ペットの犬・猫に嚙まれたら病院に行かないといけない。

1 はじめに

1-1 ペットの犬・猫に嚙まれたら病院に行かないといけない

みなさんはペットの犬や猫に嚙まれたことはありますか。
嚙まれたけど、家にある余った薬を適当に飲んで塗っていたら治った?

強者ですね…それはとても運がよかっただけです…
思わぬ感染症にかかることがあるので、ペットに嚙まれたら、速やかに病院に行くことをお勧めします。
この記事を読むと、納得して頂けると思います。

1-2 犬に嚙まれて抗生物質が処方された

先日も犬に嚙まれた、と言う方がこんな処方せんを持って来られました。

オーグメンチンSR錠250㎎ 3tab
分3 毎食後  7日分
クラビット錠500mg    1tab
分1 朝食後  7日分

抗生物質の併用です。何を目的にしたものなのでしょう?

2 動物咬傷について

順番に、動物咬傷の治療意義について説明したいと思います。

2-1 動物咬傷は洗浄が大事

薬の前には、洗浄が最も大切です。必要であれば病院で麻酔の上、洗浄されます。

2-2 抗生物質について

専門家のなかでも議論が分かれていますが、基本的に投与すべきです。
ペニシリン系抗生物質(オーグメンチン、ユナシン等)、第3世代セフェム系抗生物質(セフゾン等)、ミノサイクリンなどが推奨されています。

2-3 起因菌について

Pasteurella(パスツレラ)、S. aures(黄色ブドウ球菌)が想定されますが、実際には混合感染症例が多いです。

2-4 Pasteurella(パスツレラ)感染症について

Pasteurellaは嫌気性菌で哺乳類に生息している口腔内常在菌です。ネコでは保菌率が約70%~90%と非常に高いです。イヌでは約20~50%です。イヌ・ネコ咬傷では最も多い感染症です。

2-5 免疫不全などの基礎疾患があると、壊死性筋膜炎や化膿性骨髄炎を起こすこともある

免疫不全などの基礎疾患があると、壊死性筋膜炎や化膿性骨髄炎を発症することもあります。死亡例の報告もあります。発症は30分~2日間と急速例が多いです。βラクタマーゼ産生株は稀で、感受性はペニシリン系で良好です。第一世代セフェム、エリスロマイシンでは抗菌活性が弱いです。

2-6 S. aureus(黄色ブドウ球菌)感染症について

皮膚の常在菌です。大半はメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)です。MSSAはβラクタマーゼを産生するので、ペニシリンを使用する際にはβラクタマーゼ阻害剤が必要です。

近年市中型MRSA(CA-MRSA)と呼ばれる耐性菌が問題になっています。病院で見られるMRSAと異なり、キノロンなどには感受性が残っている、すなわち有効であることが知られています。

3 冒頭の処方の解析

さて、冒頭の処方箋に戻ります。
オーグメンチンはアモキシシリンと言うペニシリン、クラブラン酸と言うβラクタマーゼ阻害剤の配合剤です。通常の治療はこれで十分と思われるのですが、ニューキノロンのクラビットはCA-MRSA対策ではないかと考えました。

4 まとめ

動物咬傷では、パスツレラ感染症を起こす場合があり、壊死性筋膜炎や化膿性骨髄炎を発症することもあります。死亡例の報告もあり、発症は30分~2日間と進行が速いです。適切な抗生物質で速やかに治療を受けるよう、嚙まれたらすぐに病院を受診するようにしましょう。

参考文献 臨床皮膚科,64巻6号,2010

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マダニに噛まれ(刺され)た後、ミノサイクリンが処方される理由は、リケッチアに感染して発症する日本紅斑熱の治療のため。重症熱性血小板減少症候群(SFTS)には無効。

マダニに噛まれた場合、重症熱性血小板減少症候群(Severe fever with thrombocytopenia syndrome: SFTS)を発症するリスクがあります。特効薬はなく、致死率6-30%。ディート等のダニ忌避剤を使用しましょう。


