メトホルミン服用者にヨード造影剤を使用する場合、乳酸アシドーシスのリスクを避ける為に造影後48時間の休薬が添付文書に記載されています。実際どの程度のリスクなのでしょうか。
以前ブログで紹介したコホート研究によれば、メトホルミンによる乳酸アシドーシスの粗発症率は、3.3人/10万人年でした。フリーの全文を参照したところ、急性心不全や敗血症、体液量減少、急性腎不全と言ったリスク因子を有し、造影剤使用と明記のケースはありません。
ただし、ヨード造影剤が起因となる造影剤腎症(contrast-induced nephropathy; CIN)は、急性腎不全に含められるかも知れません。
韓国の報告[Korean J Radiol.2014 Jul-Aug;15(4):456-63]で合併率2.2%、欧州のメタ分析[Eur J Radiol.2013 Sep;82(9):e387-99]で5%と言う論文があります。
高齢や血清クレアチニン高値はリスク因子になるようです。eGFR<60なら造影前の脱水補正が予防適応になります[Can Assoc Radiol J.2014 May;65(2):96-105]。
70歳男性で、Cr1mg/dLなら<5%,90歳でCr1mg/dLなら10-15%のCINリスクがあると、ノモグラム[Am J Emerg Med.2011 May;29(4):412-7]より分かります。
検査後48時間が造影剤腎症のピークなので、これを経過し腎不全が無ければメトホルミンを再開と言うのが、添付文書の記載の意味合いと考えられます。
CINは多くの場合可逆的であり、10日以内にクレアチニンは基礎値に戻る事が多いとされます。また、腎機能正常であれば、メトホルミン中止は検査時でよいようです。
参考文献 「ホスピタリストのための内科診療フローチャート」 「月間薬事 腎臓病ガイドライン総まとめ」2017 vol.59 No.10