心房細動で薬を飲んでいる人が、花粉症の薬を病院でもらう時に、お薬手帳を持参した方がよい、たったひとつの理由。

こんにちは。アロマ薬剤師のゆきです。

スギ花粉症の季節になりましたね。昨年の夏が暑かったので、今年は花粉の量が多いのではないかと言われています。今まで花粉症の症状がなかったり、軽かったので花粉症の薬を飲んでいなかった人が、今年になって飲み始めることがあるかも知れません。そこで、今日は、花粉症の薬の飲み合わせの話をしたいと思います。

花粉症の薬、セチリジン(商品名ジルテック)の添付文書には、併用注意としてピルシカイニド(商品名サンリズム)が記載されています。引用文献がないので、PUBMED と言う医療データベースで検索したところ、該当すると思われる文献を見つけました1)。再構成して話してみようと思います。

72歳のAさん(仮)は、腎機能が低下している方で、ピルシカイニドを1日150mg服用していました。心房細動の治療薬です。ある時、花粉症の薬、セチリジンを1日量20mgで処方されました。セチリジンを服用開始して3日目、Aさんは失神して病院に運ばれました。

徐脈、幅広いQRS波と、ピルシカイニドの過量投与を疑わせる症状があり、ピルシカイニド中止により回復しました。血液検査で、ピルシカイニドとセチリジン双方の血中濃度が上昇していたことが分かりました。

その後、健康なボランティアにピルシカイニドとセチリジンを単回投与した試験が行われ、ピルシカイニドとセチリジンのクリアランスが、各々半分程度まで低下することが分かりました。

ピルシカイニドもセチリジンも腎臓から尿に排泄される薬であり、排泄経路が競合するために起こる相互作用ではないかと考えられます。

基礎研究の知見から、腎尿細管にある薬物トランスポーター、MRP1やOCT2が、この相互作用に関与しているのではないかと考えられています。

心房細動は加齢とともに発症する病気であり、皆さんのご家族でもピルシカイニドを飲んでいる方は多いのではないかと思います。

もし花粉症で病院を受診する際は、必ずお薬手帳を持参して、病院と薬局の両方で、薬の飲み合わせについて、ダブルチェックを受けて下さい。

1)Severe arrhythmia as a result of the interaction of cetirizine and pilsicainide in a patient with renal insufficiency: First case presentation showing competition for excretion via renal multidrug resistance protein 1 and organic cation transporter 2.



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風邪で病院に行く人、病院に行かない人、コストはどれくらい違う?

こんばんは。アロマ薬剤師🌿ゆき🌿です。

みなさんは風邪にかかった時どうしますか?市販薬を飲む?それとも病院に行く?今日は風邪にかかった時の医療費の話をします。やや耳に痛い話かも知れませんが、ご容赦下さい。

実は、風邪に特効薬はないんです。水分を摂り、体を温めて休息することで、自然に治るのを待つことしか出来ません。

日本で処方される咳止めや鼻水鼻づまりの薬もエビデンスに乏しく、気休め程度の効果しかありません1)。唯一効果が期待出来るのは、解熱鎮痛剤で、最も安全な薬はアセトアミノフェン(商品名カロナール、タイレノールA)です。

では、風邪でアセトアミノフェンが欲しい場合、病院にかかるのと、薬局で市販薬を買うのと、それぞれ、どれくらいのコストがかかるのでしょう?アセトアミノフェン300mgを10錠手に入れるために、どのくらいの金額が必要になるでしょうか。

まず、診療所を受診して、薬局で処方せん薬をもらう場合です。カロナール錠300mg、10錠を処方してもらうとします。

診療所では、初診料2,820円、処方せん料680円、一般名処方加算20円で合計3,520円です。薬局では調剤基本料590円、調剤料210円、薬学管理料530円、薬剤料90円で合計1,420円です。

合わせて4,940円。自己負担は1割で490円、3割で1,480円ですが、健康保険料と税金から残りの金額が支払われています。

次に薬局やドラッグストアで市販薬を買う場合です。2類医薬品(薬剤師でなく、登録販売者でも販売出来る薬です。)タイレノールA (アセトアミノフェン300mg)10錠で、791円です。

実に4,149円の差額です。市販薬は手軽に購入したり、常備薬として家に備えておくことが出来ますが、診療所を受診しようと思えば、仕事を休んだり、診療所の待合室で他の病気に感染するリスクなども考えなければいけません。

