レボフロキサシンのPKと用量設定について

レスピラトリーキノロンは、市中肺炎のエンペリックセラピーにおいて、高齢者や肺に基礎疾患を有する患者の場合、使用を積極的に考慮してよいとされます1)。
レボフロキサシン(LVFX)は、ガイドラインでキノロンの筆頭に挙げられています。肺炎の主な起因病原体である肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリス、マイコプラズマ、クラミジア、レジオネラに有効ですが、ここでは肺炎球菌に有効である事を、PK/PDの観点から検証してみようと思います。

LVFX500mg単回投与時のCmax8.04±1.98μg/mL, AUC0-72h 50.86±6.46μg・hr/mLです。肺炎球菌に対して治療効果を得るにはAUC/MIC≧30、 耐性菌を出さない為にはCmax/MIC≧5が必要と報告されています。この条件を満たすMIC≦1.6μg/mLです。1995年のデータではS.pneumoniae MIC80 1.56μg/mLです。抗菌薬は遊離型のみ活性を発揮するため、LVFXの血漿蛋白結合率が25%程度ある事を考慮する必要がありますが、腎機能正常でも反復投与による蓄積があり、蓄積率:R=1.1~1.3程度となる事が予想されます。この2点が相殺されることで、PK/PDの観点からは、肺炎球菌に対してLVFX500mg24時間おきでも有効性があるのではないかと考えられます。

文献検索した所、用量設定の根拠として、モンテカルロシュミレーション法により肺炎球菌に対するレボフロキサシンのターゲット値がAUC/MIC≧30、 Cmax/MIC≧5で検討されていた事が確認されました2)。単回投与での検討で、論文には血漿中薬物濃度を使用、MICは国内における薬剤感受性サーベイランスで2004年に収集された臨床分離S. pneumoniae に対するLVFX のMIC 分布を用いている、と記載されています。血漿中濃度との事ですが、Cmax6μg/mLと言う数値を利用しているため、蛋白結合率25%を加味した遊離の薬物濃度と読み替えが出来そうに思えます。

ここまで理論的な考察を重ねて来ましたが、レボフロキサシンのインタビューフォームには2011年に発表された市販後調査報告が収録されています。使用成績調査の項目に原因菌別の有効率・菌消失率と言う一覧があり、肺炎球菌への有効率98.3% ( 170/ 173)、 菌消失率98.5% ( 131/ 133)と記載され、実臨床においてもこの用量設定による効果が証明されているようです3)。

参考文献
1)JAID/JSC 感染症治療ガイドライン―呼吸器感染症― http://www.chemotherapy.or.jp/guideline/jaidjsc-kansenshochiryo_kokyuki.pdf
2)戸塚恭一ほか 総説「Levofloxacin 500 mg 1 日1回~新用法・用量~」 日本化学療法学会雑誌 SEPT.2009 VOL.57 NO.5
3)堀 誠治ほか 市販後調査報告 「Levofloxacin 500 mg 1 日1 回投与の安全性・有効性」 日本化学療法学会雑誌 2011;59(6):614-633



蓄積率で半減期が延長している患者の定常状態の最高血中濃度を予測する方法。半減期と投与間隔から表を見れば公式の計算も不要。

半減期が延長している患者さんが薬を飲んだら、定常状態の最高血中濃度は何倍になる?

薬剤師あるあるの臨床疑問です。血中濃度が上がるのは予想出来るけど、でも何倍?だれかタスケテ…

この疑問に答えるのが「蓄積率」と言う概念です。半減期と投与間隔から表を見れば、公式の計算も不要です。

疑義照会や処方提案も、具体的な数値を示しながらだと、成る程と思ってもらえるはず。

薬剤師ならマスターしたい蓄積率。反復投与して定常状態になったときの最高血中濃度を予想出来るようになります✨

それでは見て行きましょう✨

Ritschel理論、半減期と投与間隔の持つ意味

薬が体から無くなるより早い間隔で薬を飲めば、体内濃度が高くなるのは直感的に分かると思います。

ある薬物を反復投与した場合、投与間隔を半減期で割ったものが4未満であれば、半減期の5倍の時間で定常状態に達します。

これをRitschel理論と言います。
Tau/T-half〈4
Tau:投与間隔 T-half:半減期

蓄積率の公式で、定常状態の最高血中濃度を計算

この時、蓄積率(R)を使用すると、薬物の定常状態における最高血中濃度(Css.max)を簡便に計算することが出来ます。
R=1/(1-exp(-kel・Tau))
=1/(1-exp(-0.693Tau/T-half))
Css.max=R・Cmax
kel:消失速度定数

