電子薬歴でアラートが出て焦りましたが、検索の結果、エクセグランとトラマゾリン点鼻液はおそらく安全に併用できると考えました。

こんばんは🌙😃❗アロマ薬剤師🌿ゆき🌿です。
先日仕事をしていて、焦った話をします😅

その患者さんは、急性副鼻腔炎の治療で耳鼻咽喉科からトラマゾリン点鼻液0.018が出ていました。

鑑査を終えて、電子薬歴を開くと、電子薬歴のアラートが、次のように出ました。

トラマゾリン点鼻液0.118% エクセグラン錠100mg
1:禁止 【発現事象】急激な血圧上昇 【理由】本剤の血圧上昇作用を増強

???

トラマゾリンとMAO阻害薬は、添付文書にこのような禁忌記載のあることは知っていました。

けれど、エクセグランの添付文書にMAO阻害作用を有するとの記載はありません。

どうしよう。疑義照会しないといけないレベルの相互作用なのかな。

ぐるぐる考えながら、更なる情報を求めて検索しました。

「新しい抗パーキンソン病薬ゾニサミドの発見」と言うページがヒットしました。

「中等度のモノアミン酸化酵素阻害作用」「ゾニサミドはMAO 活性に対するIC50 はラットでは肝臓ミクロゾーム分画と線条体で著明な差があり、脳内では50% 程度のMAO 阻害作用を示すが、末梢ではほとんど作用しない」

これだ。ゾニサミドにもMAO阻害作用があるようです。エクセグランの添付文書には、パーキンソン病の適応はなかったけど…。

ともかく、血圧上昇は末梢でのMAO阻害によるノルエピネフィリンの増加と、トラマゾリンの直接的α作用による末梢血管収縮の相加作用と考えられるので、ラットのデータですが末梢でのMAO阻害作用のほとんどないエクセグランと、トラマゾリンとに臨床上有意な相互作用はないだろうと考えました。

投薬を終えて、もう少し検索していると、ゾニサミドにはエクセグラン錠100mgの他に、トレリーフ錠25mg・50mgと言うパーキンソン病が適応の商品が存在することが分かりました。

また、アルフレッサ学術に問い合わせたところ、MAO阻害薬の禁忌記載は類薬に揃えたものであること、エクセグランとの併用による急激な血圧上昇の症例報告はない、とのことが分かりました。

電子薬歴のアラート…もう少し賢くなってくれたらなあと思い、いやいや、それではわたしたちの存在意義がなくなってしまうじゃない、と思い直しました。



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シンバスタチン服用中にイトラコナゾールのパルス療法を受けて横紋筋融解症を来たした例。

こんにちは☺アロマ薬剤師🌿ゆき🌿です。今日は併用禁忌についての話を書きます。ちょっと真面目な話です😩

わたしが以前、過去の電子薬歴を見ていて見つけた症例です。

Aさん(仮)当時64歳は、内科で高コレステロール血症の治療を受けていましたが、ある時皮膚科から爪白癬の治療を受けることになりました。

これがその際の処方です。

イトラコナゾール400mg/日(爪白鮮のパルス療法。)
シンバスタチン10mg/日

当時担当した薬剤師は、イトラコナゾールとシンバスタチンが併用禁忌に当たる為、疑義照会しました。けれど皮膚科医師からは処方通りとの返答で、調剤したと記録にあります。

読み進めます。

イトラコナゾール服用3日目でAさんは顔面浮腫、体重も3~4kg増えました。血圧も低下していたそうです。Aさんは医師に電話で相談、イトラコナゾールとシンバスタチンを中止するように言われました。

