高齢者のジゴキシンは、ジゴキシン中毒を起こしやすいので、TDMが望ましい。

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要点:高齢者のジゴキシン使用は、ジゴキシン中毒を起こしやすいので、TDMが望ましい。

ジゴキシンは慢性心不全に処方される症例を散見します。ジゴキシンは、DIGスタディにおいて、左室駆出率45%以下の慢性心不全患者に対してACE阻害薬とループ利尿薬に追加した場合、総死亡率は変えないが入院を相対リスクで28%(95%CI:21-34%)減少させました1)。

添付文書に記載のジゴキシンの治療濃度域は0.8-2.0ng/mLですが、DIGのpost hocのサブグループ解析では用量依存的に死亡率が増加した為、0.8ng/mL以下(0.5-0.8ng/mL)でのコントロールが推奨されています2)。日本循環器学会等の合同研究班による慢性心不全治療ガイドラインでは、ジゴキシンの使用についてAHA/ACCstage分類C(症候性心不全)NYHAⅡ度において、洞調律で重症心室性不整脈を伴わない非虚血性心筋症には低用量ジゴキシンの使用を考慮する、としています3)。

ジゴキシン必要量(μg/日)は体重(kg)×CCr÷30で近似出来ますが、推定クレアチニン・クリアランスの変数である年齢・性別・体重・血清クレアチニンの他、Ca拮抗薬・アミオダロン・マクロライド系抗菌薬などの併用薬、心不全等が関連するため、正確な予測は難しく、血中濃度測定が望ましいとされます4)。

実際、尿中クレアチニン、尿量、体表面積で推定されたクレアチニンクリアランスに基づいて算出されたジゴキシンの半減期は、 2点以上で測定された血清ジゴキシン濃度から得られた値より有意に短かった(p <0.01)と言う報告もあります。

論文では、高齢者のジゴキシン療法では日常的に測定することで、血清ジゴキシンをコントロールすることが望ましいことが示唆され、場合によってはCCrの利用もあまり適切ではないかもしれない、と結論しています5)。

また、相互作用の例として、症例対照研究の報告があります。ジゴキシン服用者にクラリスロマイシンを投与した場合、投与しない場合と比較して、ジゴキシン中毒による入院のリスクは調整オッズ比で14.8(95%CI; 7.9-27.9), 倍でした。

エリスロマイシン、アジスロマイシンは共に3.7( 95%CI; 1.1-12.5)倍、セフロキシムは0.8(95%CI 0.2-3.4)倍でした6)。クラリスロマイシンにはP糖蛋白阻害があり、肝臓でのジゴキシン排泄を阻害することでジゴキシン中毒を起こしやすくするのではないか、と考察されます。

以上の知見から、生理機能が低下し、合併症や併用薬も多い高齢者がジゴキシンを安全に使用するためには、定期的なTDMが望ましいと考えます。

1)The effect of digoxin on mortality and morbidity in patients with heart failure. PMID: 9036306
2)Association of serum digoxin concentration and outcomes in patients with heart failure. PMID: 12588271
3)慢性心不全治療ガイドライン(2010年改訂版)
4)クスリのリスク Drug Aging 28(10):831-84,2011 J Clin Pharmacol 37(2):92-100,1997
5)ジゴキシンの生体内半減期と腎機能検査値(Scr,SUN,CLcr)との相関性
6)Macrolide-induced digoxin toxicity: a population-based study. PMID: 19606089