公式を書きましたが、暗記する必要はありません。後で掲げる表を見れば、計算すら不要になります。

後、蓄積率の適応にあたって幾つか留意すべき事があります。

蓄積率の適応にあたって留意すること ①体格の補正

Cmaxが外国人のデータである場合、体格を補正する必要があります。おそらく体重は日本人より大きく、元データの分布容積が大きいので、そのままでは血中濃度を実際より小さく評価する可能性があります。
Cmax=F・S・D/Vd
F:バイオアベイラビリティ S:塩係数 D:投与量 Vd:分布容積

蓄積率の適応にあたって留意すること ②半減期の補正

薬物が腎排泄型で、患者の腎機能が低下している場合、元データに比して半減期が延長している、全身クリアランスが小さくなっているので、そのままでは患者の血中濃度を実際より小さく評価する可能性があります。腎機能に応じた半減期を文献検索すべきです。
Cltot=kel・Vd=0.693Vd/T-half

蓄積率は、具体的な薬物動態を計算するより、通常の何倍になるかと言う観点で利用

①②で見てきたように、蓄積率はざっくりした予想です。具体的な血中濃度を予測するよりは、半減期が延長している場合に、定常状態の最高血中濃度が通常の何倍になるか、と言う観点で使用するのが良いです。

実例:表を用いて簡便に最高血中濃度を推定してみる

お待たせしました。いよいよTau/T-halfと蓄積率の関係を計算した表を利用して、簡便に最高血中濃度を推定してみましょう。

パラメーターは投与間隔と半減期の2つだけです。投与間隔を半減期で割った数値に対応する蓄積率が、次の表から得られます。

Tau/T-half >4.0 3.0 2.0 1.5 1.0 0.8 0.7
(蓄 積 率 :R) 1.0 1.1 1.3 1.5 2.0 2.4 2.6

レボフロキサシン(商品名クラビット)は、腎機能が低下して半減期が延長すると、定常状態の最高血中濃度は何倍になる?

レボフロキサシンは添付文書を参照すると、腎機能正常であれば半減期9.17時間ですが、中等度低下で15.88時間に、高度低下で33.67時間に延長しています。

腎機能に応じた減量基準に従わず、常用量500mgを24時間おきに投与した場合、Tau/T-halfは、各々2.6、1.51、0.71なので、蓄積率Rは、各々1.1~1.3、1.5、2.6と推定され、定常状態の最高血中濃度は、単回投与時のCmaxのR倍と予測されます。

蓄積率と言う概念で、腎機能低下時のリスクを可視化出来る

レボフロキサシンの中枢神経系への副作用は用量依存性があるとIFに記載されていますから、蓄積率と言う概念を使用することにより、減量しない処方の有するリスクが可視化されると考えます。

まとめ

蓄積率の求め方が分かって頂けたと思います。簡単なので、ぜひマスターして薬局の日常業務に取り入れましょう。

処方提案でもスムーズに行くかと思います。

参考文献
1)灘井 雅行 薬物動態の基礎と薬物投与設計への応用 日児腎誌 Vol.19 No.2 47-59

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ゆきでした。

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童話「西の猫と東の猫」


ヨーロッパの猫たちに、動脈硬化の進行を抑える薬を与え、心筋梗塞を予防したと言う研究が発表されました。それを聞いた日本の人たちは、自分たちの飼っている三毛猫たちに、同じ薬をこぞって与えるようになりました。それで飼い猫たちを元気で長生きさせられると思ったのです。

でも、日本の人たちは知りませんでした。薬を与えても、心筋梗塞を予防出来るのは、心筋梗塞になる猫のうちの三匹に一匹だけ。薬を与えていても、全ての猫の心筋梗塞を予防することは出来ません。

そして、三毛猫が心筋梗塞を起こす確率は、ヨーロッパの猫の1/3以下であり、健康な三毛猫にこの薬を与えても、そもそも得になるか分からない、薬代に見あった価値があるか分からない、と言うことも、日本の人たちは知りませんでした。

