この記事を読むのに必要な時間は約 3 分です。
こんにちは。今日は糖尿病のAさんの話をします。
Aさんは67歳の男性、糖尿病の治療を受けています。脳卒中や心筋梗塞の既往はありません。治療の目安になる検査値は、本日もらった検査票でHbA1C7.2とのことです。
薬の確認が終わったところで、Aさんから「正常値は5とか6とかって書いてあるけど、治療について、どれくらい頑張れば良いのかな」と、相談を受けました。
処方はSU剤のグリメピリド1mg、DPP4阻害薬のアログリプチン25mg、レニン・アンジオテンシン系阻害薬のバルサルタン80mg、スタチンのプラバスタチン10mgです。
Aさんの疑問に答えるために、論文を検索して、台湾の観察研究を見つけました1)。
【サマリー】2型糖尿病患者で、HbA1c7.0-8.0%、収縮期BP130-140、LDL-C 100-130の群が総死亡率が最も低かった。12643人のコホート研究。
これをみると、効果が最大になりそうなHbA1Cの目標値は、ずいぶん緩やかです。他の臨床研究でも、厳格治療は重症低血糖リスクが上がり、死亡率も上昇すると言う報告が散見されます。
熊本スタディと言う臨床研究で、HbA1Cを7未満にすることで、網膜症や腎症と言った微小血管障害をある程度予防する効果が知られていますが、心筋梗塞のような大血管障害に関して、血糖値を厳格に管理することによる治療効果はあってもごく僅かのようです2)。
ガイドラインである「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」でも、65歳以上75歳未満でSU剤を使用している場合は、HbA1C7.5未満、下限6.5と設定されています。
Aさんの年齢になれば、微小血管障害を予防する治療の利益は、若年の方に比べて相対的に低くなっているので、重症低血糖を予防するためには緩やかなコントロールの方がBetterと思われます。
いかがだったでしょうか。ご家族の健康を守るためのご参考になさって下さい。
1)All-cause mortality in patients with type 2 diabetes in association with achieved hemoglobin A(1c), systolic blood pressure, and low-density lipoprotein cholesterol levels. PMCID: PMC4210124 PMID: 2534771
2)「CQ3 糖尿病に対する厳格な血糖管理の効果は?」 CORE Journal 循環器 no.1 2012
|