腎機能中等度低下時にアテノロールを反復投与すると、最高血中濃度は単回投与時の1.5倍になる。

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要点:腎機能が中程度以上低下した患者にアテノロールを反復投与した場合、最高血中濃度は単回投与時の1.3~1.5倍になる。服用中であればただちに減量迄しなくとも、徐脈や低血圧のアセスメントを慎重に行うことで対応可能かも知れない。

テノーミン錠25/テノーミン錠50の添付文書には、慎重投与の項目に以下の記載があります。
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重篤な腎障害のある患者[薬物の排泄が影響をうける可能性があるため、クレアチニンクリアランス値が35mL/分以下、糸球体濾過値が35mL/分以下の場合は投与間隔をのばすなど、慎重に投与する]。
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添付文書には腎機能に応じた具体的な減量基準の記載はありません。中程度低下した場合、減量の必要性はあるでしょうか。ここでは、その手がかりとなる情報を得るため、考察しました。

アテノロールは腎消失型の薬剤で、94%は未変化体のまま腎から排泄されます。腎抽出率ER<0.3で消失能依存性(律速段階は腎の排泄能)であり、遊離アテノロールの経口クリアランスは、腎固有クリアランスを吸収率で除したもので表現されます2)。

CLpof=CLintR/Fa

ここで腎固有クリアランスはクレアチニンクリアランスで代用してもよいと考えられます。 テノーミン錠25/テノーミン錠50のインタビューフォームに、腎機能に応じた半減期の延長に関する記載がありました。

I群 血清クレアチニン1.5以上 半減期13.7時間
II群 血清クレアチニン1.5未満 半減期6.7時間

年齢40歳、体重65kgと仮定すると、Cockcroft-Gault式より、血清クレアチニン1.5はクレアチニン・クリアランス60mL/minに相当します。 従って、I群は腎機能中程度以上低下(CCr≦60)、II群は腎機能正常(CCr>60)と読み替えられます。

蓄積率:Rを求めます。R=1/(1-exp(-0.693xTau/T-half))ですが、簡便に表を用います3)。
(Tau/T-half) >4.0  3.0  2.0  1.5  1.0  0.9  0.8  0.7  0.6  0.5 0.4 0.3 0.2
(蓄 積 率:R)1.0  1.1  1.3  1.5  2.0  2.2  2.4  2.6  3.0  3.4 4.13 5.33 7.73

I群はTau/T-half=1.75より、蓄積率R:1.3~1.5
II群はTau/T-half=3.58より、蓄積率R:1.0~1.1

以上より、アテノロールを反復投与した場合、腎機能正常であれば蓄積性は殆どありませんが、中等度以上低下していれば、最高血中濃度は単回投与時の1.3~1.5倍に上昇することが分かりました。

新規処方であれば低用量から開始した方が安全かも知れませんが、以前から服用している場合は、ただちに減量の必要はないかも知れません。徐脈や低血圧を慎重にアセスメントする事が現実的な対応と言うこともあり得ると思います。

参考文献
1)テノーミン錠25/テノーミン錠50 添付文書・インタビューフォーム
2)第3版 臨床薬物動態学 薬物治療の適正化のために 緒方宏泰編著 丸善出版
3)薬物動態学の基礎と薬物投与設計への応用    灘井 雅行 日児腎誌 Vol.19 No.2 47(111)-59(123)

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