2017年の民間機関の調査で、日本で成人(15~79歳)が風邪にかかる回数は年間のべ1億3,950万回と推計され、その13.3%が医療機関を受診するとしています。すべての受診機会でカロナール錠300mg10錠が処方されるとすれば、その際のコストは916億5429万円と推計されます。

近年残薬のコストが注目されていますが、2007年に日本薬剤師会が行った調査では、75歳以上の在宅患者の残薬は年間475億円でした。実にその2倍近い金額が、風邪の際の医療費として消費されています。これは現在の日本において、社会的に許容できるコストと考えにくくなっているのではないでしょうか。

風邪に隠れた重病を一般の人は分からないと思いますか?国は、健康サポート薬局という制度の整備を進めています。研修を受けて認定された薬剤師が、薬局でトリアージを行うシステムです。受診が必要と判断すれば、薬の販売は行わず病院への受診を勧める仕組みです。

わたしも、健康サポート薬局の薬剤師の認定を受けています。相談は無料ですので、ぜひ薬局をご利用下さい。

癌の治療など、高額医療の恩恵を被れる、世界の羨む皆保険制度を維持出来るように、わたしたちひとりひとりの行動が試されていると思います。

参考文献
1)かぜとかぜにみえる重症疾患の見分け方 かぜ診療マニュアル 山本舜悟編著 日本医事新報社 2013年

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コレステロールの薬を飲んでいるけれど、名前は正確に覚えていない人が、風邪で病院を受診する時にお薬手帳を持参した方がよい、たったひとつの理由。

こんばんは。アロマ薬剤師のゆきです。娘がおもちゃに指を入れたら抜けなくなり、救急外来のお世話になりました。先生、親の不注意ですみませんでした…。

さて、今日は薬の飲み合わせの話です。薬局で患者さんに、「他に飲んでいる薬はありませんか?」と必ず尋ねるのですが、返ってくる答えで多いのは、「血圧の赤い玉の薬」とか、「コレステロールの白い玉の薬」とかです。薬局あるあるでしょうか😅

赤い玉の薬も、白い玉の薬も、沢山あります…。でも、血圧の薬とか、コレステロールの薬とか分かったら、飲み合わせは分かるんじゃない?って思ってます?😏実際はどうなのでしょう。今日は、そういうお話をします。

風邪でC耳鼻咽喉科を受診したAさんは、「お薬手帳を持って来ていないけれど、コレステロールの薬を飲んでいます」、とカウンターでおっしゃいました。

皆さんはこれで飲み合わせなどのリスク回避が十分出来ると思います?答えはイエスであり、ノーです😰その理由を一緒に見て行きましょう。

Aさんは、数年前、B内科医院からコレステロールの薬、シンバスタチンを飲んでいた事が、薬局の電子薬歴に記録されていました。体重はデータなし、腎機能もデータなし、シンバスタチンの規格(ミリ数)も不明です。シンバスタチンのまま現在も継続しているかも確実には分かりません。

現在の日本で、コレステロールの薬のスタチンは、5種類が発売されています。飲み合わせは薬ごとに特徴があり、注意の必要な度合いも異なります。

同時に飲むと若干吸収率が下がって効き目が落ちる程度の飲み合わせから、時間を空けて飲んでも、重篤な副作用である横紋筋融解症が起きるリスクが高まるケースまで様々です1)。

そのため、最適な処方設計をするためには、薬剤名、規格、飲み方の正確な情報が必要になります。

Aさんの飲んでいたシンバスタチンは、100%肝臓の酵素で代謝されるタイプのスタチンです。薬物代謝酵素「CYP3A4(シップスリーエーフォー)」で代謝されます。

この酵素の働きを邪魔する薬を飲むと、てきめんにシンバスタチンの体内濃度が上昇し、薬を何錠も一度に飲んだのと同じような状況が起こります。その結果、副作用が起こりやすくなるのです2)。

この相互作用は時間をあけて飲んでも避けることが出来ません。CYP3A4の働きを邪魔する薬で有名なのが、日本で風邪の時に頻繁に処方される抗生物質、クラリスロマイシンです。