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マダニに噛まれた場合、重症熱性血小板減少症候群(Severe fever with thrombocytopenia syndrome: SFTS)を発症するリスクがあります。特効薬はなく、致死率6-30%。ディート等のダニ忌避剤を使用しましょう。

マダニに噛まれた(刺された)場合の話

今度の休みに山にキャンプに行く予定があるんだけれど、友達に話したらダニ除けのディートを使った方が良いよって言われた。

ダニは、子供の頃飼い猫によくついていたけれど、そんなに危ないものなの?だれか教えて…。

そんなあなたに、マダニに噛まれた場合のリスクを書きました。

1 マダニ

マダニに吸血される際、マダニが保有している病原体に感染し、発病する事があります。

リケッチア感染による日本紅斑熱や、スピロヘータ感染によるオウム病が古くから知られています。

そして近年、最も警戒されているのが、SFTSウィルス感染によって発症する、重症熱性血小板減少症候群(Severe fever with thrombocytopenia syndrome: SFTS)です。

1-1 病気を媒介するマダニの種類について

中国では、フタトゲチマダニやオウシマダニといったマダニ類から、SFTSウイルスが見つかっています。

1-2 生息地、分布について

マダニ感染症の原因として代表的なフタトゲチマダニは、日本全国の山野に生息しています。

2 重症熱性血小板減少症候群(Severe fever with thrombocytopenia syndrome: SFTS)

SFTSは、2011年に初めて特定された新種のウイルス(SFTS ウイルス)に感染することによって引き起こされる病気です。ブニヤウイルス科フレボウイルス属に属します。

2012年、海外渡航歴のない患者から、日本で最初の症例が確認されました。国内ではこれまで317名(2018年2月28日現在)のヒトの感染が報告され、60名の方が亡くなっています。

2-1 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)について

SFTSウイルスを保有しているマダニに咬まれることにより感染し、6日〜2週間の潜伏期を経て発症します。

2-1-1 症状について

発熱、食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛が多くの症例で認められます。

その他、頭痛、筋肉痛、意識障害や失語などの神経症状、リンパ節腫脹、皮下出血や下血などの出血症状などを起こすことがあります。

2-2 季節・地域について

発生時期は5-10月が多いです。SFTSウイルスを媒介すると考えられるマダニ類は全国に分布するので、全国どこにおいても発生し得る感染症と考えられます。

しかしながら、実際は西日本に多いことが報告されています。

特に症例が多いのは、宮崎県、鹿児島県、山口県、高知県、愛媛県、広島県となります。地域性がある理由は不明です。

2-3 検査について

血小板減少(10万/mm3未満)、白血球減少、血清電解質異常(低Na血症、低Ca血症)、血清酵素異常(AST、ALT、LDH、CK上昇)、尿検査異常(タンパク尿、血尿)などが見られます。

確定診断には、ウイルス学的検査が必要となります。

2-4 死亡確率について

治療が遅れた患者などでは播種性血管内凝固症候群(DIC)を起こし致死率が高くなります。致死率は6.3〜30%と報告されています。

2-5-1 人から人にうつる

血液等の患者体液との接触により、人から人への感染も報告されています。飛沫感染や空気感染の報告はありません。

2-5-2 動物(犬・猫など)からうつる可能性がある

動物がキャリアとなる可能性があります。

2017年に西日本の女性が衰弱した野良ネコに咬まれた後にSFTSを発症し死亡しています。SFTSにネコが感染していたか不明ですが、血小板の減少などの症状があり、女性がダニに咬まれておらずネコから感染した可能性が高いとされています。

