この記事を読むのに必要な時間は約 3 分です。
こんにちは。研修認定薬剤師の奥村です。
皆さんは病院で溶連菌の検査をして、結果が陰性でも抗生物質が処方された経験はないでしょうか。これは何故でしょう。風邪に抗生物質は効かないとよく言われますが、本当に抗生物質を飲む必要があるのでしょうか。
運営者から、クローズドコミュニティに対する思いをお伝えしています。
記事の続きは会員ログイン後にどうぞ。
溶連菌は正式にはA群β溶血性レンサ球菌(GAS)と言う細菌です。GAS以外の菌に感染しても、細菌性の咽頭炎を起こす事があります。これらの菌は喉の拭い液を遣った溶連菌の検査をしても、陰性になります。
GAS感染が否定的であっても、以前に紹介した溶連菌の診断のポイント(センタースコアと言います)が3点以上であれば、80%以上は細菌が原因の咽頭炎である、とセンタースコアを考案したセンター氏は主張しています。
咽頭炎の原因になっている菌は、C群・G群溶連菌や、フソバクテリウムなどと考えられています1)。
C群・G群溶連菌は、合併症として扁桃周囲膿瘍を起こす事があります。また、フソバクテリウムはレミエール症候群と言う菌血症の原因と考えられています。このため、溶連菌でなくても、抗生物質による治療対象に含めるべきとセンター氏は主張しています。
嫌気性菌であるフソバクテリウムはセフェム系抗生物質の効果がなく、またペニシリンを破壊するβラクタマーゼと言う酵素を作るので、βラクタマーゼ阻害剤の入ったペニシリンであるユナシンを処方される場合があると考えられます。
ここまで見て来た様に、溶連菌の検査が陰性であっても抗生物質が処方されている時は、細菌性の咽頭炎の可能性が高いと小児科の先生が判断されているのではないでしょうか。咽頭炎は薬がなくても自然に治るものですが、合併症を予防する目的で、抗生物質は飲んだ方が良いと私は思います。
如何だったでしょうか。ご家族の健康を守る為に、ご参考になさってください。
1)Centor RM, et al. The clinical presentation of Fusobacterium-positive and streptococcal-positive pharyngitis in a university health clinic: a cross-sectional study. Ann Intern Med. 2015;162(4):241-7