Aさんが受診したC耳鼻咽喉科の先生は、クラリスロマイシンを処方されませんでした。コレステロールの薬が特定出来ないのであれば、最もリスクが高い場合を想定して、その薬を避けようと考えられたのかも知れません。

リスク回避は出来ましたが、もしAさんが飲んでいる薬がシンバスタチンでないとはっきり分かっていれば、C医師はクラリスロマイシンを処方されたかも知れません。

飲んでいる薬の正確な情報を伝えられなかった為に、Aさんが自ら治療の選択肢の幅を狭めてしまったことは確かでしょう。

風邪薬程度でしたので、今回は深刻な問題にならなかったのが幸いですが、お読みになって、いかがでしたか。これがイエスであり、ノーである、とわたしが最初に書いた理由です。

タイトルでは、コレステロールを飲んでいる人の風邪薬に限定しましたが、基本、複数の薬を飲むのであれば、飲み合わせの問題は常に起こり得ます。

薬を安全に、効果的に使用できるよう、病院や薬局、ドラッグストアに行く際はお薬手帳を持参されることを、薬剤師として、わたしは心からお勧めします。

脚注
1)Statin toxicity from macrolide antibiotic coprescription: a population-based cohort study.PMID: 2377890

472,591人を対象としたカナダのコホート研究です。CYP3A4で代謝されるアトルバスタチン、シンバスタチン服用患者にエリスロマイシン、クラリスロマイシンを投与した場合の安全性の検討をしています。

アジスロマイシンと比較して、30日以内の横紋筋融解症による入院は絶対リスクで0.02%(95%CI;0.01-0.03)上昇しました。

急性腎傷害は絶対リスクで1.26%(95%CI0.58-1.95%)、総死亡は絶対リスクで0.25%(95%CI0.17-0.33%)上昇しました。

2)これからの薬物相互作用マネジメント 臨床を変えるPISCSの理論と実践  大野能之・樋坂章博 編著 じほう

併用によるAUCの上昇率のデータは次のようになります。シンバスタチン   基質の寄与率 CR(CYP3A4):1.00
クラリスロマイシン 阻害率IR(CYP3A4):0.88  PISCS予測値のAUC8.33倍 実測値のAUC11.9倍

エリスロマイシン  阻害率IR(CYP3A4):0.81     PISCS予測値のAUC5.26倍 実測値のAUC6.2倍

AUCが5~10倍、すなわち薬を5~10錠いっぺんに飲んだ時のような状況が起きる事が予想されます。



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健康診断でコレステロール値が高いと指摘された人は、薬を飲まないとダメ?家族性高コレステロール血症って何ですか?

こんばんは。アロマ薬剤師ゆき、こと、研修認定薬剤師の奥村です。

健康診断で、コレステロールが高いのを指摘される人は少なくないと思います。いったい、薬を飲んでコレステロール値を下げた方が良いのでしょうか?

コレステロール値を下げる目的は、動脈硬化を予防し、心筋梗塞等の発症を予防する事です。実は日本人は心筋梗塞の発症率が欧米人の1/3程度 1)と低いので、ガイドラインに盲従することなく、リスク・ベネフィットを勘案して治療対象としない選択肢はあると思います。

例外的に、リスク・ベネフィットから強力な治療をした方がよい(と、わたしは思う)グループがあります。家族性高コレステロール血症(FH)の治療です。今日は、FHの話をしようと思います。

Aさんは40代の女性です。標準体型より、やややせ形。先月が初診でLDL(いわゆる悪玉コレステロール)が216と高く、アトルバスタチン10mgが開始されました。

20代の頃からコレステロール値が高いことを指摘されていたそうです。親兄弟、祖父と皆コレステロール値が高かったそうです。

本日の血液検査でコレステロール値はLDL100程度、HDL70程度と検査票より確認しました。病院では色々検査をされたとの事です。

聞き取りした内容から、Aさんは家族性高コレステロール血症(FH)ヘテロ接合体ではないかと想像します。FHは日本人の250人に1人程度の割合で存在する、遺伝子疾患です。

FHの人は幼少時からコレステロール値が高く、血管へのコレステロールの負荷がかかるため、未治療の男性で30~50歳、女性で50~70歳の間に心筋梗塞、狭心症などの冠動脈疾患の発症が多いと報告されています2)。

