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βラクタムのような時間依存の抗菌薬の有効性は%TAMで判断されます。
%TAM値で期待される効果は、ペニシリンとセファロスポリンで異なります。セファロスポリン系の場合、増殖抑制効果は≧40%、最大殺菌効果は≧60~70%です。以前記事にしたCEXのシミュレーションも、常用量となる500mgの条件で6時間以降は再度増殖したので、達成出来たのは≧40%であったと考えます。
さて、第三世代セファロスポリン経口剤はAMRでも削減が数値目標で示されていますが、CraigのPK/PD理論から、肺炎球菌に対する有効性を考察します。
Name Dose Cmax t1/2 Pb free after3h PSSP PISP PRSP
CFPN 100mg 1.28 1.01 45% 0.70 0.088 0.5 0.5 2
CDTR 100mg 1.66 1.66 92% 0.14 0.009 <0.25 0.5 1
CPDX 100mg 1.70 1.80 70% 1.19 0.30 0.5 2 8
CFTM 100mg 1.04 1.03 75% 0.26 0.03 <0.25 1 4
CFDN 100mg 1.59 1.11 73% 0.30 0.01 0.5 4 8
表の見方は、順に薬剤名、用量、最高血中濃度、半減期、血漿蛋白結合率、遊離のCmax(標的臓器の濃度と考えます。) 、3時間後の遊離の血中濃度(%TAM≧40を満たす濃度と考えます。半減期より推定)、 肺炎球菌のMIC(感受性、中等度耐性、高度耐性)です。1)
第三世代セファロスポリン経口剤は、CraigのPK/PD理論からは、PSSPへの臨床効果が確実と言えない上に、PISP以上の肺炎球菌の耐性株を選択していると考えます。2)
ガイドラインで推奨される経口の細菌性肺炎の治療薬はペニシリンとニューキノロンだけであるのは、以前の記事で紹介した通りです。3)
参考文献
1)抗菌薬サークル図データブック 第二版 じほう
2)呼吸器感染症原因微生物の質的変化による薬剤耐性化 生方公子 日本化学療法学会雑誌 Vol54 No2 Mar.2006
3)JAID/JSC感染症治療ガイド2014