この事を知っている猫の薬屋は、いつも心の中で悩んでいます。いつか、本当の事を上手く話せて、その上で飼い主が薬を与えるか、与えないか決めることが出来るようになれば良いのですが。

参考文献
1)the West of Scotland Coronary Prevention Study Group. Prevention of coronary heart disease with pravastatin in men with hypercholesterolemia. N Engl J Med. 1995;333:1301-07.
2) MEGA Study Group. Primary prevention of cardiovascular disease with pravastatin in Japan(MEGA Study):a prospective randomised controlled trial. Lancet. 2006;368(9542):1155-63.
3)所得格差時代の薬物療法 薬局 2018 Vol.69, No.5:42-47 南山堂

ハーボニーは軽度・中等度の腎機能低下では、用量調節は不要。

ハーボニーはledipasvir/sofosbuvirの配合剤です。sofosbuvirは代謝物が腎排泄されるため、重度腎障害(補正eGFR<30)、透析患者では禁忌とされています。軽度・中等度腎障害の場合はどう考えたらよいでしょうか。

米国・EUの添付文書では、軽度・中等度の腎機能障害に用量調整は不要とされています。米国の添付文書では、特別な集団として腎機能低下者の動態が検討されています。軽度(補正eGFR:80~50)、中等度(補正eGFR:50~30)ではsofosbuvirのAUC 0-infは61%、107%増加、また主代謝物GS-331007のAUC 0-infは55%、88%増加しました。1)

薬剤師のるぅ先生から腎機能中等度低下時のsofosbuvirの補正係数0.5で妥当だろうかとコメントを頂いたのですが、それを裏付けるようなデータと考えます。

sofobuvirは3倍量の1200mg単回投与で、有害事象の頻度と重症度はプラセボと同様でした。

GS-331007の半減期は、腎機能正常で22.7時間より、補正係数0.5の場合、2倍の45.4時間に延長していると考えられます。蓄積率は、1/(1-exp(-0.693Tau/T-half))から1.9と3.3ですから、中等度腎機能低下でもCss.maxは単回投与時の3.3倍程度であり、安全性はあると解釈出来るかも知れません。

るぅ先生は、ハーボニー配合錠1錠48時間おき、と言う処方を受けられたそうです。

ハーボニー配合錠の用法用量設定の根拠、と言う資料がありました。1) 第1相試験でledipasvir(LDV)90mgを3日間単独投与での血漿中LDV濃度のトラフ値は、ジェノタイプ1のHCV平均推定EC90の127.4倍とあります。半減期は約50時間ですので、投与間隔が倍の48時間になったとして、トラフ値はEC90の63.7倍で、これは30mgを3日間投与でのトラフ値のEC50の51.1倍と同程度です。また第2相の用量設定試験で4剤併用した結果、SRV24率は、LDV30mg+DAAの24週間投与群と、90mg+DAAの12又は24週間投与群で統計的有意差は認められませんでした。

これらの知見から、承認外の用法用量ですが、ハーボニー配合錠48時間おきも、ある程度の有効性はあるかも知れません。

ただ、確実な治療効果を得る為には、用量調節をしない投与方法を取る方がbetterではないかと私は思います。

参考文献

1)PMDA「ハーボニー配合錠に関する資料」

妊娠中のアセトアミノフェンとNSAIDsの安全性

アセトアミノフェンは、FDA薬剤胎児危険度分類基準でB:人での危険性の証拠はない、妊娠の全ステージにおいて比較的安全に使用出来る薬剤です。

添付文書に妊娠末期の動脈管収縮リスクが記載されていますが、根拠としている動物実験はラットに常用量の15倍を投与したデータであり、ヒトに常用量を投与した観察研究では結論が出ていません。

胎児性動脈管早期閉鎖は全分娩の0.6%に生じ、その2/3以上は特発性との報告があります。母体にアセトアミノフェンの服用歴があったとしても、因果関係があるとただちに結論する事は困難です。

また妊娠初期にアセトアミノフェンに曝露した9146例において、奇形等の増加は認められませんでした。1)