中止したところ、浮腫みは治まったとの事です。

いったい、Aさんに何が起こったのでしょう。

イトラコナゾールはアゾール系の抗真菌薬です。薬物代謝酵素を阻害することが知られています。

機序として、薬物代謝酵素の活性中心であるヘム鉄にイトラコナゾールが配位結合することで、酵素を可逆的に阻害します。

そのため、阻害作用の発現にマクロライドのようなタイムラグがありません。飲んだ日から阻害作用が現れます。

阻害様式からは非特異的に複数のCYP分子種を阻害すると予想されますが、実際にはCYP3A4を強く阻害します1)。

そしてシンバスタチンの代謝はCYP3A4に強く依存します。

そうです。イトラコナゾールにより、シンバスタチンの代謝が阻害され、シンバスタチンの体内濃度が上昇したのです。

その結果、横紋筋融解症を発症したのでしょう。

浮腫は横紋筋融解症による腎不全によるものと考えられます。

横紋筋融解症は、骨格筋細胞の壊死や融解により、筋細胞内成分が血液中に流出した状態を言います。

流出した大量のミオグロビンが尿細管を閉塞し、急性腎不全を併発することが多いとされます。

それだけではなく、循環血液量減少にともなうショックや、高カリウム血症により突然の心停止をきたす危険があります。

早期大量輸液、高カリウム血症対策と尿アルカリ化、強制利尿が急性腎不全の治療およびその予防としておこなわれます。

Aさんには命に関わるような危険があったのです。

Aさんに起こったことは、予見できなかったのでしょうか。

PISCSと言う理論から、今回の併用でシンバスタチンの体内濃度がどの程度上昇したのか予測することが出来ました。

イトラコナゾールのCYP3A4代謝阻害率IR〉0.9

シンバスタチンのCYP3A4代謝寄与率CR=1.0

AUC上昇率=1/(1-IR・CR)・・・①

①式より、併用によってシンバスタチンのAUCは10倍以上になったと予測されます2)。

当時はPISCS理論はまだ発表されていなかったので、後知恵と言われればそうですが、添付文書で併用禁忌であること、症例報告を見れば危険な併用であることは分かったはずです。

Rhabdomyolysis-induced acute renal failure due to itraconazole and simvastatin association.  2011;26(2):79-80.

わたしたちは、どうしたら良かったでしょう?

少し長くなりますが、以下の引用をご一読下さい。

・・・薬剤師に疑義照会義務を負わせている法の趣旨は、「医師等の処方の過誤を正し、医薬品使用の適正を確保し、過誤による生命、健康上の被害の発生を未然に防止する」ためにあります。薬学的に疑義が残り、医薬品の適正使用にならないような場合に、医師が対応しないからといってそのまま調剤してしまったとすれば、この目的が達成されないことは明らかです。

このような趣旨で設けられた義務である以上、形式的に医師に確認をしたとしても、薬剤師の薬学的疑義が解消され、適正に使用されることが確認できなければ、薬剤師は義務を果たしたとはいえないと解釈されます。

今回の質問のような場合、薬剤師には注意義務違反(過失)が認められ、損害賠償責任を負うことになります。また,刑事責任や行政責任に問われる可能性も否定はできません。

・・・医師が疑義照会に応じないことはありえます。「医師と薬剤師の関係から考えると仕方ないのではないか」、「薬剤師が責任を負うのはおかしいのではないか」という意見もあるかと思います。薬剤師が医師を介して患者に責任を負っているのであれば、そのような考え方もできるでしょう。

しかし、薬剤師はあくまで独立の専門職であり、患者に対して直接責任を負っています。薬剤師は医師のために調剤をしているのではなく、患者のために調剤をしているのであり、患者のために最善を尽くさなければ義務を果たしたとはいえません。医師が疑義照会に応じず、医師との関係から疑義照会をしにくいとしても、患者にその不利益を負わせてよいことにはなりません。

「患者に健康被害が起こるかもしれないが、医師が疑義照会に応じないから仕方がない」と考えて調剤することは,患者に対して「健康被害(最悪の場合は死に至る)が起きても仕方がない」と判断しているといわれかねません。このような場合、患者に対して最善を尽くしたとは到底いえませんので、薬剤師は責任を負うことになります。当然のことですが,薬剤師が患者に対する義務を果たしたかどうかの判断のポイントは、あくまで患者のために最善を尽くしたかどうかなのです3)。

重い言葉です。

今回書いたケースも、形式的な疑義照会と言われて仕方ないですし、司法のステージに進んでもおかしくなかった事例です。

司法的判断がすべてとは言いませんが、引用した赤羽根先生は弁護士であるとともに薬剤師でもあります。わたしには、薬剤師と言う職業に期待を込めた言葉と思えました。

あなたならどうしますか?

参考文献

1)Vol.50 No.7 2014 ファルマシア 655 https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/50/7/50_654/_pdf

2)薬物動態の変化を伴う薬物相互作用2015 鈴木洋史,大野能之

3)薬局・薬剤師のためのトラブル相談Q&A47 赤波根秀宣 じほう

https://www.jiho.co.jp/Portals/0/ec/product/ebooks/book/45871/45871.pdf

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カルバマゼピンとグレープフルーツジュースの相互作用の強度を、理論から予測出来るか。

CYP3A4で代謝されるカルバマゼピンと、CYP3A4阻害作用を有するグレープフルーツジュース摂取についての考察です。

グレープフルーツジュース果汁に含まれるフラノクマリンと言うフラボノイドが、小腸粘膜にある薬を代謝する酵素CYP3A4と結合し、酵素としての機能を不可逆的に無くすことが、この相互作用の原因と考えられています。

