ニューキノロンの耐性に関するMSW仮説について

ニューキノロンの耐性を防ぐ為に、PK/PD理論から提唱されている仮説を紹介します。

まず、感染症領域の指標となるパラメーターが幾つかありますので、再確認しておきましょう。
最小発育阻止濃度(minimum inhibitory concentration:MIC)。 細菌の視認出来る発育を阻止できる抗生物質の最小濃度。
耐性菌発育阻止濃度(mutant prevention concentration:MPC)。薬剤耐性変異株の増殖を抑制する抗生物質の濃度。
耐性変異株選択濃度域(mutant selection window:MSW)。MICとMPCの間。
耐性変異株選択濃度域通過時間(time inside MSW:TMSW)。MSWを通過するのに要する時間。

抗菌薬濃度がMICに達すると、薬剤に感受性のある菌株の発育は阻止されますが、MPC以下であれば、肉眼で培地に確認出来ない位僅かに存在する薬剤耐性変異株だけは増殖し得ます。この濃度幅がMSWで、この幅が広いと、容易に耐性化すると考えられます。

これが菌の耐性化を巡る「MSW仮説」です。細菌の感受性に遺伝的な異質性heterogeneityがある事に基づく理論で、例えば、ある抗菌薬に対して測定されたMICが1μg/mLの菌株があったとして、そこに含まれる菌株の全てが1μg/mLのMICを持つように見えますが、あくまで試料中の大多数の菌株のMIC値を反映したものに過ぎず、実際はより低いMICから、より高いMICを示すものまで、様々な感受性を持つ菌株が、ごく少数ながら混在していると考えられます。
上記のMSWは、耐性株だけを選択して生き残らせてしまう、抗菌薬の血中濃度の範囲と言えます。

参考文献
抗菌薬PKPD実践テクニック 編集 渡辺彰 藤村茂 南江堂



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