つまり、FHでない人と比べて、若くして心筋梗塞などを起こすリスクが高いため、治療の意義が高いと考えられます。それでは、どんな人がFHの可能性が高いのでしょう。

FHヘテロ接合体の診断基準は、次のようになります3)。
①高LDL血症(未治療時のLDL値180mg/dL以上)
②腱黄色腫、あるいは皮膚結節性黄色腫の存在。
③FHあるいは早発性冠動脈疾患の家族歴(2親等以内の血族)

上記2項目が当てはまる場合、FHと診断します。捕捉すると、
・LDLが250mg/dL以上の場合、FHを強く疑います。
・早発性冠動脈疾患は男性55歳未満、女性65歳未満と定義します。
・FHと診断した場合、家族についても調べることが望ましいです。

また、FHでは動脈硬化性疾患のリスクが高いため、生活習慣の改善を実施する前に、労作性狭心症の有無の問診、運動負荷心電図、心エコー検査によって、動脈硬化性疾患の評価を行います。

FH患者のLDL管理目標値は一次予防(心筋梗塞等の発症予防)が100mg/dL未満、あるいは未治療時の50%未満。二次予防(心筋梗塞等の再発予防)で70mg/dLとします。

FHは未治療の方が多い疾患です。家族歴のある方はぜひ診察を受けられて、もしFHと診断されたら、治療を受けられらる事をお勧めします。

1)Turin TC, et al. Lifetime risk of acute myocardial infarction in Japan. Circ Cardiovasc Qual Outcomes. 2010; 3: 701-3.
2)Mabuchi H, et al.: Circulation 79(2): 225-232, 1989
3)日本動脈硬化学会 編 : 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版, 杏林舎, 2012



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1日1回夕食後にリリカを飲んでいて、ふらつきが翌日の午前中まで続く人は、何度かに分けて飲むと、ふらつかなくなる可能性があります。蓄積率を応用して定量的に考察しました。

こんばんは🌙😃❗アロマ薬剤師🌿ゆき🌿、こと、研修認定薬剤師の奥村です。

今日は、薬を何回かに分割して飲んだら、副作用が減らせるのではないか、と言うお話です。

Aさんは60代女性です。整形外科から、痛み止めの薬のリリカ75mgを、1日1回夕食後で処方されています。痛みは軽減しているが、翌朝の午前中までふらつきが続いているとの事です。

リリカの投与方法を変えることで、ふらつきを改善することが出来ないでしょうか。痛みを軽減したまま、ふらつきが抑えられれば、ベストな薬物療法が提供できます。

時間とともにふらつきが解消されるので、この副作用はリリカの血中濃度に依存するものと考えられます。最高血中濃度を抑えてやれば、副作用を回避出来るのではないかと考えました。

Aさんの腎機能は、Jaffe法によるクレアチニン・クリアランス(CCr)(≒個別eGFR)で60mL/min程度と推定されます。(20歳の腎機能100mL/minで1年毎に1mL/minづつ低下すると仮定しました。)腎機能が中程度低下していると考えられます。

リリカの添付文書を読むと、腎機能が中程度低下している(CCr:30~60mL/min)場合、オプションとしてリリカ25mg 1日3回と言う、分割した飲み方が記載されています。1日1回と比べて、どれくらい体内動態が変わるのか、添付文書の情報から考えてみることにしましょう。

リリカは、ほぼ100%、未変化体のまま腎排泄されます。単回投与した時の最高血中濃度とAUCは、投与量に比例して上昇します(線形です)。

その裏づけとなる、リリカの基本データが、添付文書に記載されていました。

リリカ50mgを腎機能の異なる群に単回投与した(海外データ)
CCr:60mL以上 T1/2 9.11hr
CCr:30~60   T1/2 16.7hr
CCR:15~30   T1/2 25.0hr

リリカを単回投与した際のCmaxとAUC
50mg 2.03μg/mL 10.7μg・hr/mL
100mg 3.56     20.4
200mg 6.35     43.2
300mg 8.25     61.7

ここで、(A)75mg 1日1回投与と、(B)25mg 1日3回投与した場合、それぞれの反復投与時の最高血中濃度を推算してみます。

①CCr:60mL/min以上の場合、
(A)τ/T1/2=24/9.11=2.6  ∴蓄積率R≒1.2
(B)τ/T1/2=8/9.11=0.88  ∴蓄積率R≒2.2