阻害効果は酵素が新しく作られるまでの数日間持続します。併用により、カルバマゼピンのCmax及びAUCが1.4倍になったと言う報告があります1)。

テグレトールの至適血中濃度は4~12μg/mL(文献によっては4~10μg/mL)と幅が狭く、上限近くでコントロールしている場合は、グレープフルーツジュースの併用で至適濃度を超えることがあるかも知れません。

8μg/mL以上で、頭痛、嘔気、傾眠、活動性の低下、不安などが起こることが知られています。カルバマゼピンを服用している患者さんは、出来ればグレープフルーツジュースの飲用は避けたほうが良いかも知れません。

一般にグレープフルーツジュースは消化管における薬物代謝能を低下させるので、初回通過代謝における消化管の寄与が大きな薬物ほどグレープフルーツジュース摂取によって体内動態が大きく変動すると考えられます。

また、血漿蛋白結合率の大きな薬物は肝臓への移行が制限されることから、肝代謝の寄与が小さくなり、消化管代謝の寄与が相対的に大きくなります。

この考え方を利用すれば、薬物とグレープフルーツジュースの相互作用の大きさは、薬物の血漿蛋白結合率から推測できると考えられます。薬物を代謝する CYP3A4の小腸における含有量は、肝臓の80分の1程度です。

添付文書より、カルバマゼピンの血漿蛋白結合率は70~80%で、非結合率を20%と仮定すると、肝臓での代謝は80(酵素量比)x20(%、血漿蛋白質非結合率)=1600(任意単位)となるのに対して、吸収時の消化管内では血漿蛋白がないと仮定できますので、消化管での代謝は1(酵素量比)x100(%、血漿蛋白質非結合率)=100(任意単位)となります。

従ってこの場合、肝臓と小腸における代謝の寄与率は16:1となりますから、もしグレープフルーツジュース飲用によって、小腸におけるカルバマゼピンの代謝が完全に阻害されるとすると、体全体としてバイオアベイラビリティでの小腸と肝臓での代謝は94%に低下することになり、AUCは1.06倍程度に上昇すると考えられます2)。

このように実測値と理論値に乖離があります。論文ではTmaxは変化させなかったとの事なので、吸収速度に影響は与えなかったようです。

半減期について、アブストラクトには記載がなかったのですが、もし半減期が延長していれば、肝臓での代謝も阻害している可能性があります。25%程度阻害していれば、実測値と等しくなると考えます。

論文のコンクルージョンにも、” Grapefruit juice increases the bioavailability of carbamazepine by inhibiting CYP3 A4 enzymes in gut wall and in the liver” とありますので、その解釈で良いのかと思います。

1)Effect of grapefruit juice on carbamazepine bioavailability in patients with epilepsy.
2)月刊薬事、44:1587-1608 (2002)



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血漿蛋白結合率の高いリピトールは大量のグレープフルーツジュース飲用でAUCが2倍強上昇する。

リピトールの添付文書には、グレープフルーツジュース1.2L/日との併用により、本剤のAUC0-72hが約2.5倍に上昇したとの報告がある、と記載があります。

一般にグレープフルーツジュースは消化管における薬物代謝能を低下させるので、初回通過代謝における消化管の寄与が大きな薬物ほどグレープフルーツジュース摂取によって体内動態が大きく変動すると考えられます。

また、血漿蛋白結合率の大きな薬物は肝臓への移行が制限されることから、肝代謝の寄与が小さくなり、消化管代謝の寄与が相対的に大きくなります。

この考え方を利用すれば、薬物とグレープフルーツジュースの相互作用の大きさは、薬物の血漿蛋白結合率から推測できると考えられます。薬物を代謝する CYP3A4の小腸における含有量は、肝臓の80分の1程度です。

そこで、この仮定に基づいて、リピトールと大量のグレープフルーツジュース飲用時のAUCが、理論的にどの程度上昇すると予想出来るか、検証してみます。

リピトールの血漿蛋白結合率は、95.6~99.0%以上と記載がありますので、非結合率を1%と仮定すると、肝臓での代謝は80(酵素量比)x1(%、血漿蛋白質非結合率)=80(任意単位)となるのに対して、吸収時の消化管内では血漿蛋白がないと仮定できますので、消化管での代謝は1(酵素量比)x100(%、血漿蛋白質非結合率)=100(任意単位)となります。

