溶連菌で抗生物質を飲んでも感染後腎症を予防しないと聞きましたが、本当ですか?

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溶連菌感染症の非化膿性合併症として、溶連菌感染後腎症(PSAGN)が知られています。Carapetis らはPSAGN の頻度を先進国で人口10万人あたり6、発展途上国では24.3と推定し、リウマチ熱とともに減少傾向にあることを報告1) しています。

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武田ら2) はPSAGN の症例の大半は先行感染時に抗生物質を投与していないか、2~3日程度の患児であったとして、十分な抗生物質の投与がPSAGN を予防する可能性があるとしています。しかしながら、坂田らの成績3)では、GAS感染症と診断されていた小児は10日間のアモキシシリン(AMPC) を内服していますが、PSAGNを発症しました。

坂田らの研究をもう少し詳しく見て行きましょう。PSAGNについて、坂田らは2005年から2007年の3年間の北海道道北・道東地域おける15歳未満の発症頻度を調査しています。その結果、小児の人口10万人あたりの1年間の発症率は4.0でした3)。PSAGNを発症した16名中、10名に先行感染が認められました。10名の内訳は、上気道炎が8名、肺炎が1名、溶連菌(GAS) 感染症が1名でした。16名中、8名で何らかの抗菌薬投与がされていましたが、3名は溶連菌に有効な抗菌薬を5日間以上内服していました。追記すると、全ての患児が8週間以内にPSAGNから回復しています。

先行感染のあった10名のうち、8名は発熱や咳などが主訴でありGAS検査は行われていないので、GAS感染症であったかは不明です。そのうち7名が抗菌薬の投与を受けていました。発熱や咽頭痛など、GAS 感染を疑うほどの所見がなかった例が半数でした。また、10名中3名(30%)は、GAS感染症に有効な抗生物質が投与がされていたにも関わらず、PSAGNを発症していました。

坂田らは、これらのことから、抗生物質を投与してもPSAGN の発症が確実に予防しえないと思われた、と結論しています。

1) Carapetis JR, Steer AC, Mulholland EK, et al. The global burden of group A streptococcal diseases. Lancet Infect Dis 2005 ; 5 : 685―694.

2)武田修明, 桑門克治, 藤原充弘, 他:溶連菌感染後急性糸球体腎炎の最近の動向と発症予防の可能性. 小児科臨床2007;60:1003―1008.

3)坂田宏:近年の小児の溶連菌感染後急性糸球体腎炎の実態調査. 日児誌2009;113:1809―1813.