NSAIDsには流産リスクの報告があります。

米国カリフォルニア州のコホート研究で、妊娠中にイブプロフェン、ナプロキセンを服用した場合、20週までの流産リスクが1.8倍に高まりました。

特に妊娠初期や1週間以上の長期服用では、5.6~8.1倍と大幅にリスクが高まる結果でした。

一方で、アセトアミノフェンでは流産の相対リスクは1.2(95%CI:0.8-1.8)、妊娠1週間以内の服用と1週間以上の服用でも相対リスクはそれぞれ、0.8倍、0.7倍で、すべて有意差はありませんでした。

研究グループは妊娠を望む女性は妊娠初期のアスピリンやNSAIDsの服用は避けるべきと警告しています。2)

1)Perinatology.com/Drugs in Pregnancy and Lactation(Briggs GG)
2)Exposure to non-steroidal anti-inflammatory drugs during pregnancy and risk of miscarriage: population based cohort study BMJ 2003.8.16

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OATP1を介したスタチンの相互作用と横紋筋融解症リスク。

横紋筋融解症の発症リスクはスタチン単独療法で低く、アトルバスタチン、プラバスタチン、およびシンバスタチンで0.44/10,000人年と報告されています。スタチンにフィブラートを併用すると、特に高齢の糖尿病患者でリスクが増加するのが観察されました。発売中止となったセリバスタチンは発症リスクが高く、単独で5.34/10,000人年でした。また、アトルバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチンとフィブラートとの併用療法では5.98/10,000人年とリスクが上昇し、特にフィブラートと組み合わせたセリバスタチンは1,035/10,000人年の発症をもたらしました1)。

基礎研究の知見から、セリバスタチンによる横紋筋融解症は、SLCO1B1遺伝子によってコードされる肝取り込みトランスポーターOATP1B1の遺伝子変異、及びOAT1B1を介した相互作用の関与が想定されています2)。また、大規模なコホート研究で、プラバスタチンを含むCYP3A4で代謝されないスタチン内服患者におけるクラリスロマイシンの安全性の検討がありました。結果、アジスロマイシンに比して急性腎傷害による入院を1.65倍、高カリウム血症による入院を2.17倍、全死亡リスクを1.43倍有意に増加させました。理由として、肝取り込みトランスポーターOATP1B1とOATP1B3がクラリスロマイシンにより阻害される機序が考えられています3)。ただ、クラリスロマイシンの海外用量は1,000mg/dayですので、外的妥当性の解釈には注意が必要です。

スタチンとOATP1を阻害する薬剤の併用は慎重を期した方が良いかも知れません。新規薬剤では、心不全に適応のあるアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害剤サクビトリルと、アトルバスタチンの併用による横紋筋融解症が報告されています。カナダの添付文書には、併用によりアトルバスタチンのCmax2倍、AUC1.3倍に増大させること、サクビトリルがOATP1B1および1B3を阻害することが記されています4)。

最後に、横紋筋融解症を回避する為のマネジメントについて触れておきます。米国のStatin Muscle Safety Task Forceのアルゴリズムでは、スタチンを休止するCKの判断値を正常上限値(upprr limit of the normal range:ULN)の3倍としています。日本臨床化学会(JSCC)の標準化対応法によるCKの基準値は男性55~204IU/L 女性42~164IU/Lですが、試薬や機器によっては若干異なるため、上限値(ULN)を250とする施設もあります。ULNを200IU/Lとすると600IU/Lが判断値となります。CK≦3xULNであれば継続投与し、CK>3xULNまたは筋症状があれば2~4週間休薬して経過を見ます。休薬によって症状が改善した場合、その薬を中止・他のスタチンを低用量で投与開始し、とくに異常がなければ最大容量または目標とするLDL値が得られるまで増量するとしています。

1)Incidence of hospitalized rhabdomyolysis in patients treated with lipid-lowering drugs. PMID:15572716
2)OATP1B1-related drug–drug and drug–gene interactions as potential risk factors for cerivastatin-induced rhabdomyolysis PMCID: PMC3894639
3)Risk of adverse events among older adults following co-prescription of clarithromycin and statins not metabolized by cytochrome P450 3A4. PMID: 25534598
4)Rhabdomyolysis After Coadministration of Atorvastatin and Sacubitril/Valsartan (Entresto™) in a 63-Year-Old Woman PMCID: PMC5089965