従ってこの場合、肝臓と小腸における代謝の寄与率は4:5となりますから、もしグレープフルーツジュース飲用によって、小腸におけるカルバマゼピンの代謝が完全に阻害されるとすると、初回通過効果の小腸及び肝臓での代謝は44%にまで低下することになり、体内に移行する薬物量=バイオアベイラビリティx投与量(Ab=F・D)より、バイオアベイラビリティFがジュース飲用によりF’=F/0.44に上昇している、と表せます。

またGFJは小腸に限定されたCYP3A4阻害作用であり、全身クリアランス(CLtot)に影響を与えないと考えられるため、経口投与されて循環血に乗る薬物量Ab=F・D、Ab’=F’・D=F・D/0.44 CLtot=Ab/AUCevと言う式を適用すると、経口投与時のAUCevは2.3倍程度上昇すると考えられます。

これはケースレポートの数値とほぼ一致し、この仮定での予測に一定の妥当性があることが分かります。

グレープフルーツジュースと併用した場合のデータが無い薬剤の場合でも、CYP3A4の代謝寄与率が高く、血漿蛋白結合率が99%の場合、大量のグレープフルーツジュース飲用でAUCが2倍程度上昇することが予測されます。もしその薬剤の治療域が狭い場合は、休薬や減量などの注意が必要になると考えられます。




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ピロリ菌除菌の薬を飲む人が、他に飲んでいる薬を頓服も含めて全て病院と薬局で伝えたほうがよい、たったひとつの理由。

こんにちは。アロマ薬剤師🌿ゆき🌿です。

みなさんの中には、ご家族がピロリ菌の除菌を受けようと考えている方がいらっしゃるかも知れません。ピロリ菌除菌療法は、早期胃癌の方が内視鏡手術後に行うことで、胃癌の再発を抑制した、と言うエビデンスがあります1)。

治療については詳しいリーフレットが用意されていて、わたしの薬局にも常備されています。

手にとって見ると、除菌のリスク・ベネフィットや、除菌の成功率などについて、かなり詳しく書かれているのですが、薬剤師の視点からは重要なのに書いてない、と思うことがあります。

それは、薬の飲み合わせです。今日はピロリ菌除菌の薬の飲み合わせについてお話しようと思います。

ピロリ菌1次除菌のレジメンでは、胃酸分泌抑制薬+ペニシリン系抗生物質+マクロライド系抗生物質の組み合わせを、朝・夕食後に1週間飲んで頂きます。

このうち、マクロライド系抗生物質のクラリスロマイシン(商品名クラリス/クラリシッド)が、飲み合わせに注意が必要な薬です。

クラリスロマイシンは肝臓の酵素である「CYP3A4(シップスリーエーフォー)」で代謝されます。

その際に一部の代謝中間体がCYP3A4と結合して離れなくなり、CYP3A4が酵素として働かなくなってしまいます。結果、この酵素で代謝される全ての薬の体内濃度が高くなってしまいます。

この現象を「酵素が阻害(そがい)される」と言います。酵素阻害はクラリスロマイシンを飲み始めてから3、4日でピークに達し、飲み終わってからも3、4日は続きます。

クラリスロマイシンの阻害作用は、用量依存性があります。つまり、1日に飲む量が多い程、阻害作用が強くなります2)。

クラリスロマイシンは副鼻腔炎などの治療では1日量400mgですが、ピロリ菌除菌療法では、1日量400mgまたは800mgを服用します。800mgのレジメンで、より併用のリスクが高くなると考えられます。

ピロリ菌の除菌レジメンとは飲み合わせの悪い薬の代表として、シンバスタチンを例にとってみましょう。シンバスタチンはコレステロールの薬です。

ほぼ100%肝臓のCYP3A4で代謝されるので、クラリスロマイシンの影響を強く受けます。また、体内濃度が高くなると、横紋筋融解症と言う重篤な副作用を起こすリスクが高くなるので、飲み合わせに特に注意が必要です。

PISCS(ピスクス)と言う理論を用いる事で、仮にクラリスロマイシンとCYP3A4で代謝される薬を一緒に飲んだ場合、どれくらい体内濃度が高くなるのか、予測することが出来ます。

シンバスタチンを服用中に、クラリスロマイシン(1日量500~1,000mg)を服用した場合、AUC(エーユーシー、生体が利用できる薬の総量)が8.33倍と推定されました。

