処方箋だけで調剤するのは、目隠しをしたままピアノを弾くような曲芸だと思いませんか?

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こんにちは。研修認定薬剤師の奥村です。薬局では、処方箋以外の診療情報は無いと言う事は、世の中ではどのくらい知られているのでしょうか?

私も薬剤師になる前は、「どうして薬局でも病院で話してきたのと同じ事をもう一度聞かれるのだろう」、と不思議に思っていましたし、看護学校の学生さんが実習の一環で薬局に来られた時に、その話をするとびっくりされるので、案外知られていないのかも知れません。

薬局の薬剤師の仕事は、例えて言えば目隠しをしたままピアノを弾くような曲芸です。病名は分からない、検査値は分からない、病院で受けた検査は分からない、病院で受けた処置も分からない、身長や体重すら分からない事はざらです。

こうした中で、処方箋の内容のアセスメントを行うことは、極めて困難です。処方内容を吟味し、患者インタビューを行い、ガイドラインの標準治療から逆向きに病態を再構成します。すなわち、病名や受けたであろう検査や処置、取りうる検査値の範囲や薬の用量の妥当性を推測する訳です。

時に緊張感が漂う場合もあります。ハイリスクな薬で偶発的な処方箋エラーが発生した場合です。この段階では、直感も含めて、「何かがおかしい。でも何がおかしいのかは確定的には分からない」状態です。

このような場合は、病院への問い合わせをします。例えて言うと目隠しをずらす行為です。見逃せば命に関わるような重大なエラーをはじいた例も経験しています。

私たち薬剤師は、この仕事に就いた時から皆がこのやり方をしているので、鈍くなっているかも知れませんけれど、業界外の人から見れば、もっと安全で確実なやり方があるのでは、と考えると思いませんか?

現代はインターネットによるインフラが進んだ時代です。診療情報の閲覧が出来るIT構築は、技術的に可能な事です。実際、国内でもそのようなネットワークを実験的に稼働させた例もあります。このようなシステムを全国規模で実現する事が出来ないかと夢想します。

「目隠しが無い」状態で調剤が出来る事は、より安全で確実な医療の実現に貢献出来る事であり、それは患者さんにとっても、医師にとっても、薬剤師にとっても良い事になる、と私は思います。

そしてそのようなシステムが完成するまでは、薬局を利用して下さる皆さまには、ご配慮致しますので、薬を安全に使用出来るようにご協力をお願い致します。