PISCSを応用して、クラリスロマイシン併用時のグアンファシンAUC上昇率を推定する。


PISCSを応用して、クラリスロマイシン併用時のグアンファシンAUC上昇率を推定する。

はじめに。インチュニブとクラリスロマイシンの併用は出来る?

グアンファシン(商品名インチュニブ)は、CYP3A4で代謝されることが添付文書に書かれています。

グアンファシンを服用するのは学童期のお子さんなので、クラリスロマイシンの処方機会も多いと思います。

CYP3A4阻害作用を有するクラリスロマイシンを併用することで、グアンファシンのAUCはどの程度上昇するでしょうか。

インタビューフォームにも併用に関する詳しい情報がないため、既知の知見を統合することで、AUCの上昇度合いの推定を試みます。

PISCSを応用して併用時のAUC上昇率を推定する

PISCSのデータからクラリスロマイシンのCYP3A4に対する阻害率(IR)は0.88、一方ケトコナゾールのIRは>0.9と考えられます。

類薬のイトラコナゾールのIRは0.95であるので、これを流用してみます。

基質のAUC上昇率=1/(1-CR・IR)

グアンファシンのCYP3A4寄与率(CR)は、ケトコナゾールでAUC3倍とのデータから、0.70程度と推定されます。

この場合、クラリスロマイシンのAUC上昇率は2.6倍と推定されます。

クラリスロマイシンの用量を補正出来ないか考察する

ただし、データの基となっているクラリスロマイシンの海外用量は、成人で1000mg/dayと日本の2.5倍です。

それを考慮すると今回の症例ではAUC上昇率はそこまで高くなかったかも知れません。

クラリスロマイシン(CAM)のCYP3A4阻害作用はMBIかつ用量依存的である事が示唆されています。

CAM400mg/day、800mg/day 1週間の投与により、内因性コルチゾールのクリアランスは各々30%、60%低下したと言う報告があります。

CLtot=Dose/AUCと言う関係式から、AUCは各々1.43倍、2.5倍に上昇したと推定されます。

結局の所、併用によるAUC上昇率はどの程度と予想されるか

これらを勘案すると、今回のクラリスロマイシン併用によるグアンファシンのAUC上昇は1.5倍程度だったのではないかと推定されます。

まとめ

ここまで見てきたように、グアンファシンとクラリスロマイシンと言う、併用に関する臨床データの無い薬剤を取り扱い、PISCSを応用することでAUC上昇率を推定しました。

グアンファシンは、クラリスロマイシンと併用した場合、AUC上昇率1.5倍と推定されます。

書籍紹介

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PISCSの運用の基礎知識について書いた記事です。ぜひご一読下さい。

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参考文献

1)これからの薬物相互作用マネジメント 臨床を変えるPISCSの基本と実践 監:鈴木洋史 編:大野能之 樋坂章博 じほう 2014年2月

2)医療現場のための薬物相互作用リテラシー 編:大野能之 南山堂 2019年

3)”Dose-dependent inhibition of CYP3A activity by clarithromycin during Helicobactre pylori eradication therapy assessed by changes in plasma lansoprazole levels and partial cortisol clearance to 6β-hydroxycortisol”Clin Pharmacol Ther. 72. 33-43 (2002)


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生涯死亡リスクと比較することで、生涯に渡って服用する薬の副作用リスクを提示する。

要点:スタチンを40歳から生涯服用して横紋筋融解症で入院する確率は、生涯のうちに道路交通事故で死亡する確率の約半分である。

リスクの程度を把握する為のリスク表現には、年間死亡リスクの他に、生涯死亡リスクがあります。生涯死亡リスクは、一個人が特定の原因により死亡する確率の事です。

例えば、交通事故の生涯死亡リスクは、個人が80年生きると仮定して、その間に交通事故で死亡しない確率は(1-4.5×10^-5)^80で求められ、およそ0.996です。1,000人のうち996人は交通事故で死亡しない、言い換えれば、1,000人のうち4人程度は死亡すると言う事になります。一方、スタチンを40年服薬すると仮定して、その間に横紋筋融解を発症しない確率は(1-4.4×10^-5)^40で求められ、およそ0.998です。