フェンタニル口腔粘膜製剤は、血漿中蛋白濃度で効果に差が生じるか。

フェンタニル口腔粘膜製剤は強オピオイド定時投与中の突出痛を有するがん患者のレスキューに用いられる製剤です。
血漿蛋白結合率が高い為、血清アルブミン濃度が低いと効果や副作用が強く出るのではないかと懸念されます。
実際、オピオイドスイッチングで他剤からフェンタニル貼付剤に切り替えた場合、血清アルブミンレベルの層別で効果に差があったとする報告があります1)。
薬物動態理論からはどのように分析されるでしょうか。

フェンタニルの薬物動態パラメーターは以下です。
-----------------------
バイオアベイラビリティ F: 65%(50%は口腔粘膜から、15%は消化管から)
未変化体尿中排泄率  Ae:10% : 主に肝代謝
分布容積 Vd:420L   : 7L/kg
全身クリアランス CLtot= 766.7mL/min
腎クリアランス   CLR=Ae・CLtot/D=76.7mL/min
肝クリアランス    CLH=CLtot-CLR=690mL/min
血漿蛋白結合率80~86%で、fuP14%(<20%) :binding sensitive
-----------------------
B/P比は不明ですので、B/P>0.5を用います。
EH’=690(mL/min)/0.5x(1600mL/min)=0.86
EH’は0.86より小さな値ですので、CLH=QH、CLH=CLH、CLH=fuB・CLintHの可能性があります。
フェンタニルは脂溶性なので、血球移行率は高いと予想されます。B/P比が0.6程度あれば、EH’>0.7で肝血流量依存型と判断されます。
実際、文献よりフェンタニルが肝血流量依存型と言う情報を得ました2)。

従って、CLtot=CLH=QHと表現されます。
総濃度はCLtot=QH (CLpo=fuB・CLintH/Fa)
遊離型濃度は CLtotf=QH/fuB (CLpof=CLintH/Fa)

EH’>7で遊離型薬物濃度が増加(fuBが上昇)すると、
持続注入(パッチ剤を想定)を行っている場合、fuBが上昇してもCLtotは変化しないので、定常状態の薬物総濃度は変化しませんが、CLtotfは低下するので遊離型薬物濃度は上昇することが推定されます。
静注繰り返し投与(バッカル剤の口腔粘膜吸収を想定)の場合、fuBが上昇してもCLtotは変化しないので、定常状態の平均薬物総濃度は変化しませんが、CLtotfは低下するので平均遊離型濃度は上昇することが推定されます。
経口繰り返し投与(バッカル剤の消化管吸収を想定)の場合、fuBが上昇するとCLpoは上昇するので、定常状態の平均薬物総濃度は低下し、CLpofは変化しないので遊離薬物濃度は変化しないことが推定されます。

参考文献
第3版 臨床薬物動態学 緒方宏泰編著
1)Influence of Serum Albumin Levels during Opioid Rotation from Morphine or Oxycodone to Fentanyl for Cancer Pain
2)フェンタニル・パッチにおける薬学的ケア 日病薬誌 第46巻5号(647‒649)2010年

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SUR2受容体に親和性の高いSU剤は、虚血性心疾患のリスクとなるかも知れない。

要点:虚血性心血管の既往症があってSU剤を使用する場合、虚血プレコンディショニングを邪魔しないグリクラジドが安全性が高いかも知れない。

デンマークの観察研究の報告では、SU剤はメトホルミンと比して全死亡率や心血管死亡率との関連が認められました。

グリメピリド、グリベンクラミド、グリピジドおよびトルブタミドを含む繁用されるSU剤を用いた単独療法で、死亡率および心血管リスクの増加と関連しているようだと結論されています。

一方、グリクラジドおよびレパグリニドは、他のSU剤より低リスクのようでした。

具体的な結果を見ましょう。心筋梗塞の既往のない患者において、総死亡のハザード比はグリメピリド:1.32(1.24-1.40)、グリベンクラミド:1.19(1.11-1.28)、グリピジド:1.27(1.17-1.38)、トルブタミド:1.28(1.17-1.39)でした。

また、心筋梗塞の既往のある患者では、グリメピリド:1.30(1.11-1.44)、グリベンクラミド:1.47(1.22-1.76)、グリピジド:1.53(1.23-1.89)、トルブタミド:1.47(1.17-1.84)でした。

