–drug and drug–gene interactions as potential risk factors for cerivastatin-induced rhabdomyolysis PMCID: PMC3894639
3)Risk of adverse events among older adults following co-prescription of clarithromycin and statins not metabolized by cytochrome P450 3A4. PMID: 25534598
4)Rhabdomyolysis After Coadministration of Atorvastatin and Sacubitril/Valsartan (Entresto™) in a 63-Year-Old Woman PMCID: PMC5089965

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