病原性の高いA 群溶血性レンサ球菌の増加が数年の内に観察された。著者は抗生物質の繁用の影響があるのではないかと考察。

こんにちは。研修認定薬剤師の奥村です。楽しいクリスマスを過ごしてリフレッシュしました。今日は抗生物質と細菌の話です。

抗生物質が耐性菌の選択圧になると指摘されることは多いですが、数年のうちに菌の疫学に変化があったとする論文を紹介します。

著者らは、最近、溶連菌感染後急性糸球体腎炎(PSAGN)の症例報告が散見されることから、A 群溶血性レンサ球菌(GAS) が疫学的に変化しつつあることが推測され、調査を行ったと記しています1)。

今回の調査で最も高頻度に分離されたのはemm1型でした。侵襲性の高い感染症の検査材料から多く分離される菌株です。

筆者らが過去(2003~2006年)に咽頭・扁桃炎から分離したGAS株中のemm1型は10.2%でした。当時分離される頻度が多かったのは、emm12型(23.5%)と emm4型(23.5%)でした。

今回の調査で割合が変化していなかったのはemm12型のみでした。emm1型、emm28型、emm89型は統計学的に有意に増加していました。その反面、emm3型、emm4型、emm6型は有意に減少していました。

これを見ると、6年間の間にGASは疫学的に明らかに変化したことになります。

このように菌が変化する理由は定かではないが、いくつかの理由が考えられると著者は記述しています。

一つは外来において多く処方されているマクロライド系薬の影響です。

今回増加していた emm1型、emm12型、emm28型は、その80%以上が耐性遺伝子保持のマクロライド系薬耐性菌であり、減少したタイプにはマクロライド系薬耐性菌は少なかったとしています。

1)A 群溶血性レンサ球菌による咽頭・扁桃炎の多施設解析:起炎菌の特徴と経口β-ラクタム系薬の治療効果 小児感染免疫 Vol. 26 No. 1 31 2014

A 群溶血性レンサ球菌による咽頭・扁桃炎の多施設解析:起炎菌の特徴と経口β-ラクタム系薬の治療効果
要旨
咽頭・扁桃炎由来A群溶血性レンサ球菌(GAS)の疫学的特徴と経口β-ラクタム薬の治療効果を明らかにする目的で、クリニックを中心に「GAS surveillance study group」を組織した。2012年の対象期間中に、GASによる咽頭・扁桃炎と診断された434症例の初診時と薬剤投与後の咽頭拭い液が採取され、PCR 法と培養法を併用して360株のGASが分離された。分離株に対するemm型別では、emm1 型の頻度が最も高く、次いでemm12、emm28、emm89型の順であった。近年、原因菌としてのGASは、疫学的に著しく変化していることが示された。β-ラクタム系薬耐性菌は認められなかったが、分離頻度の高いemm型株にマクロライド耐性株が高い割合で認められた。治療薬は全例に対しβ-ラクタム系薬が用いられていた。投与薬の種類や投与方法の違い(分2 あるいは分3)による臨床効果には有意差は認められなかった。しかし、経口セフェム系薬の分2での有効性の低い薬剤があった。上述した成績からは、GAS における分子レベルでの疫学解析と抗菌薬感受性の検討が適切な抗菌薬選択のために必要であり、抗菌薬の投与条件についてもさらなる検討が望まれる。


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