「処方箋の”なぜ”を病態から推論する」を若手だけでなく中堅以上の薬局薬剤師にもお勧めしたい理由。

「処方箋の”なぜ”を病態から推論する」を若手だけでなく中堅以上の薬局薬剤師にもお勧めしたい理由。

はじめに

若手だけでなく、中堅の薬剤師にもお勧めの新刊

「処方箋の”なぜ”を病態から推論する」は話題の新刊です。買うか迷っている方も多いのではないでしょうか。

わたしも迷って買って読んだ結果、買って正解と思いました。

薬局で働き始めた若手の薬剤師だけでなく、中堅以上の薬剤師にもお勧めできる書籍です。

その理由を書きます。

本書の特徴

岸田直樹先生の共著で、珍しい処方箋が実例を挙げながら紹介されている

この書籍は、大学病院の門前薬局に勤務していた著者が、珍しい処方箋を受けた時、どんな具合に考えたか、思考の道筋を、様々な処方の具体例を挙げて示してあります。

若手の薬剤師の勉強になるのは当然です。でも、それだけでなく、中堅以上のとくに一人薬剤師で研鑽を積んできた薬剤師にもお勧めしたい理由があるのです。それは、自己流で行っていたことが正しかったのか、「答え合わせ」が出来るからです。わたしの実例を書きます。

肺がん患者のアリムタとパンビタンの関係

冒頭近くに、「がん患者にパンビタン・・・単なるビタミン補給?」と言う章があり、わたしはそれに引き付けられました。

数年前の記憶が蘇ったからです。

フォリアミン錠 0.1錠の不思議な処方箋、監査と服薬指導は?

ステージの進んだ肺癌患者、72歳のAさん(仮)が、次のような処方箋を持って来局されました。

フォリアミン錠5mg 0.1錠 1日1回朝食後 30日分 (粉砕指示)
本日から服用

ゲフィチニブが効かなくなり、来週から化学療法を受けることになった。その為の薬、との事です。

ゲフィチニブの適応から、Aさんの既往は「EGFR遺伝子変異陽性の手術不能・再発非小細胞肺がん」であると推定していました。

葉酸(商品名パンビタン、フォリアミン)は、肺がん治療のアリムタの支持療法らしいことがgoogle検索で分かる

肺がんの化学療法を受けること、葉酸を支持療法として使用することから、化学療法は葉酸代謝拮抗剤であるペメトレキセド(商品名アリムタ)が推定されました。

電子薬歴の機能でアリムタの添付文書にアクセスし、適応や用法用量を確認した

ペメトレキセドには、ゲフィチニブ同様、切除不能な進行・ 再発の非小細胞肺がんに適応があります。

葉酸はペメトレキセドの添付文書に次の記載がありました。

「ペメトレキセド初回投与の7日以上前から葉酸として1日1回0.5mgを連日経口投与する。なお、ペメトレキセドの投与を中止又は終了する場合には、ペメトレキセド最終投与日から22日目まで可能な限り葉酸を投与する。」

また、ペメトレキセドの用法用量は以下です。

「通常、成人にはペメトレキセドとして、1日1回500mg/m2(体表面積)を10分間かけて点滴静注し、少なくとも20日間休薬する。これを1コースとし、投与を繰り返す。」

監査が終了し疑問が解消した。処方箋どおり調剤し、患者さんに服薬指導を行った

フォリアミンは粉砕して乳糖で賦形し、分包し、遮光袋で遮光しました。

Aさん化学療法に備えて葉酸を補給する目的であること、今日のみ昼に服用し、明日から朝に服用して頂くようにご説明しました。

過去の仕事の答え合わせが出来る

ここまでがわたしが過去に自分で調べて行った処方鑑査と服薬指導です。

本書を読む事で、過去の自分の仕事の答え合わせが出来る

「処方箋の”なぜ”を病態から推論する」と読み比べて、及第点はつけられたかな、と思います。

更に踏み込んだ情報も書いてあり、なるほど…と思いながら知識を付け加えました。

まとめ

若手薬剤師にも中堅薬剤師にもお勧めの一冊

ベテランの皆さまも、ページをめくれば、「あったあった、こんな処方・・・」と思うものがきっとあると思います。ぜひ、本書を手に取ってご覧頂けたらと思います。

関連記事です。

「処方箋のなぜを病態から推論する」を中堅以上の薬剤師にも勧める理由 その2

「処方箋の”なぜ”を病態から推論する」を若手だけでなく中堅以上の薬局薬剤師にもお勧めしたい理由。

臨床研究の論文を読み始めた人にお勧めする3冊の書籍。

書籍紹介:薬剤師業務のさらなる展開 2006年版ハンドブック

「寄り道」呼吸器診療 呼吸器科医が悩む疑問とそのエビデンス [ 倉原優 ]書籍紹介

神戸大学感染症内科版TBL 問題解決型ライブ講義集中!5日間 [ 岩田健太郎 ]