リリカ25mgを単回投与した際のCmaxをC25maxとすると、定常状態の最高血中濃度は
(A)3.6・C25max
(B)2.2・C25max

従って、1日3回にすれば、定常状態の最高血中濃度は1日1回に比べて約40%抑えることが出来ると考えられます。効果の指標であるAUCは同等と考えられます。

②CCr:30~60mL/minの場合、
(A)τ/T1/2=24/16.7=1.44≒1.5 ∴蓄積率R=1.5
(B)τ/T1/2=8/16,7=0.48≒0.5 ∴蓄積率R=3.4

リリカ25mgを単回投与した際のCmaxをC25maxとすると、定常状態の最高血中濃度は
(A)4.5・C25max
(B)3.4・C25max

従って、1日3回にすれば、定常状態の最高血中濃度は1日1回に比べて約33%抑えることが出来ると考えられます。AUCは同等と考えられます。

ちなみにリリカ75mgを1日1回の場合、定常状態の最高血中濃度は、CCr:60mL/min以上に比べて30~60mL/minでは、蓄積率から計算すると25%上昇していると考えられます。

以上より、投与方法を変えるオプションは、一考の価値があると考えます。

読んで下さってありがとう☺
ゆきでした。

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薬剤師向け記事。PISCSを利用して臨床報告のない薬物相互作用を定量的に評価する方法を紹介しました。手計算も出来る程の簡単な式で、必要なパラメーターはAUCの他はたった2つだけ。

こんにちは。アロマ薬剤師ゆき、こと、研修認定薬剤師の奥村です。

今日は薬の相互作用の話をします。薬の飲みあわせが悪い、言われることがあります。飲み合わせが悪くなる仕組みは色々あるのですが、今回は薬が肝臓の酵素で代謝される際に、酵素の働きが邪魔されて体内濃度が高くなり、副作用が出やすくなる場合の話をします。

酵素で代謝される薬のことを基質薬、酵素を邪魔する薬のことを阻害薬と呼びます。CYP分子種で表される酵素ごとに、相互作用が規定されます。併用で薬の効果がどれくらい高くなるかは、一般にAUCと言うパラメーターを指標にされることが多いです。

AUC(Area Under the blood concentration-time Curve)は、日本語にすれば、血中濃度-時間 曲線下面積です。血中濃度の推移を時間で積分して求めた数値(面積)です。そのため、AUCは、最高血中濃度(Cmax)と半減期(t1/2)の双方の要素を含む、総合的な指標になります。一般的にAUCが大きいことは薬をたくさん利用できることを意味し、具体的には高い効果が得られる、あるいは副作用が強く出るといったことを意味します。

PISCSは、臨床報告のない組み合わせでもAUCの変化を予測する理論です。阻害薬の併用による経口投与時の基質薬のAUCの変化率は次の式で表されます。ただし、この式が適用できるのは、基質薬の未変化体としての尿中排泄の寄与が大きくない場合に限られることに注意して下さい。

阻害薬の併用時のAUC/AUC=1/(1-CRxIR)

CR(Conribution Ratio):CYP分子種の基質薬のクリアランスへの寄与率
IR(Inhibition Ratio):阻害薬の阻害率

実例をいくつか挙げます。

・CYP2D6が関与する相互作用
メトプロロール(CR:0.8)をパロキセチン(IR:0.9)と併用した場合、メトプロロールのAUCは3.6倍。
デキストロメトルファン(CR:0.9)をパロキセチン(IR:0.9)と併用した場合、デキストロメトルファンのAUCは5.3倍。

・CYP3A4が関与する相互作用
カルバマゼピン(CR:0.8)とグレープフルーツジュース(IR:0.8)を併用した場合、カルバマゼピンのAUCは2.8倍。
カルバマゼピン(CR:0.8)とクラリスロマイシン(IR:0.8)を併用した場合、カルバマゼピンのAUCは2.8倍。
カルバマゼピン(CR:0.8)とエリスロマイシン(IR:0.7)を併用した場合、カルバマゼピンのAUCは2.3倍。

このように理論値を求める事が出来ます。実測値を文献で調べる事が一番ですが、新薬等の理由で情報が少ない場合には、非常に有効な手法と考えます。

参考
「薬物動態の変化を伴う薬物相互作用2015」
https://medical-tribune.co.jp/news/poster_2015_j.pdf

Fizz DI AUC(血中濃度-時間曲線下面積)って何のこと?