これは、シンバスタチン8倍量を飲んだような状況です。実際に、2剤を併用した結果、シンバスタチンのAUCが11.9倍になったと言う報告があります3)。

そして、実際にこの飲みあわせで横紋筋融解症を起こし、入院に至ったという症例が、複数報告されています4-8)。

リスクを回避するための取り組みが、日々の業務で行われています。シンバスタチンまたは類薬のアトルバスタチンとCYP3A4阻害剤の併用処方に関連するリスクについて、地域の薬剤師から知らされた時に、10人の医師のうち9人が処方を変更、または起こりうる副作用をモニターしました9)。

過去の報告から、一般に2種類以上の薬を処方されている患者の60%に、飲み合わせに問題がある可能性があるとされます10)。そして薬による副作用は、入院に至る原因の6.5%を占めていて、そのうちの17%は薬の飲み合わせが原因でした11)。

ですから、皆さんは薬局で必ずお薬手帳を作って下さい。そして病院と薬局の両方で提出し、薬の飲み合わせについてダブルチェックを受けて下さい。

使い方を誤れば諸刃の刃となる薬を、安全に、そして効果的に使用するための必須のツールとなるはずです。

参考文献

1)Effect of eradication of Helicobacter pylori on incidence of metachronous gastric carcinoma after endoscopic resection of early gastric cancer: an open-label, randomised controlled trial. Lancet. 2008 Aug 2;372(9636):392-7. doi: 10.1016/S0140-6736(08)61159-9.

2)Dose-dependent inhibition of CYP3A activity by clarithromycin during Helicobactre pylori eradication therapy assessed by changes in plasma lansoprazole levels and partial cortisol clearance to 6β-hydroxycortisol Clin Pharmacol Ther. 72. 33-43 (2002)

3)これからの薬物相互作用マネジメント 臨床を変えるPISCSの理論と実践  大野能之・樋坂章博 編著 じほう

4)Wagner J, Suessmair C, Pfister HW. Rhabdomyolysis caused by co-medication with simvastatin and clarithromycin. J Neurol. 2009;256(7):1182–1183. [PubMed]

5)Molden E, Andersson KS, Jacobsen D. Interactions between statins and macrolide antibiotics. [Article in Norwegian] Tidsskr Nor Laegeforen. 2007;127(12):1660–1661. [PubMed]

6)Kahri AJ, Valkonen MM, Vuoristo MK, Pentikainen PJ (2004) Rhabdomyolysis associated with concomitant use of simvastatin and clarithromycin. Ann Pharmacother 38:719 [PubMed][Google Scholar]

7)Lee AJ, Maddix DS (2001) Rhabdomyolysis secondary to a drug interaction between simvastatin and clarithromycin. Ann Pharmacother 35:26–31[PubMed][CrossRef][Google Scholar]

8)Molden E, Andersson KS (2007) Simvastatin-associated rhabdomyolysis after coadministration of macrolide antibiotics in two patients. Pharmacotherapy 27:603–607[PubMed] [CrossRef] [Google Scholar]

9) Molden E, Skovlund E, Braathen P. Risk management of simvastatin or atorvastatin interactions with CYP3A4 inhibitors. Drug Saf. 2008;31(7):587–596. [PubMed]

10)Potential drug-drug interactions in the medication of medical patients at hospital discharge.
Egger SS, et al. Eur J Clin Pharmacol 58, 773-8 (2003)

11)Adverse drug reactions as cause of admission to hospital: prospective analysis of 18 820 patients. Pirmohamed M, et al. BMJ 329, 15-9 (2004)



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薬剤師向け記事。PISCSを利用して臨床報告のない薬物相互作用を定量的に評価する方法を紹介しました。手計算も出来る程の簡単な式で、必要なパラメーターはAUCの他はたった2つだけ。

こんにちは。アロマ薬剤師ゆき、こと、研修認定薬剤師の奥村です。

今日は薬の相互作用の話をします。薬の飲みあわせが悪い、言われることがあります。飲み合わせが悪くなる仕組みは色々あるのですが、今回は薬が肝臓の酵素で代謝される際に、酵素の働きが邪魔されて体内濃度が高くなり、副作用が出やすくなる場合の話をします。

酵素で代謝される薬のことを基質薬、酵素を邪魔する薬のことを阻害薬と呼びます。CYP分子種で表される酵素ごとに、相互作用が規定されます。併用で薬の効果がどれくらい高くなるかは、一般にAUCと言うパラメーターを指標にされることが多いです。

AUC(Area Under the blood concentration-time Curve)は、日本語にすれば、血中濃度-時間 曲線下面積です。血中濃度の推移を時間で積分して求めた数値(面積)です。そのため、AUCは、最高血中濃度(Cmax)と半減期(t1/2)の双方の要素を含む、総合的な指標になります。一般的にAUCが大きいことは薬をたくさん利用できることを意味し、具体的には高い効果が得られる、あるいは副作用が強く出るといったことを意味します。