統計的有意差を持って、リスクの増大が観察されました。

また、心筋梗塞の既往がない患者、および既往のある患者で、総死亡のハザード比はグリクラジド:1.05(0.94-1.16)および0.90(0.68-1.20)、レパグリニド:0.97(0.81-1.15)および1.29(0.86-1.94)で、メトホルミンと比較して統計的有意差は観察されませんでした。

薬理学的に見ると、SU剤は膵β細胞膜のSUR1に直接結合し、KATPチャネルを閉口させ、これにより細胞膜の脱分極が生じ、電位依存性Ca2+チャネルが開口、Ca2+イオンが細胞内に流入します。

ここから先は、グルコースによる生理的なインスリン分泌と共通の経路になります。これがSU剤がインスリン分泌を促すメカニズムです。

SU剤の作用する受容体SUR1は、膵β細胞の他、大脳皮質や視床下部に分布しています。

また、SUR2は心筋、骨格筋、平滑筋、血管平滑筋に分布しています。とくに心筋に発現しているSUR2Aは虚血プレコンディショニングと言う心筋保護作用に関わっていると考えられています。

心筋のKATPチャネル(SUR2A)は通常はほとんど閉口されていますが、心筋が虚血状態(心筋内ATP濃度低下)となったときには、KATPチャネルが開口することで心筋収縮力を低下させて心筋を保護します。

これを、虚血プレコンディショニングといいますが、心筋のSUR2Aに親和性をもつSU薬は心筋KATPチャネルの開口を阻害し、心筋障害を助長してしまう可能性があります。

ベンズアミド構造を持つグリベンクラミドなどのSU剤は、心臓のSUR2受容体に親和性が強く、心虚血時に悪影響を及ぼす可能性が指摘されていました。

今回の観察研究は、その仮説を支持する結果でした。グリクラジドはリスク増加傾向はありましたが、メトホルミンと比較して統計的有意差は観察されませんでした。

これはグリクラジドが膵SUR1受容体に選択性が高いと言う薬理学的知見と矛盾しません。

これらの知見から、心筋梗塞など虚血性心疾患の既往のある患者にSU剤を使用する場合は、グリクラジドが安全性が高いかも知れません。

1)Mortality and cardiovascular risk associated with different insulin secretagogues compared with metformin in type 2 diabetes, with or without a previous myocardial infarction: a nationwide study. PMID: 21471135

2)月刊糖尿病 2009.7 医学出版
3)類似薬の使い分け  羊土社

抗てんかん薬の催奇形性、特に神経管開存は葉酸代謝阻害が一因と考えられ、妊娠前からの葉酸服用を指導する必要がある。

要点:抗てんかん薬の催奇形性、特に神経管開存は葉酸代謝阻害が一因と考えられ、妊娠前からの葉酸服用を指導する必要がある。

バルプロ酸(VPA)による特徴的な奇形として、二分脊椎が1~2%の頻度発生した事が報告されています。VPAの催奇形の危険度は投与量・血中濃度と相関があり、血中濃度が70ug/mL以下ではリスクの増大が見られない為、治療上可能であれば、この濃度以下に維持する事の重要性が指摘されています。過去に、てんかん妊婦938例の妊娠について調査が行われ、抗てんかん薬に暴露されたてんかん妊婦の児の奇形発生率は9.0%でした。VPA用量は奇形発生率と相関があり、VPA濃度が70ug/mL以上では奇形発生率は41.7%(5/12)、70ug/mL未満では6.3%(3/48)でした1)。

バルプロ酸ナトリウムによる先天性の奇形の発症頻度は、1日服用量が1,500mg以上ではオッズ比が10.9だったのに対して、1日服用量が1,500mg以下では3.7だったとの疫学調査が報告されています2)。別の研究者は、バルプロ酸ナトリウムの1日服用量が600mg以下では、1,000mg以上と比較して胎児の先天異常のリスクは有意に少なかった事を報告しています。

ヨーロッパにおける5つの前向き研究に蓄積された1,379例の児のデータが再分析されている。バルプロ酸の1日服用量が>1,000mg以上では、≦600mg服用群と比較して、先天大奇形MCA(特に神経管欠損)の有意なリスク増加が見られました3)。[RR:6.8, 95%CI: 1.4-32.7]

