コストを段階的に提示することで、患者のゼロリスク希求を少なくし、リスクの受容を促す。

要点:薬物療法には有害事象が付き物だが、コストを段階的に提示することで、患者のゼロリスク希求を少なくし、リスクの受容を促す。

薬物療法と言うリスクを低減する取り組みによって、他の新たなリスクを増大させてしまう事があります。これが有害事象で、リスク学では代償リスクまたは対抗リスクと呼び、この行為をリスクトレードオフと呼びます。一般に、リスクトレードオフの問題を含めて包括的にリスクを評価することで、リスクの不確実性は一層増大する事になります。現実的にはゼロリスクは有り得ないので、受け入れられるリスクとそうでないリスクの間のどこかで線引きをして、それより小さなリスクを安全と見なす、と言った安全概念が必要です。

ゼロリスクが強く求められる事象が研究されていて、上位10項目のなかに、薬の副作用が挙がっています。因子分析から「人工環境問題因子」に含まれ、人為的活動に基づく事故、産業活動に基づく事故については、ゼロリスクを求める傾向が強い傾向がありました。また、そのリスクが対人紛争である場合も、強くゼロリスクを求める傾向がありました。注目すべきは、病気そのものについてよりも、それに対処するための医療行為についてゼロリスクを求める程度が高い点です。どんな薬でも必ずリスクは伴うと言う事実にも関わらず、人々は医療行為に対して非常に高いレベルでの安全性を求めています。

しかしながら、コスト条件提示を変えた実験において、人々はいかなる時でも同じようにゼロリスクを追究する訳でないことも示唆されています。具体的には、段階的にコストを提示しながらリスク減少を説明した場合、最初に全てを提示した場合よりも、ゼロリスクを求める程度が少なくなりました。ゼロリスクの求め方を含めたリスク受容は、リスク低減とコスト提示の仕方によって多様です。

例を挙げれば、尿酸低下療法を行う場合のアロプリノールとフェブキソスタットは、薬価と安全性の観点から、リスクコミュニケーションを行う事が出来ると考えます。薬物療法の安全性の線引きを行うに当たっても、コストを段階的に提示するこの手法は、有効ではないかと思われます。

参考文献
改訂版 生活リスクマネジメント 奈良由美子 放送大学大学院教材

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です