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リピトールの添付文書には、グレープフルーツジュース1.2L/日との併用により、本剤のAUC0-72hが約2.5倍に上昇したとの報告がある、と記載があります。
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一般にグレープフルーツジュースは消化管における薬物代謝能を低下させるので、初回通過代謝における消化管の寄与が大きな薬物ほどグレープフルーツジュース摂取によって体内動態が大きく変動すると考えられます。
また、血漿蛋白結合率の大きな薬物は肝臓への移行が制限されることから、肝代謝の寄与が小さくなり、消化管代謝の寄与が相対的に大きくなります。
この考え方を利用すれば、薬物とグレープフルーツジュースの相互作用の大きさは、薬物の血漿蛋白結合率から推測できると考えられます。薬物を代謝する CYP3A4の小腸における含有量は、肝臓の80分の1程度です。
そこで、この仮定に基づいて、リピトールと大量のグレープフルーツジュース飲用時のAUCが、理論的にどの程度上昇すると予想出来るか、検証してみます。
リピトールの血漿蛋白結合率は、95.6~99.0%以上と記載がありますので、非結合率を1%と仮定すると、肝臓での代謝は80(酵素量比)x1(%、血漿蛋白質非結合率)=80(任意単位)となるのに対して、吸収時の消化管内では血漿蛋白がないと仮定できますので、消化管での代謝は1(酵素量比)x100(%、血漿蛋白質非結合率)=100(任意単位)となります。
従ってこの場合、肝臓と小腸における代謝の寄与率は4:5となりますから、もしグレープフルーツジュース飲用によって、小腸におけるカルバマゼピンの代謝が完全に阻害されるとすると、初回通過効果の小腸及び肝臓での代謝は44%にまで低下することになり、体内に移行する薬物量=バイオアベイラビリティx投与量(Ab=F・D)より、バイオアベイラビリティFがジュース飲用によりF’=F/0.44に上昇している、と表せます。
またGFJは小腸に限定されたCYP3A4阻害作用であり、全身クリアランス(CLtot)に影響を与えないと考えられるため、経口投与されて循環血に乗る薬物量Ab=F・D、Ab’=F’・D=F・D/0.44 CLtot=Ab/AUCevと言う式を適用すると、経口投与時のAUCevは2.3倍程度上昇すると考えられます。
これはケースレポートの数値とほぼ一致し、この仮定での予測に一定の妥当性があることが分かります。
グレープフルーツジュースと併用した場合のデータが無い薬剤の場合でも、CYP3A4の代謝寄与率が高く、血漿蛋白結合率が99%の場合、大量のグレープフルーツジュース飲用でAUCが2倍程度上昇することが予測されます。もしその薬剤の治療域が狭い場合は、休薬や減量などの注意が必要になると考えられます。
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