漢方薬の麻黄湯とタミフルなどの抗インフルエンザ薬を飲み比べた研究があります。熱が下がるまでの期間や症状が治まるまでの期間に差はあったのでしょうか?

こんにちは。研修認定薬剤師の奥村です。

インフルエンザのシーズンになりました。皆さんがインフルエンザにかかったとしたら、どうされますか?病院で迅速検査を受けて、陽性であればタミフルなどを飲む事が多いと思います。異常行動が大きく報道された事もあって、タミフルは一時期、中学生・高校生など10代の若者への投与は禁忌とされました。その後の疫学調査でインフルエンザの異常行動とタミフルとの因果関係は証明されず、禁忌は撤回されたものの、子どもさんに飲ませるのに抵抗感を持つ親御さんもいらっしゃると思います。

今回、インフルエンザに対して漢方薬の麻黄湯と、タミフルに代表されるノイラミニダーゼ阻害薬の発熱期間・症状持続期間を比較した小規模な研究がありましたので、紹介いたします。麻黄湯は2,000年近い使用経験がある方剤で、インフルエンザにも適応を持ち、タミフルが登場する以前からインフルエンザに用いられて来ました。

この試験はインフルエンザの患者を4つのグループに分けて、それぞれ麻黄湯とタミフルなど抗インフルエンザ薬を服用し、経過を比較しました。その結果、熱が下がるまでの期間や、インフルエンザの症状が治まるまでの期間に差はありませんでした。むしろ関節痛に関しては、タミフルより黄麻湯の方が改善までの期間が早いという結果でした。論文では、麻黄湯はインフルエンザの治療の選択枝のひとつになると結論しています1)。

ただし論文の解釈には注意が必要です。小規模の研究であり、肺炎進展への予防効果などは検討されていません。患者背景もアブストラクトでは分かりませんが、健康な成人が対象で、幼児や高齢者、合併症のあるリスクの高いグループでの検討はなされていないと思われます。ですから、あくまで健康で元気な若者がインフルエンザにかかった場合、と限定して考えて頂いた方がよいと思います。合併症を有する方は、タミフルなど抗インフルエンザ薬を使用した方がよい場合もあるでしょう。その辺りを診察時に処方医とよくご相談なさることをお勧めします。

今回のお話は、いかがでしたでしょうか。ご家族の健康を守るためのご参考になれば幸いです。

最後に、アブストラクトの機械翻訳を掲載しておきます。

「本研究では、抗ウイルス薬である麻黄湯を抗ウイルス薬と比較し、発熱およびインフルエンザの他の主観的症状の持続時間に対するそれぞれの効果および併用効果を評価した。この無作為化対照試験に登録された45人の患者は、急速なインフルエンザ抗原検査で陽性A型インフルエンザを有し、書面で同意し、2008年11月から2009年3月まで順天堂大学病院で治療を受けた。 1):麻黄湯、9人の被験者、4人の被験者2):タミフル、13人の被験者; 3):、6人の被験者; 4):麻黄湯/ タミフルの組み合わせ、9名の被験者。発熱、筋肉痛、頭痛、関節痛、疲労および咳を含む6つのアウトカム指標を評価した。ボンフェローニ調整t検定により複数の比較について統計的差異を決定した。我々の結果は、治療の開始以来、発熱の時間経過プロファイルおよび発熱の解消までの日数の4群間に有意差がなかったことを示した。さらに、筋痛、頭痛、疲労および咳の解消までの日数に有意な群間差は検出されなかった。しかし、麻黄湯群は、関節痛の改善がタミフル群よりも速いことを報告した(P = 0.01)。結論として、麻黄湯は、発熱およびインフルエンザの症状を軽減する抗ウイルス薬と同等の効力を示した。無差別な使用、有害な再行動、現在の抗ウイルス薬への抵抗に対する重大な懸案が増え続ける中で、麻黄湯はインフルエンザの治療のためのエレガントな選択肢として役立つかも知れない。」

1)The efficacy of ma-huang-tang (maoto) against influenza Mizue Saita,et al.
Department of General Medicine, Juntendo University School of Medicine, Tokyo, Japan

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インフルエンザの検査が陰性でもタミフルを処方されたけれど、本当にインフルエンザ?検査が間違う事ってある?

こんにちは。研修認定薬剤師の奥村です。今日はインフルエンザ迅速検査についての話です。皆さんはインフルエンザを疑って病院にかかった時、鼻をぐりぐりして検体を取って検査を受けた事があると思います。あの検査は、どれくらい正確なのでしょうか?
 