PISCSは、臨床報告のない組み合わせでもAUCの変化を予測する理論です。阻害薬の併用による経口投与時の基質薬のAUCの変化率は次の式で表されます。ただし、この式が適用できるのは、基質薬の未変化体としての尿中排泄の寄与が大きくない場合に限られることに注意して下さい。

阻害薬の併用時のAUC/AUC=1/(1-CRxIR)

CR(Conribution Ratio):CYP分子種の基質薬のクリアランスへの寄与率
IR(Inhibition Ratio):阻害薬の阻害率

実例をいくつか挙げます。

・CYP2D6が関与する相互作用
メトプロロール(CR:0.8)をパロキセチン(IR:0.9)と併用した場合、メトプロロールのAUCは3.6倍。
デキストロメトルファン(CR:0.9)をパロキセチン(IR:0.9)と併用した場合、デキストロメトルファンのAUCは5.3倍。

・CYP3A4が関与する相互作用
カルバマゼピン(CR:0.8)とグレープフルーツジュース(IR:0.8)を併用した場合、カルバマゼピンのAUCは2.8倍。
カルバマゼピン(CR:0.8)とクラリスロマイシン(IR:0.8)を併用した場合、カルバマゼピンのAUCは2.8倍。
カルバマゼピン(CR:0.8)とエリスロマイシン(IR:0.7)を併用した場合、カルバマゼピンのAUCは2.3倍。

このように理論値を求める事が出来ます。実測値を文献で調べる事が一番ですが、新薬等の理由で情報が少ない場合には、非常に有効な手法と考えます。

参考
「薬物動態の変化を伴う薬物相互作用2015」
https://medical-tribune.co.jp/news/poster_2015_j.pdf

Fizz DI AUC(血中濃度-時間曲線下面積)って何のこと?

AUC(血中濃度-時間曲線下面積)って何のこと?

ruruuunのブログ



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テグレトール(カルバマゼピン)とクラリスロマイシンで眠気が出ることを定量的に評価する試みをしました。

Aさんは17歳6ヶ月、体重不明です。てんかんの薬、カルバマゼピン500mg/日を1日2回に分けて服用しています。TDMのデータ不明です。クラリスロマイシンを飲んで、強い眠気が出たと聞きました。

ここでは、併用による血中濃度の変化を、定量的に評価する試みをします。

まず、カルバマゼピン血中濃度を以下の手法により推定します。6.13±1.46μg/mL(治療域4-12μg/mL)と考えられます。

17歳6ヶ月の平均体重53.1kgを使用。F・S・D/Tau=Css.ave・CLtotに次のパラメーターを代入します。
F=1、S=1、D=250、Tau=12、CLtot=0.064L/hr/kgx53.1kg
またVd=1.61×53.1kgより、FSD/2Vd=1.46

カルバマゼピンの至適血中濃度は4~12μg/mLですが、文献によっては4~10μg/mLとするものもあります。8μg/mL以上で、頭痛、嘔気、傾眠、活動性の低下、不安などが起こることが知られています。

Aさんは、クラリスロマイシンを服用して眠くなったとのことですが、体内でのカルバマゼピンの挙動は、どれくらい変わるのでしょう。

PISCSの理論からは、カルバマゼピン(CR:0.8)とクラリスロマイシン(IR:0.8)を併用した場合、カルバマゼピンのAUCは2.8倍と予測されます。

AUC(Area Under the blood concentration-time Curve)は、日本語にすれば、血中濃度-時間曲線下面積です。血中濃度の曲線の積分値(面積)のことで、利用できる薬の総量を意味します。AUCは、血中濃度×時間で表され、最高血中濃度(Cmax)や半減期(t1/2)の要素も含めた総合的な指標になっています。

一般的に、AUCが大きいことは薬をたくさん利用できることを意味し、具体的には高い効果が得られる、あるいは副作用が強く出るといったことを意味します。

類薬のエリスロマイシンでは、Cmaxは変化しないが、AUCは1.34倍、t1/2は1.46倍に延長、クリアランスは23%低下したとする報告があります。他の報告でもCmaxは上昇しませんでした。

パラメーターの変化は個人差が大きく、エリスロマイシン併用によるカルバマゼピン濃度の予測が困難であるため、併用の必要がある時には患者モニタリングを綿密に行うことが推奨されています。

https://www.fpa.gr.jp/global-image/units/upfiles/1348-1-20120514161648.pdf

予測は困難と書かれていますが、得られたデータから試算を試みようと思います。カルバマゼピンを成人に反復投与した場合の半減期は7~15時間とされます。ここでt1/2=11hrと仮定します。