AUC(血中濃度-時間曲線下面積)って何のこと?

ruruuunのブログ



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テグレトール(カルバマゼピン)とクラリスロマイシンで眠気が出ることを定量的に評価する試みをしました。

Aさんは17歳6ヶ月、体重不明です。てんかんの薬、カルバマゼピン500mg/日を1日2回に分けて服用しています。TDMのデータ不明です。クラリスロマイシンを飲んで、強い眠気が出たと聞きました。

ここでは、併用による血中濃度の変化を、定量的に評価する試みをします。

まず、カルバマゼピン血中濃度を以下の手法により推定します。6.13±1.46μg/mL(治療域4-12μg/mL)と考えられます。

17歳6ヶ月の平均体重53.1kgを使用。F・S・D/Tau=Css.ave・CLtotに次のパラメーターを代入します。
F=1、S=1、D=250、Tau=12、CLtot=0.064L/hr/kgx53.1kg
またVd=1.61×53.1kgより、FSD/2Vd=1.46

カルバマゼピンの至適血中濃度は4~12μg/mLですが、文献によっては4~10μg/mLとするものもあります。8μg/mL以上で、頭痛、嘔気、傾眠、活動性の低下、不安などが起こることが知られています。

Aさんは、クラリスロマイシンを服用して眠くなったとのことですが、体内でのカルバマゼピンの挙動は、どれくらい変わるのでしょう。

PISCSの理論からは、カルバマゼピン(CR:0.8)とクラリスロマイシン(IR:0.8)を併用した場合、カルバマゼピンのAUCは2.8倍と予測されます。

AUC(Area Under the blood concentration-time Curve)は、日本語にすれば、血中濃度-時間曲線下面積です。血中濃度の曲線の積分値(面積)のことで、利用できる薬の総量を意味します。AUCは、血中濃度×時間で表され、最高血中濃度(Cmax)や半減期(t1/2)の要素も含めた総合的な指標になっています。

一般的に、AUCが大きいことは薬をたくさん利用できることを意味し、具体的には高い効果が得られる、あるいは副作用が強く出るといったことを意味します。

類薬のエリスロマイシンでは、Cmaxは変化しないが、AUCは1.34倍、t1/2は1.46倍に延長、クリアランスは23%低下したとする報告があります。他の報告でもCmaxは上昇しませんでした。

パラメーターの変化は個人差が大きく、エリスロマイシン併用によるカルバマゼピン濃度の予測が困難であるため、併用の必要がある時には患者モニタリングを綿密に行うことが推奨されています。

https://www.fpa.gr.jp/global-image/units/upfiles/1348-1-20120514161648.pdf

予測は困難と書かれていますが、得られたデータから試算を試みようと思います。カルバマゼピンを成人に反復投与した場合の半減期は7~15時間とされます。ここでt1/2=11hrと仮定します。

蓄積率の手法を利用して、反復投与時の最高血中濃度(Css.max)が、単回投与時の最高血中濃度(Cmax)の何倍になるかを推定します。

Tau/t1/2=12/11=1.1 ゆえに蓄積率R≒2で、Css.maxはCmaxの約2倍になると推定されます。

エリスロマイシンの併用で、カルバマゼピンの半減期t1/2が1.46倍になったと言うデータを利用すると、半減期t1/2’=16hrです。

従って、Tau/t1/2’=12/16=0.75  ゆえに蓄積率R’=2.4~2.6 簡便に2.6倍とすると、R’/R=1.3
以上のことより、エリスロマイシンの併用により、定常状態のカルバマゼピンの最高血中濃度は、併用しない場合の1.3倍になると考えられます。

クラリスロマイシンの場合もおそらく半減期が延長し、反復投与することで定状状態の血中濃度が上昇したのではないかと推測されます。PISCSの予測より、併用時の最高血中濃度は1.3倍以上になったのではないかと考えられます。

カルバマゼピン服用中の5人の患者に、カルバマゼピンを30~40%減量した上でクラリスロマイシンを投与した報告があります。5人とも血中濃度が上昇し、3人は中毒域に達していました。著者らはカルバマゼピンを30~50%減量し、薬物濃度を注意深く観察することを勧めています。