健康格差と言う公衆衛生の問題を、ロールズ哲学の正義論で論じる書籍の紹介。

感染症を勉強するための書籍紹介。

日常診療に潜むクスリのリスク 臨床医のための薬物有害反応の知識 [ 上田 剛士 ]

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潜在性結核感染症の治療はイソニアジド単剤で行われ、リスクのある方には神経障害を回避する為にピリドキサールが予防投与されます。


潜在性結核感染症の治療はイソニアジド単剤で行われ、リスクのある方には神経障害を回避する為にピリドキサールが予防投与されます。

はじめに

前期高齢者で、パートナーが結核の標準治療(イソニアジド・リファンピシン・ピラジナミド・エタンブトール)を受けている方に、次のような処方がありました1)。

イソニアジド錠100mg 3錠 1日1回 朝食後
ピリドキサールリン酸エステル水和物錠10mg 6錠 1日2回 朝夕食後

イソニアジド単剤は、潜在性結核感染症(LTBI)の治療目的と考えられます。結核菌に感染しているけれど、発症していない状態です1)。

この治療の利益とリスクについて述べます。

潜在性結核感染症(LTBI)の治療

潜在性結核感染症の場合、結核の発症率は10%

潜在性結核感染症の場合、生涯に結核を発症する確率は10%程度です。

イソニアジド(商品名イスコチン)の予防投与を行う

潜在性結核感染症にかかっている人は、結核の発症を予防する目的で、イソニアジドを服用します。この治療は、予防投与と呼ばれています。

イソニアジドの用量と服用する期間

肺結核と同じようにイソニアジド5mg/kg/day、最大300mg/dayを服用します。治療期間は6ヶ月ないし9ヶ月です1)。

イソニアジド服用による発症予防効果

イソニアジド服薬による結核発症の抑制効果は、未治療と比較した場合リスク比で20-50%とされます。

結核菌に感染した場合、生涯に結核を発症するベースラインリスクは10%です。

結核を生涯に発症するのは未治療で100人中10人程度ですが、イソニアジドを飲むことによって2-5人程度まで軽減すると考えられます。

イソニアジドの副作用

イソニアジドによる副作用は、神経障害が有名です。 機序はイソニアジドがピリドキシンと結合して、尿中にピリドキシンが過排泄される為と考えられています。

疫学的には、神経障害の発症リスクは0.2-2%程度、発現までに要する期間は16週程度。高齢者、糖尿病、HIVなどのリスクファクターが無ければ、まず起こらないと考えられるので、リスクのある方のみ補充を行います。

ビタミンB6であるピドキサール(ピリドキシン)を服用する

各国のガイドラインでは、イソニアジドを内服する場合、10-50mg/日のピリドキシン予防投与が推奨されています2)。

まとめ

潜在性結核感染症では、イソニアジドを1日あたり、~300mgを半年から9ヵ月服用することが分かりました。

また、頻度は少ない副作用ですが、視神経障害の予防にピリドキシンを服用する場合があることが分かりました。

潜在性結核感染症では、結核を生涯に発症するのは未治療で100人中10人程度ですが、イソニアジドを飲むことによって2-5人程度まで軽減すると考えられます。

潜在性結核感染症と診断された場合は、しっかり治療を完遂させるようにしましょう。

最終更新日:2019年10月17日

参考文献

1)JAID/JSC感染症治療ガイド2014
2)呼吸器内科医(倉原優先生のブログ)
http://pulmonary.exblog.jp/20720592/

推薦図書

「JAID/JSC感染症治療ガイド2019」

「「寄り道」呼吸器診療―呼吸器科医が悩む疑問とそのエビデンス」

関連記事

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処方解析。透析患者に対する、肺MAC症の治療。


処方解析。透析患者に対する、肺MAC症の治療。

はじめに

呼吸器科からの次のような処方箋を、皆さんは監査出来ますか?