また、同じ2017年に下痢などが続いて体調を崩していたイヌを看病していた飼い主がSFTSを発症し、イヌもSFTSと診断されました。

幸いその後ヒトもイヌも回復しました。イヌの看病でウイルスに汚染された唾液などを介して感染したものと考えられました。

2-6 治療(抗ウィルス薬のリバビリン・アビガン)について

治療は対症的な方法しかなく、有効な薬剤やワクチンはありません。中国では、リバビリンが使用されていますが、効果は確認されていません。

アビガンは動物実験で効果が示唆されていますが、臨床効果は確認されていません。

3 予防(ディートのスプレー含む)について

予防には、マダニに刺されないようにすることが最も重要です。流行時期に流行地に行かないことです。

やむを得ず行く場合には、長袖長ズボンなどダニに刺されない服装をすることや地面に直接座らないようにしましょう。

ディートやイカリジンを成分とするダニ忌避剤も一定の効果があるとされています。

ディートは医薬品に区分される濃度12%以上のものがお勧めです。

12%と30%では忌避効果に差はなく、持続時間の差となります。前者で6時間、後者で8時間とされます。

本格的なアウトドアを楽しみたい場合には、最大濃度の30%をお勧めします。

4 マダニに嚙まれたのに気づいたら

マダニ類の多くは、ヒトや動物に取り付くと、皮膚にしっかりと口器を突き刺し、数日から10日間のあいだ吸血します。

無理に引き抜こうとすると、マダニの一部が皮膚内に残ってしまうことがあります。また、ダニの体液が体内に逆流する可能性もあります。

吸血中のマダニに気が付いた際は、できるだけ病院で処置してもらってください。

また、マダニに咬まれた後に、発熱等の症状が認められた場合は、病院を受診して下さい。

参考
重症熱性血小板減少症候群に関する Q&A 国立感染症研究所
重症熱性血小板減少症候群(SFTS) 国立感染症研究所
イヌとネコは致死性SFTSウィルスを媒介する 酪農学園大学 動物薬教育開発センター

ディートについて

厚生労働省が推奨している虫よけ剤の成分は、ディート(DEET)、ユーカリ油(レモンユーカリ油)、ピカリジンの3つです(ピカリジンは日本未発売)。

これらは、アメリカ疾病対策センター(CDC)による科学的検証により有効性が証明され、皮膚や衣服に使用することをアメリカ環境保護庁(EPA)により認可された成分です。

概して、有効成分の濃度が高いほど、効果が長く持続します。ただし、ユーカリ油のような植物精油は、効き目が弱いと考える専門家も存在し、ディート成分が有効とされています。

いずれの製品も、必ず添付されている説明書の注意書きに従って使ってください。また小児に虫よけ剤を使う場合は、大人がつけるようにしましょう。

ディートの使用に際しては、アメリカ疾病予防管理センター (CDC) では、次のことを推奨しています。

・飲んだり吸入したりしないよう注意が必要。
・特に乳幼児に対し使用する場合は手のひら、顔(特に目、口)を避ける。
・乳児は、大人の手のひらで薄く延ばし、これを塗る。
・子供同士で虫よけ剤を塗ったり、スプレーしたりさせない。
・衣服へ塗る場合、内側(皮膚に直接触れる部分)へ塗布しない。
・長時間塗ったままにしない。子供で約4時間、大人で約8時間程度を目安とする。さらに長時間の使用が考えられる場合は、濃度の低いものを使用するか、薄く塗る方法をとる。
・帰宅後など、昆虫に接触する機会から離れた場合は、速やかに石鹸などを使い、洗い落とす。
・虫よけ剤は、子供の手の届かないところへ保管する。
・夏場など、日焼け止めと併用する場合は、日焼け止めを最初に塗り、その上に虫よけ剤を塗る。

ディートの濃度5%では約90分、10%で2時間、30%で8時間、100%では10時間虫よけ効果が持続します。従って「繰り返し」塗る必要があります。

日本で製剤中のディート濃度は、第二類医薬品が12%、防除用医薬部外品では10%以下となっていました。

厚生労働省は2016年(平成28年)6月15日に、濃度30%まで高めた虫よけ製品の製造販売の申請があった場合、早期審査の対象にすると通知し、高濃度虫よけ剤の流通を促しています。

濃度30%製品は、ネット通販でも入手する事が出来ます。夏休みに山野に入る場合は使用をお勧めします。

使用するのが小さなお子さんなら、天然素材のレモンユーカリを使用した虫除けもあります。

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