日本てんかん学会のガイドラインでは、妊娠前から葉酸の補充を行うこと、抗てんかん薬と葉酸の血中濃度を測定する事が勧告されています。「てんかんを持つ妊娠可能年齢の女性に対する治療ガイドライン」によれば、妊娠前の発作の抑制として、必要最低限の抗てんかん薬単剤で試み、VPAは1,000mg/日以下が望ましい、とされています。また、血中濃度に依存して奇形発現率が増加するので、なるべく徐放剤を用いることが推奨されます。

抗てんかん薬の催奇形性、特に神経管開存は葉酸代謝阻害が一因と考えられています。葉酸補充が催奇形の頻度を減少させるかは必ずしも明らかになっていませんが、抗てんかん薬内服の場合は、妊娠前から1日5mgの葉酸の服用が推奨されています。抗てんかん薬服用中の葉酸の効果はまだ十分なデータはありませんが、一般集団では葉酸の0.4mg/日の服用によって、神経管開存の70%程度が防止出来ることが報告されています4)。

葉酸の摂取による胎児奇形の発症防止は、妊娠4週から7週末までの絶対過敏期(ほぼ妊娠2ヶ月に相当する)にしか有効に働きません。この時期に入った事は、基礎体温を記録しながら余程慎重に見ていなければ気づかれないので、葉酸を効果的に投与するには、妊娠前からの服用を指導する必要があります。

参考文献
「実践 妊娠と薬 第2版」
1)Congenital malformations due to anti epileptic drugs. Epilepsy Res, 33(2-3): 145-158. 1999

2)Antiepileptic drug use of women with epilepsy and congenital malformations  in offspring. Neurology, 64(11): 1874-1878, 2005
3)Material use of Antiepileptic drugs and the risk of major congenital malformations: a joint European prospective study of human teratogenesis associated with maternal epilepsy. Epilepsia, 38(9): 981-990, 1997

4)Recommendation for the use of folic acid to reduce the number of cause of spina bifida and other neural tube defects. MMWR Morb Mortal Wkly Rep, 49: 513-516, 1991

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スタチンとマクロライドの相互作用リスクは一様でない。リスクの高いのは、シンバスタチン、クラリスロマイシンが共に高用量の場合。


要点:シンバスタチンを高用量で服用している小柄な女性は、クラリスロマイシン800mg/dayを含むピロリ菌除菌レジメンで横紋筋融解症を起こしやすい。

スタチンとマクロライドの相互作用は、CYP3A4を介する薬物代謝阻害作用と、OATPsを介する薬物トランスポーター阻害作用が知られていますが、今回は薬物代謝阻害作用の面から考察をします。

72,591人を対象としたカナダのコホート研究で、CYP3A4で代謝されるアトルバスタチン、シンバスタチン服用患者にエリスロマイシン、クラリスロマイシンを投与した、安全性の検討があります。アジスロマイシンと比較して、30日以内の横紋筋融解症による入院は絶対リスクで0.02%(95%CI;0.01-0.03)上昇しました。急性腎傷害は絶対リスクで1.26%(95%CI0.58-1.95%)、総死亡は絶対リスクで0.25%(95%CI0.17-0.33%)上昇しました1)。

この論文の結果を日本の臨床に応用することは可能でしょうか。外的妥当性の解釈を試みます。

まず、国内の添付文書上、アトルバスタチンはクラリスロマイシンと併用注意であり、併用により血漿中薬物濃度の有意な上昇(Cmax+55.9%、AUC+81.8%)が見られたと記載されています。エリスロマイシンは具体的な数値はありませんが、併用注意であり、危険因子-横紋筋融解症のと思われますが-、腎機能障害と記載されています。また、シンバスタチンは、添付文書上エリスロマイシン・クラリスロマシンと併用注意であり、具体的な数値はありませんが、急激な腎機能悪化を伴う横紋筋融解症が現れやすい。腎障害のある患者には特に注意すること、と記載されています。