1,000人のうち998には、横紋筋融解症は発症しない、言い換えれば、1000人のうち2人は横紋筋融解症を発症すると考えられます。ただし、これは年間死亡リスクや年間発症リスクが一定であると仮定した場合の推定値であることに注意が必要です。

スタチンを初めて服用する患者さんに横紋筋融解症のリスクを伝える場合、生涯で発症するのは1,000人に2人程度であり、生涯に交通事故で亡くなる人の半分である、と説明すると、具体性を持って認識できるかも知れません。

年間死亡リスクを用いて、薬の副作用頻度の提示に具体性を持たせる。

こんにちは👋😃アロマ薬剤師🌿ゆき🌿です✨

今日は、副作用のリスクをどのように伝えるか、と言う話です✨

スタチンを服用していて、横紋筋融解症で年間に入院する確率は、道路交通事故で年間に死亡する確率よりわずかに低い、と言う内容を見ていきましょう☺

観察研究やランダム化試験によるデータの蓄積によって、私たちは薬理学的な説明では得られない、定量的な情報、すなわち頻度の情報を得る事が出来るようになりました。

これは、薬を飲む患者とリスクコミュニケーションを行う上で重要な情報と考えられます。けれど、副作用が起きる率をそのまま伝えたのでは、それがよく起きる事なのか、滅多に起こらない事なのか、判断が難しく感じる事もあるでしょう。

リスクマネジメントと言う学問分野で、リスクがどの程度深刻なものかを相対的に判断する目安として、年間死亡リスクと言う考え方があります。

一個人が1年間に死亡する確率の事で、厚生労働省が発表している人口動態統計年報主要統計表から確認する事が出来ます。様々なリスクについてエンドポイントを統一し、死亡率を比較する事で、リスクがどの程度の大きさを持って存在しているのか知ることが出来ます。

これを、疾病の発症率や死亡率、副作用の発現頻度等と比較してみると、数値が具体性を持って認識出来るのではないかと考えます。例えば、スタチンの副作用である横紋筋融解症を発症して、入院するに至る頻度は、0.44/10,000人年と報告されていますが、これは日本の道路交通事故による年間死亡リスク0.45/10,000人年と、ほぼ同じです。

副作用の頻度が稀と伝えるよりも、横紋筋融解症で年間に入院する確率は、日本で年間に道路交通事故で人が亡くなる確率よりもわずかに低い、と説明した方が具体性を持って認識出来るのではないでしょうか。このリスクが大きいか、小さいかは問題ですが、その話に関しては日を改めて書こうと思います。

参考文献
Incidence of hospitalized rhabdomyolysis in patients treated with lipid lowering drugs. PMID:15572716
改訂版 生活リスクマネジメント 奈良由美子 放送大学大学院教材
厚生労働省 平成26年度人口動態統計年報主要統計表

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はじめまして。

はじめまして。「松江出張所便り」と言うブログを作るのは、3度目です。私は山陰の田舎町で生まれ育ち、関東の大学で文学の修士号を取得した後、関西の大学で薬学の学士号と薬剤師免許を取得、故郷に戻って保険薬局で働いて来ました。昨年度から放送大学大学院の授業を聴講しています。EBM、リスクコミュニケーション、社会疫学、社会心理学、公共哲学等に関心があります。保険薬局で提供出来るサービスを、学問的な裏付けを持ちながら極限まで高めたいと思っています。農夫が耕地を耕すように、園丁が庭園の手入れを続けるように、保険薬局の薬剤師の仕事を耕し続けたい。このブログでは、薬剤師の可能性を広げる為に思索し、それを記録して行きたいと思います。

なお、登場する症例は架空のものであることをお断りします。医療情報の取り扱いには細心の注意を払っていますが、情報が古い等の不適切な記載がありましたら、ご指摘頂けたら幸いです。