蓄積率の手法を利用して、反復投与時の最高血中濃度(Css.max)が、単回投与時の最高血中濃度(Cmax)の何倍になるかを推定します。

Tau/t1/2=12/11=1.1 ゆえに蓄積率R≒2で、Css.maxはCmaxの約2倍になると推定されます。

エリスロマイシンの併用で、カルバマゼピンの半減期t1/2が1.46倍になったと言うデータを利用すると、半減期t1/2’=16hrです。

従って、Tau/t1/2’=12/16=0.75  ゆえに蓄積率R’=2.4~2.6 簡便に2.6倍とすると、R’/R=1.3
以上のことより、エリスロマイシンの併用により、定常状態のカルバマゼピンの最高血中濃度は、併用しない場合の1.3倍になると考えられます。

クラリスロマイシンの場合もおそらく半減期が延長し、反復投与することで定状状態の血中濃度が上昇したのではないかと推測されます。PISCSの予測より、併用時の最高血中濃度は1.3倍以上になったのではないかと考えられます。

カルバマゼピン服用中の5人の患者に、カルバマゼピンを30~40%減量した上でクラリスロマイシンを投与した報告があります。5人とも血中濃度が上昇し、3人は中毒域に達していました。著者らはカルバマゼピンを30~50%減量し、薬物濃度を注意深く観察することを勧めています。

Clarithromycin-carbamazepine interaction in a clinical setting. O’Connor NK1, Fris J. J Am Board Fam Pract. 1994 Nov-Dec;7(6):489-92. PMID:7847111



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パキシル(一般名パロキセチン)を飲んでいる人が、眼科を含めて他の病院を受診するときにしなければいけない、たったひとつのこと。

こんばんは。アロマ薬剤師🌿ゆき🌿です。

立春は過ぎましたが、まだまだ寒い日が続いていますね。今夜はティートリーの香りを選んで芳香浴しました。南国のリゾートホテルに来ているような気分になれます。

さて、今夜は薬の飲み合わせの話です。心療内科に通院しているAさん(仮)は、パキシルと言う薬を飲んでいます。SSRIと呼ばれるカテゴリーの薬で、いわゆる抗うつ剤です。

Aさんがいつものように心療内科の処方箋を持ってわたしの薬局に来られた時、電子薬歴(薬局で書いている薬のカルテです)を見ていたわたしは、数日前に内科医院から風邪薬のPL配合顆粒を処方されていたことに気づきました😲

あらら…と思いながら、わたしは頭の中でカウンターで話す内容を組み立てました。

「Aさん、こんにちは。先日内科から風邪薬が出てましたけど、眠くなりませんでした?」

「そうそう、ひどく眠くなって、飲むのを途中で止めてしまいましたよ。」

ああ、やっぱり…。Aさんの飲んだ風邪薬、PL配合顆粒には、鼻水鼻づまりの成分であるプロメタジンが配合されています。いわゆる抗ヒスタミンで、眠気を引き起こします💤

プロメタジンは、肝臓の酵素であるCYP2D6(シップ・ツー・ディー・シックス)で代謝、すなわち活性のないものに変えられますが、Aさんの飲んでいるパキシルは、このCYP2D6を働かなくさせてしまう性質があります。

そのため、プロメタジンが体から無くなるのに必要な時間が延長され、数回飲むうちに体内濃度が通常より高くなり、強い眠気を感じるようになるのです😵💤⤵

幸いAさんは途中で飲むのを止めて事なきを得ました。もしも飲み続けて自動車事故など起こしたら、大変な所でした🚑

Aさんには、パキシルを飲んでいる時にPL配合顆粒を飲むと眠気が強く出ることを説明し、心療内科以外の病院にかかるときは、必ずパキシルを飲んでいる事を口頭でも伝えて頂くようお願いしました。

PL配合顆粒の他、咳止めのメジコンや、心臓の薬のβ遮断薬の中にもCYP2D6で代謝されるものがあります。ひどい浮腫が出てβ遮断薬が飲めなかったケースを目にしています。珍しい事例では、緑内障の点眼のβ遮断薬が、パキシルと併用する事で徐脈や低血圧を起こしたと言う報告もあります💊