インタビューフォームを参照すると、アトルバスタチン:本剤10mgを1日1回、8日間経口投与し、その投与開始後6日目にクラリスロマイシン500mgを1日2回、3日間経口投与、併用による本剤の血漿中活性体濃度の上昇(Cmax:+55.9%、AUC0-Tlast:+81.8%)が認められた。相互作用発現機序として、クラリスロマイシンによる代謝阻害が示唆された。 また、エリスロマイシン500mgを1日4回、11日間経口投与し、その投与開始後8日目に本剤10mgを1日1回、4日間経口投与結果:併用による本剤の血漿中HMG-CoA還元酵素阻害活性体濃度の上昇(Cmax:+37.9%、AUC0-∞:+32.5%)が認められた。相互作用発現機序として、エリスロマイシンによる代謝阻害が示唆された、とあります。

同様にシンバスタチンは1.5g/日のエリスロマイシンまたはプラセボを2日間投与し、2日目に40mg/日のシンバスタチンを経口投与した後の血清中のシンバスタチン、シンバスタチンのオープンアシド体、エリスロマイシンの濃度を24時間後まで測定した。エリスロマイシンは、シンバスタチンの最高血清濃度(Cmax)を3.4倍上昇させ、0~24時間後までの血清シンバスタチンのAUC(0~24)を6.2倍増大させた。エリスロマイシンはシンバスタチンのオープンアシド体のCmaxを5倍上昇させ、AUC(0~24)を3.9倍増大させた、とあります。

また、PISCS理論からは、次のまとめ表が参考になります2)。
リポバス       リピトール
CR(CYP3A4):1.00 CR(CYP3A4):0.68
クラリスロマイシン IR(CYP3A4):0.88  AUC11.9倍      AUC1.8~4.4倍 (実測値)
エリスロマイシン  IR(CYP3A4):0.81   AUC6.2倍       AUC1.3倍      (実測値)

上述のコホート研究の結果を日本に外挿することは出来るかですが、注意が必要なのは、薬剤の用量です。

クラリスロマイシンの国内用量は400mg/dayですが、海外用量は1,000mg/dayです。クラリスロマイシンのCYP3A4阻害作用はMBIかつ用量依存性が指摘されていますので、通常の400mg/dayでの相互作用は相対的に少ないと考えられます。CAM400mg/day、800mg/day 1週間の投与により、内因性コルチゾールのクリアランスは各々30%、60%低下したと言う報告があります3)。CLtot=Dose/AUCと言う関係式から、AUCは各々1.43倍、2.5倍に上昇すると推定されます。

また、スタチンの用量にも注意が必要です。
シンバスタチンの国内用量は~20mg/dayですが、海外用量は~80mg/dayです。リポバスのインタビューフォームには、米国の添付文書が掲載されていて、「治療開始1年間は、横紋筋融解症を含むミオパチーのリスクが上昇するため、80mgの投与は、筋毒性の形跡がなく、慢性的(例えば、12ヶ月もしくは以上)に服用している患者に制限すること。すでに80mgを服用して禁忌もしくは、シンバスタチンの上限用量に関係している相互作用のある薬剤を服用する必要のある患者は、相互作用の可能性の少ないスタチン製剤に切り替えること。横紋筋融解症を含むミオパチーのリスクは、80mgの用量に関連して上昇するため、40mgでLDL-Cの目標達成できない患者には、80mgを投与するのではなく、LDL-C低下がより効果のあるその他のLDL-C低下薬を選択すること」とあります。

以上の知見から、スタチンとマクロライドの併用について考える場合、リスクは一様でなく、薬剤によって異なり、また使用する用量によっても異なります。患者背景によっても異なります。国内で遭遇する可能性がある処方で注意が必要なのは、シンバスタチンを10~20mgの用量で用い、腎機能が低下していて、体格が小柄であり、ピロリの除菌をクラリスロマイシン800mg/dayのレジメンで使用する場合、また感染症の治療にエリスロマイシン1,200mg/dayで使用する場合。これらは特にリスクが高く、注意が必要と考えられます。

参考文献
1)Statin toxicity from macrolide antibiotic coprescription: a population-based cohort study.PMID: 23778904
2)これからの薬物相互作用マネジメント 臨床を変えるPISCSの理論と実践  大野能之・樋坂章博 編著 じほう
3)”Dose-dependent inhibition of CYP3A activity by clarithromycin during Helicobactre pylori eradication therapy assessed by changes in plasma lansoprazole levels and partial cortisol clearance to 6β-hydroxycortisol”Clin Pharmacol Ther. 72. 33-43 (2002)