Clarithromycin-carbamazepine interaction in a clinical setting. O’Connor NK1, Fris J. J Am Board Fam Pract. 1994 Nov-Dec;7(6):489-92. PMID:7847111



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臨床研究の論文を読み始めた人にお勧めする3冊の書籍。

こんばんは。アロマ薬剤師🌿ゆき🌿です。

今夜は臨床研究の論文を読み始めた人にお勧めの本を紹介します。3冊あります。どれも、論文を読む時のピットホールに気づかせてくれる本です。

臨床研究と言うと、科学的で公正なイメージがありますが、そうでない場合があるのは某降圧剤のスキャンダルを見れば納得頂けると思います。

論文を「盛る」手法は様々です。対照薬の用量を少な目に設定する事で、新薬を効果的に見せる手法、グラフの縦軸を拡大することで、実際の効果は大きくなくても、視覚的に大きいようにアピールする手法、多重検定を補正しないで行う手法…。

今回紹介する3冊の書籍は、どれもこうした論文を「盛る」手法を解説しています。1冊でも読めば、論文の主張を鵜呑みにせず、論文の結果を批判的に解釈出来るようになります。

ディ○バン事件の後を生きる薬剤師として、わたしたちに必須なスキルであると、わたしは思います。

「医学統計ライブスタイル」

「臨床研究を正しく理解するには」

「論文を正しく読むのはけっこう難しい」



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PL配合顆粒でひどい眠気が出た人が、受診時にそれを伝えなくてはいけない、たったひとつの理由。

こんにちは。アロマ薬剤師🌿ゆき🌿です。

今日はバレンタインデーですね。娘は幼稚園から帰ったら、チョコレートを溶かしてトッピングした手作りチョコを作りたいと言っていました。女子力が高いです😸

さて。今日は薬を飲んだ時の作用の強さには、個人差がある、と言うお話をします。

やや長い記事ですが、お付き合い下さい。最後にPL配合顆粒の意味が分かると思います。

いつも、わたしの薬局を利用して下さるAさんは、慢性心不全で循環器科に通院しています。慢性心不全は、心臓のポンプ機能が徐々に低下していく病気で、心筋梗塞の後などに起こります。

治療にはACE阻害薬、β遮断薬、ループ利尿薬と呼ばれる薬などを用います。この中で、薬の効き目に個人差が大きい薬があります。

それはβ遮断薬です。心臓のアクセルを緩める薬です。以前は心不全に禁忌とされましたが、現在は大規模臨床研究で、予後を改善することが確立している、慢性心不全の治療薬です。専門医が、少量から慎重に使う薬です。

個人差が大きい理由は、心不全の程度等にも依ると思うのですが、薬剤師の立場から重視したいのは、β遮断薬の代謝に個人差が大きい事です。

β遮断薬の多くは、肝臓の酵素のひとつである、「CYP2D6(シップツーディーシックス)」によって代謝され、活性のないものに変えられます。ところが、「CYP2D6」は、代謝能が遺伝的に決まり、極めて個人差が大きい酵素です。これを遺伝子多型と言います。

わたしたちは、遺伝的に与えられた「CYP2D6」の代謝能に応じて、EM(代謝能は通常)、IM(代謝能は中程度低下)、PM(代謝能は欠損)の3グループに分けられます。

代謝能の小さい人は、より少量の薬でも期待する効果が得られると考えられます。通常の用量では作用が強く現れ、不都合な作用(副作用)が現れるかも知れません。

Aさんは、ある時β遮断薬が開始されました。少量でしたが、添付文書で推奨される開始用量の2倍からのスタートでした。循環器の専門医でしたが、この医師は開始用量はいつも、この用量であることをわたしたちは知っていました。そのため、担当した薬剤師は問い合わせはしないで、Aさんに薬をお渡ししました。

ところが、Aさんはこの薬が開始になってから足にひどい浮腫が出て、薬を続ける事が出来ませんでした。あまりにつらくて、とおっしゃっていました。

Aさんがお帰りになった後、わたしは電子薬歴を詳細に見返していて、あっ、と思いました。過去に風邪薬のPL配合顆粒を飲んで、起き上がれない程の眠気を感じたと書いてあったのです。