また、乳ガンの薬のタモキシフェンはCYP2D6で活性化される為、パロキセチンを飲んでいると期待する効果が得られない場合があります💊

このブログの読者で、パキシル(一般名はパロキセチン)を飲んでいる方がいらっしゃったら、病院と薬局で必ず申告下さい。ご協力をお願いします🙏

そして、飲んでいる薬の事で、なにか疑問があれば、薬剤師にご相談下さい。薬物療法のリスクを最少限に、効果を最大限にするのが、わたしたちの仕事です😉👍✨

読んで下さってありがとう😆💕✨

ゆきでした✨

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セントジョーンズワートのハーブティーやサプリを摂っている人が、病院や薬局で申告しないと行けないたったひとつの理由。薬によっては、効き目が弱くなる事があります。

こんにちは。研修認定薬剤師の奥村です。

今日は有給を頂いていて、久しぶりに妻とのんびりした時間を過ごしています。

さて、ハーブティーのセントジョーンズワートですが、病院でもらう薬の中に飲み合わせの良くないものがあります。

具体例を挙げると、免疫抑制薬のシクロスポリンや、強心薬のジゴキシンの血中濃度を低下させます。時に治療失敗を招いた事例も報告されています。

血中濃度が低下する理由は、何でしょう。ジゴキシンの研究でピーク濃度であるCmaxの低下が観察されています。この事から、薬物の吸収率の低下が影響しているのではないかと考えられています。

やや専門的になりますが、この現象は消化管の薬物代謝酵素CYP3A4及び、薬物汲み出しトランスポーターP-gpの増加によるものと説明されています。

この相互作用は意外と長く続きます。シクロスポリンを想定したシミュレーションで、セントジョーンズワートの影響が無くなるのに、2週間かかるとされています。

この記事を読んでいる方に、セントジョーンズワートを飲まれている方は、いらっしゃいますか?

もし飲まれているなら、病院を受診する際に医師・薬剤師に教えて下さい。効果的な治療を受けられるための大事な情報になると思います。

今日の記事は、いかがでしたか。皆さんの健康を守るための参考になれば幸いです。

参考「エキスパートが教える薬物動態」じほう

ヒーリングビューティショップ | HBS

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鬱の薬のパロキセチンを飲んでいる人が、病院や薬局で風邪薬をもらう時に申告しないと行けないたったひとつの理由。風邪薬によってはひどく眠たくなる場合があり、危険です。

こんばんは。研修認定薬剤師の奥村です。

風邪のシーズンですが、皆さんは大丈夫でしょうか。私は毎日マスクをして薬局のカウンターに立っています。

さて、風邪薬には大抵、抗ヒスタミンと言う成分が含まれています。鼻水や鼻づまりに効果がありますが、眠たくなる副作用があります。

この抗ヒスタミンは、鬱の薬のパロキセチンを飲んでいると眠気が強く出るものがあります。この理由を説明したいと思います。

薬の多くは肝臓の酵素で代謝され、薬効がなくなります。ところが、薬の中にはこの酵素の働きを邪魔するものがあります。

パロキセチンは薬物代謝酵素の「CYP2D6(シップツーディーシックス)」と呼ばれるものを働かなくさせてしまいます。代謝が正常な人でも、生まれつきこの酵素の働きが弱い人と同じくらいに低下します。1~数週間の服用で、この現象が起こります1)。

PL配合顆粒に含まれるプロメタジンや、市販の感冒薬に含まれるジヒェンヒドラミン、クロルフェニラミンと言った抗ヒスタミンはCYP2D6で代謝されます。

代謝能力が中程度の人が抗ヒスタミンを飲んだ場合も、過度の眠気が出ると言う報告もありますので、パロキセチンとの併用で重度の眠気が出る可能性を考えなくては行けません2)。

もしもこのブログを読んでいる方でパロキセチンを服用されていましたら、風邪薬にご用心下さい。飲み合わせに心配がありましたら、私たち薬剤師にご相談下さい。私たちはそのためにいます。

1)Inhibition of cytochrome P4502D6 activity with paroxetine normalizes the ultrarapid metabolizer phenotype as measured by nortriptyline pharmacokinetics and the debrisoquin test. Clin Pharmacol Ther. 2001 Oct;70(4):327-35. PMID: 11673748
パロキセチンはCYP2D6の強い阻害薬であり、1~数週間の服用で表現型が正常代謝型個体(EM)から低・欠損型個体(PM)様に変換するとされます。

2)Impact of CYP2D6*10 on H1-antihistamine-induced hypersomnia. Eur J Clin Pharmacol. 2006 Dec;62(12):995-1001. Epub 2006 Nov 7. PMID: 17089107
CYP2D6中程度代謝型個体(IM)でも過度の眠気が出ると言う報告があります。

参考「エキスパートが教える薬物動態」じほう

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