0.625㎎が6錠、5㎎が1錠で合っていますか?

内科の前の薬局で働いていた時の事です。Aさんのご主人がAさんの処方箋を持って来局されました。Aさんは高齢の女性、心房細動と慢性心不全の既往があって、総合病院の循環器科に通っています。この病気の性格上、薬の種類が多く、飲み方も複雑なので、薬局で一包化してお薬をお渡ししています。そのため時間がそこそこかかります。Aさんは疲れやすいので、処方箋のFAXをあらかじめ送っておいて、薬が出来上がった頃に車でご夫婦で来られ、車で待っている間にご主人が薬の受け取りをされる、と言うのが、最近のパターンでした。

既に一包化され、鑑査の済んだ薬を前にして、私は固まってしまいました。β遮断薬と呼ばれる薬の処方が、何かとてつもなく変なのです。β遮断薬は、心臓のアクセルを緩め、脈をゆっくりにしたり、心臓のポンプの押し出す力を緩める薬です。昔の医学常識では心不全に使ってはいけない薬だったですが、近年の研究で、少量をうまく使えば心不全の治療成績を上げることが分かったので、循環器の専門医師が使われる、諸刃の刃の薬です。

Aさんは、それまでβ遮断薬を0.625㎎ 6錠で服用されていました。それに加えて、今回5㎎ 1錠が追加されていました。増量幅が、常識から考えて異常ですし、そもそも違う規格(ミリ数)の薬を合わせて使うのも不自然です。私は、何としてもこの薬をそのままお渡しすることは出来ないと思い、行動を開始しました。

まずご主人に、「お医者さんから薬の変更について何か説明を聞いていますか?」と確認しましたが、薬の事は分からないとの事でした。そこで了解を頂いて、駐車場の車まで行って、奥様に再度尋ねて見ました。「何か薬を変えると聞きましたが、具体的には分かりません。何か病院に確認が必要ですか?お手間をかけますが、薬剤師さんにお任せします。」とのお言葉を頂きました。

疑義照会です。「お世話になります。◯◯薬局の薬剤師、奥村と申します。Aさんのβ遮断薬ですが、1回の増量にしては多いと思うのですが?」「外来看護師のBです。大丈夫ですよ、今回3.75㎎から5㎎への増量とカルテにも書いてあります。」ここで理解しました。0.625㎎ 6錠は削除されていないと行けなかったのです。その旨を看護師さんと確認し、β遮断薬の処方は5㎎ 1錠のみとなりました。Aさんに処方変更となった事を説明し、申し訳ないですが、作り直しをする時間の猶予を下さいとお願いしました。Aさん夫妻は快く待って下さいました。

今回の処方箋は、処方箋どおりに調剤していれば間違いなく重大な健康被害が発生したケースです。最後の砦として機能出来た事に感謝するとともに、薬剤師として一層の研鑽を積まなければ、と気持ちを引き締めた出来事でした。

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