リファンピシンカプセル150mg 3カプセル
1日1回朝食後
エサンブトール錠250mg 2錠
1日1回昼食後(月・水・金のHD後)
クラリスロマイシン錠200mg 1錠
1日1回朝食後

珍しい処方です。

リファンピシンやエサンブトールが含まれますが、イソニアジドやピラジナミドがなく、結核治療とは異なる処方です。

用量もずいぶん少なく、特殊な感じがします。

結論から言うと、透析患者に対する、非結核性抗酸菌症の一種である肺MAC症の治療と考えられます。

この記事を読めば、肺MAC症の標準治療と、透析患者への減量処方が監査出来るようになります。

肺MAC症について

肺MAC症は非結核性抗酸菌症の一種

肺MAC症は非結核性抗酸菌(NTM)症の一種です。
非結核性抗酸菌症の原因菌の80%以上をM.avium complex(MAC)が占めます1)。

肺MAC症に対する化学療法はRECAM

基本はリファンピシン(REF)、エサンブトール(EB)、クラリスロマシン(CAM)の3剤併用を行います。

頭文字を取って、RECAM(アール・イー・カム)と呼ばれます。

単剤では効果が弱く、特にクラリスロマイシン単剤では数ヶ月以内に耐性菌が発生する為、注意が必要です。

肺MAC症に対する標準治療

日本結核病学会非結核性好酸球症対策委員会と、日本呼吸器学会感染症・結核学術部会が推奨する、国内の標準療法は次のようなものです2)。
REF 10mg/kg/day (600mgまで) 分1
EB  15mg/kg/day (750mgまで) 分1
CAM 15mg/kg/day(600-800mg) 分1または分2  (800mgの場合は分2とする)

透析患者の場合の参考用量

透析の場合の参考用量は以下になると思われます3)。
REF 10mg/kg/day 1日1回 HD患者も非HD患者と同じ(透析性x)。
EB 10~15mg/kg/dayを48h毎、HD患者はHD日はHD後に投与(透析性○)。
CAM 1回200mgを1日1回(透析性x)。

まとめ

冒頭の処方箋の妥当性を理解出来るようになったと思います。

推薦図書を挙げますので、より深く学びたい方はご参考になさって下さい。

付記

薬局薬剤師は、基本、全診療科からあらゆる処方箋を受付ますから、幅広い薬物療法と疾患の知識が必要になります。

質の高い医療を提供出来るよう、調べた内容をEvernoteにまとめているのですが、経験を共有出来たらと思い、ブログを書いています。

これからも更新していきますので、よろしくお願いします。

最終更新日:2019年10月17日

参考文献

1)「寄り道」呼吸器診療―呼吸器科医が悩む疑問とそのエビデンス 倉原優 シーニュ 2013年
2)肺非結核性抗酸菌症化学療法に関する見解―2012 年改訂
3)腎機能低下時の主な薬物投与量一覧 改定38版 2014年

推薦図書

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カペシタビンとアプレピタントの併用はC法になるので、カペシタビンの用量監査に注意しましょう。

こんにちは👋😃アロマ薬剤師のゆきです。

今日も処方解析をしましょう。

先日、消化器外科から次の処方箋が来ました。

カペシタビン1回1,500mg 1日2回 14日分
アプレピタント80mg 1日1回 2日分

抗がん剤ですね😓慎重に考えたいです。

お薬手帳から、鉄剤、マグミット、大建中湯の処方歴が確認出来ました。

診療科と合わせて考えると、結腸・直腸がん術後の化学療法でしょうか。

患者さまにインタビューした所、次のような追加情報が得られました。

今日イメンドの1回目を服用した。点滴と併用する。点滴は3週間に1回。ゼローダは2週間飲んで1週間休薬する。身長165cm、体重61kg(デュボア式体表面積1.67m^2)

以上の情報から総合的に考えて、C法(結腸・直腸がんにおける補助化学療法)でXELOX療法など、催吐リスク中程度の白金製剤を使用するレジメンではないかと推測しました。

添付文書には次のように書かれています。

治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌には他の抗悪性腫瘍剤との併用でC法を使用する。

C法:体表面積にあわせて次の投与量を朝食後と夕食後30分以内に1日2回、14日間連日経口投与し、その後7日間休薬する。これを1コースとして投与を繰り返す。

体表面積1.36㎡以上1.66㎡未満:1回用量カペシタビンとして1500mg

今回の用量とも整合性があります。

エビデンスを付記します。

Stage Ⅲ大腸がんに対する術後補助療法として実施したNO16968試験1)では、XELOX療法の3年DFSは70.9%、5年OSは77.6%と報告されている。
1)Haller DG, et al.: J Clin Oncol. 2011; 29(11): 1465-71.

DFC:無病生存期間。治療後、再発や他の病気がなく患者さんが生存している期間。
OS:全生存期間。臨床試験において治療法の割り付け開始日もしくは治療開始日から患者さんが生存した期間。

カペシタビンによる手足症候群は投与初日から数えて1週間を過ぎた頃から現れ、Grade1は1~2クール目から、Grade2以上はおよそ5クール目から出現する。

化学療法が、奏功することを願いました。



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