PL配合顆粒の眠気を起こすのは、抗ヒスタミンのプロメタジンです。プロメタジンは肝臓の酵素「CYP2D6」で代謝されます。

そうです、問題のβ遮断薬を代謝するのと同じ種類の酵素です。もしもAさんが、この酵素の代謝能が中程度低下、もしくは欠損しているとしたら、ひどい浮腫と、起き上がれない程の眠気の両方が、矛盾なく説明出来ます。確定するには遺伝子診断が必要ですが、その可能性は高いと思います。

今でも、Aさんのβ遮断薬を、もっと低用量から開始していれば、服薬が継続出来たかなと思う、苦い経験です。

PL配合顆粒は、ありふれた風邪薬なので、みなさんも飲む機会があるのではと思います。もし、ひどい眠気が出た方がいらっしゃれば、病院と薬局で教えて頂けないでしょうか。「CYP2D6」で代謝される薬を安全に、有効に使うための、重要な情報になる可能性があります。

そして、飲んでいる薬の事で、なにか疑問があれば、薬剤師にご相談下さい。薬物療法のリスクを最少限に、効果を最大限にするのが、わたしたちの仕事です。



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パキシル(一般名パロキセチン)を飲んでいる人が、眼科を含めて他の病院を受診するときにしなければいけない、たったひとつのこと。

こんばんは。アロマ薬剤師🌿ゆき🌿です。

立春は過ぎましたが、まだまだ寒い日が続いていますね。今夜はティートリーの香りを選んで芳香浴しました。南国のリゾートホテルに来ているような気分になれます。

さて、今夜は薬の飲み合わせの話です。心療内科に通院しているAさん(仮)は、パキシルと言う薬を飲んでいます。SSRIと呼ばれるカテゴリーの薬で、いわゆる抗うつ剤です。

Aさんがいつものように心療内科の処方箋を持ってわたしの薬局に来られた時、電子薬歴(薬局で書いている薬のカルテです)を見ていたわたしは、数日前に内科医院から風邪薬のPL配合顆粒を処方されていたことに気づきました😲

あらら…と思いながら、わたしは頭の中でカウンターで話す内容を組み立てました。

「Aさん、こんにちは。先日内科から風邪薬が出てましたけど、眠くなりませんでした?」

「そうそう、ひどく眠くなって、飲むのを途中で止めてしまいましたよ。」

ああ、やっぱり…。Aさんの飲んだ風邪薬、PL配合顆粒には、鼻水鼻づまりの成分であるプロメタジンが配合されています。いわゆる抗ヒスタミンで、眠気を引き起こします💤

プロメタジンは、肝臓の酵素であるCYP2D6(シップ・ツー・ディー・シックス)で代謝、すなわち活性のないものに変えられますが、Aさんの飲んでいるパキシルは、このCYP2D6を働かなくさせてしまう性質があります。

そのため、プロメタジンが体から無くなるのに必要な時間が延長され、数回飲むうちに体内濃度が通常より高くなり、強い眠気を感じるようになるのです😵💤⤵

幸いAさんは途中で飲むのを止めて事なきを得ました。もしも飲み続けて自動車事故など起こしたら、大変な所でした🚑

Aさんには、パキシルを飲んでいる時にPL配合顆粒を飲むと眠気が強く出ることを説明し、心療内科以外の病院にかかるときは、必ずパキシルを飲んでいる事を口頭でも伝えて頂くようお願いしました。

PL配合顆粒の他、咳止めのメジコンや、心臓の薬のβ遮断薬の中にもCYP2D6で代謝されるものがあります。ひどい浮腫が出てβ遮断薬が飲めなかったケースを目にしています。珍しい事例では、緑内障の点眼のβ遮断薬が、パキシルと併用する事で徐脈や低血圧を起こしたと言う報告もあります💊

また、乳ガンの薬のタモキシフェンはCYP2D6で活性化される為、パロキセチンを飲んでいると期待する効果が得られない場合があります💊

このブログの読者で、パキシル(一般名はパロキセチン)を飲んでいる方がいらっしゃったら、病院と薬局で必ず申告下さい。ご協力をお願いします🙏

そして、飲んでいる薬の事で、なにか疑問があれば、薬剤師にご相談下さい。薬物療法のリスクを最少限に、効果を最大限にするのが、わたしたちの仕事です😉👍✨

読んで下さってありがとう😆💕✨

ゆきでした✨

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