複数の迅速検査キットを検討したメタ分析によれば、インフルエンザ検査キットの検査特性は、感度62.3%、特異度98.2%との報告があります。除外診断よりも確定診断に適した検査であることが分かります。言い換えれば、インフルエンザであることを証明するのは得意な検査ですが、インフルエンザでない事を証明するのは苦手な検査と言えます。

実例を挙げて、もう少し詳しく見て見ましょう。インフルエンザ流行期に38度の熱と咳嗽があれば、79%の確率でインフルエンザと言う疫学調査の報告があります。これを検査前確率として検査前オッズに変換すると、3.76です。

検査陽性の場合、陽性尤度比LR+は34.6です。これを検査前オッズに掛けると130.1、確率に変換すると、検査後確率は99.2%となります。すなわち、99%インフルエンザと解釈されます。

一方、検査陰性の場合の検査後オッズは、陰性尤度比LR-の0.384を検査前オッズに掛けると1.44、確率に変換すると、この時の検査後確率59%です。つまり、迅速検査が陰性でも、インフルエンザである確率が実に59%もあるので、たとえインフルエンザと診断されなくても、マスク・手洗・うがいなど、周囲への感染対策を怠らない事が必要です。医師によっては再度受診となってしまう負担を考えて、事前確率が十分高ければ検査しないでタミフル等のノイラミニダーゼ阻害薬を処方される事もあるでしょう。

検査が単純なものではなく、医学知識や統計学的な知識を駆使して解釈されていることが、お分かり頂けると思います。 問診や身体所見、周囲の流行状況を考えて検査前確率を推定する事、ベイズ統計学的な検査の解釈、また正確な手技も必要です。

こうした理由から、インフルエンザの検査は、A/B型インフルエンザ抗原(1470円)と免疫学的検査判断料(1440円)の二つの料金から成り立っています。

いかがだったでしょうか。ご家族の健康を守るためのご参考にして頂けると幸いです。
そして、病気のお子さんのいらっしゃるお母さんは、お大事になさって下さい。

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タミフルで過敏症を起こしたけれど、イナビルやリレンザは安全に使用できる?

こんにちは。研修認定薬剤師の奥村です。今日はインフルエンザの薬の話です。
タミフル、リレンザ、イナビルは、皆、ノイラミニダーゼ阻害薬に分類され、同じ効き方でインフルエンザウィルスが増えるのを抑える薬です。先日、近隣の内科医院の医師から、薬局にこんな問い合わせがありました。「タミフルで過敏症が出た疑いのある患者さんが居るんだけれど、吸入のイナビルは安全に使えるかな。構造式から考えると、どうなの?」

構造式から。無茶な質問に、苦笑いしてしまいました。構造式から薬効や持効性をある程度類推することは可能ですが、飲んで安全かどうか考えるのは、難しいと思います。添付文書を引っ張り出して、構造式を比較して見ますが、類似した部分もありますし、異なる部分もあります。医師には正直にそう伝えたところ、今日のところは軽症なので、ノイラミニダーゼ阻害薬は出さないけれど、今後のためにメーカーDI(医薬品情報を扱う学術部門)に確認してもらえるかな、との事でした。

翌日、イナビルを販売している第一三共に問い合わせしました。その回答は、次のようなものでした。

「タミフル過敏症の患者に対して、イナビルは禁忌ではない。構造式から考えると、リレンザとイナビルは非常に類似しているので、片方に過敏症があれば、もう片方に過敏症の出る可能性はある。一方で、タミフルはリレンザ・イナビルと側鎖は類似するものの基本骨格が異なるので、リレンザ・イナビルで過敏症がある場合も比較的、安全に使用出来るかも知れない。タミフルに過敏症の疑いのある患者に、イナビルが安全に使用出来るかと言う問い合わせはよくあるが、使用したか、安全であったかと言う追跡を行っていないので、データはない。」

医師にはその旨FAXで情報提供を行いました。

簡単に言うと、インフルエンザの薬は内服薬のタミフルで湿疹などの過敏症があれば、吸入薬のリレンザかイナビルが比較的安全、その逆も然り。吸入薬のリレンザ・イナビルのどちらかで過敏症があれば、もう片方の吸入薬でも過敏症の出る可能性がある、と言う事でした。

あくまで推論のレベルなので、実際に使ってどうだったか、症例報告など疫学的な情報が欲しかったのですが、メーカーのDI担当者からは「ありません」との回答で、この情報を参考に考える他ありません。

いかがだったでしょうか。ご家族の健康を守るためのご参考になさって下さい。

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