慢性心不全の治療にβ遮断薬が追加される場合、ピーエイ配合錠で眠気が強く出なかったか問診した方が良いでしょう。

こんにちは。研修認定薬剤師の奥村です。今日は慢性心不全のAさんが見えられた時の話です。

日常動作で息切れがする為、総合病院の循環器科を受診したAさん。心臓はそれ程悪くないとの説明だったそうです。ただ血圧が108/48と低く、心拍数は85とのこと。それまで飲んでいたCa拮抗薬の降圧剤、アムロジピン5mgが中止となりました。その他のARBと言う降圧剤のカンデサルタン8mgと、ループ利尿薬のフロセミド20mgは継続して処方されていました。

処方内容をもう少し詳しく見てみましょう。Aさんの慢性心不全に対してARBとループ利尿薬で治療が行われています。処方内容と、日常動作での息切れがあると言う訴えから、NYHA分類II度、AHA/ACCステージC程度の軽度の症候性心不全と推定されます。ガイドラインから、今後β遮断薬が追加になるかも知れません。CIBIS -IIと言う臨床試験で、β遮断薬の効果が証明されています。1)論文によれば、中等度~高度・難治性の慢性心不全の人が100人居たとして、β遮断薬を飲まなければ1年後にご存命なのは86.8人でしたが、飲めば91.2人の方がご存命だったと言うことです。

Aさんは以前ピーエイ配合錠でひどい眠気があったと聞いているので、β遮断薬の用量には注意が必要になるかも知れません。なぜなら、眠気が遷延したとの訴えから、ピーエイ配合錠に含まれる抗ヒスタミンのプロメタジン代謝にかかわる酵素、CYP 2D6の活性が遺伝的に低い事が予想されるからです。2)

β遮断薬の中で心不全に適応があるのはカルベジロールとビソプロロールの2つですが、どちらもCYP2D6でも代謝される為、処方時には低用量から、心拍数の過度の低下を注意深く観察する必要があります。カルベジロールは中等度活性(IM)の患者さんにおいても、通常の2倍程度の血中濃度が得られると報告されています。3)

心拍数が低下するかも知れないので、注意して欲しいと言う辺りは、β遮断薬が処方になった時、Aさんに伝えておいた方が良いでしょう。

いかがだったでしょうか。ご家族の健康と生活を守るために活用して頂けたら幸いです。

1)CIBIS-IIにおいてNYHAIII-IV度、左室駆出率≦35%の慢性心不全患者2647例にビソプロロールを1.25mg/日より開始され忍容性に問題なければ2.5mg, 3.75mg, 5mg, 10mg/日へ増量。ビソプロロール群、プラセボ群それぞれ推定年間死亡率は8.8%、13.2%であり、プラセボ群と比較したビソプロロール群における総死亡の相対リスク減少は34%、絶対リスク減少4.4%、治療必要数23人だった。

2)日本人において特に重要な変異型は2D6*5と*10である。*5は完全欠損でアレル頻度は5%、*10は活性低下を与えアレル頻度は30-40%である。日本人におけるPM(poor metabolizer)の頻度は1%未満。*10/*10は11%を占め、表現型としては活性がやや低下したIM(intermediate metabolizer)を与える。

3)Population pharmacokinetics of R- and S-carvedilol in Japanese patients with chronic heart failure. PMID: 20686235

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