インフルエンザの迅速検査が陰性でも、タミフルを処方されることはありますか?

こんにちは。今年は既にインフルエンザで学級閉鎖があったと言うニュースを聞きましたので、今日はインフルエンザ迅速検査についての話です。皆さんはインフルエンザを疑って病院にかかった時、鼻をぐりぐりして検体を取って検査を受けた事があると思います。あの検査は、どれくらい正確なのでしょうか?
 
複数の迅速検査キットを検討したメタ分析によれば、インフルエンザ検査キットの検査特性は、感度62.3%、特異度98.2%との報告があります。除外診断よりも確定診断に適した検査であることが分かります。言い換えれば、インフルエンザであることを証明するのは得意な検査ですが、インフルエンザでない事を証明するのは苦手な検査と言えます。

実例を挙げて、もう少し詳しく見て見ましょう。インフルエンザ流行期に38度の熱と咳嗽があれば、79%の確率でインフルエンザと言う疫学調査の報告があります。これを検査前確率として検査前オッズに変換すると、3.76です。

検査陽性の場合、陽性尤度比LR+は34.6です。これを検査前オッズに掛けると130.1、確率に変換すると、検査後確率は99.2%となります。すなわち、99%インフルエンザと解釈されます。
一方、検査陰性の場合の検査後オッズは、陰性尤度比LR-の0.384を検査前オッズに掛けると1.44、確率に変換すると、この時の検査後確率59%です。つまり、迅速検査が陰性でも、インフルエンザである確率が実に59%もあるので、たとえインフルエンザと診断されなくても、マスク・手洗・うがいなど、周囲への感染対策を怠らない事が必要です。医師によっては再度受診となってしまう負担を考えて、事前確率が十分高ければ検査しないでタミフル等のノイラミニダーゼ阻害薬を処方される事もあるでしょう。

検査が単純なものではなく、医学知識や統計学的な知識を駆使して解釈されていることが、お分かり頂けると思います。 問診や身体所見、周囲の流行状況を考えて検査前確率を推定する事、ベイズ統計学的な検査の解釈、また正確な手技も必要です。

こうした理由から、インフルエンザの検査は、A/B型インフルエンザ抗原(1470円)と免疫学的検査判断料(1440円)の二つの料金から成り立っています。

いかがだったでしょうか。ご家族の健康を守るためのご参考にして頂けると幸いです。
そして、病気のお子さんのいらっしゃるお母さんは、お大事になさって下さい。



糖尿病の薬のレパグリニドとピロリ菌除菌のクラリスロマイシンで重症低血糖を生じた例。

こんにちは。今回は薬の飲みあわせの話です。糖尿病で通院中のAさんはレパグリニドと言う薬を飲んでいます。膵臓からインシュリン分泌を促す薬です。この地域では珍しい処方でしたので、業務の合間に、インターネットを利用して、後学のために医薬品情報を収集しました。その中で、PUBMEDで気になる論文を見つけました。

レパグリニドと抗生物質のクラリスロマイシンを併用する事で、重症低血糖を生じたと言う症例報告です。レパグリニドの添付文書にクラリスロマイシンの相互作用は記載されていませんでしたが、薬物代謝酵素のCYP3A4と、薬物トランスポーターのOATP1B1を介した相互作用として、免疫抑制薬のシクロスポリンは記載があり、おそらくクラリスロマイシンも同様の機序により、レパグリニドの血中濃度を上げた事に起因する副作用と推察されます。

論文によれば、症例はピロリ菌除菌療法の途中で生じた有害事象であり、クラリスロマイシンの用量は1,000mg/dayでした。ちなみに日本の適応ではピロリ菌除菌の際のクラリスロマイシンの用量は400mg/dayまたは800mg/dayです。

クラリスロマイシンのCYP3A4を介する相互作用は用量依存的であり、400mg/dayは比較的安全なのかも知れません。しかし、トランスポーターも関与している可能性もありますので、もしAさんが除菌療法を開始することがあれば、低血糖を生じる恐れがあることを伝えた方が良いでしょう。800mg/dayで処方せんが来た場合は、処方医にこの論文に基づいた情報提供をしなくてはいけないケースと考えます。

このように、添付文書に書かれていない副作用は常に有り得ますので、私たち薬剤師は、日頃から最新の情報収集を怠らない努力が必用です。それも命に関わるような情報を扱っていますから、知らなかったでは済まされません。英文で書かれた最新の医学論文のチェックは、日本語の情報はタイムラグが有るため、今や必須の業務です。

最後に皆さんにお願いなのですが、どんな些細と思われる薬でも、併用する薬はカウンターで教えて下さい。薬物治療のリスクを最小限に、効果を最大にする為に、重要な情報です。

いかがだったでしょうか。ご家族の健康を守るために、ご参考になさって下さい。

1. Pharmacotherapy. 2008 May;28(5):682-4. doi: 10.1592/phco.28.5.682.
Severe hypoglycemia from clarithromycin-repaglinide drug interaction.

Khamaisi M(1), Leitersdorf E.

Author information: (1)Department of Medicine and the Diabetes Research Unit, Hadassah Hospital, Ein Kerem, and Hebrew University Medical School, Jerusalem, Israel. murir@hadassah.org.il

Many drugs have been reported to interact with repaglinide in patients with type 2 diabetes mellitus, resulting in hypoglycemia. However, to our knowledge, an interaction between clarithromycin and repaglinide in these patients has not been previously reported. We describe an 80-year-old man with end-stage renal disease and well-controlled type 2 diabetes (hemoglobin A1c < 7%) who was hospitalized for treatment of severe hypoglycemia. He had been receiving repaglinide 0.5 mg 3 times/day for the previous 2 years. Clarithromycin 500 mg twice/day had been started for Helicobacter pylori infection several days before admission. Within 48 hours of starting the drug, he developed severe hypoglycemia, which resolved with intravenous glucose administration. However, 48 hours later, the patient again experienced hypoglycemia and was unresponsive. Intravenous glucose administration again resolved the problem. Repaglinide was discontinued, and no further hypoglycemic episodes occurred. Clinicians should be aware of this possible clarithromycin-repaglinide interaction; in particular, in elderly patients with type 2 diabetes who are taking repaglinide and begin clarithromycin therapy, blood glucose levels should be monitored closely for potential dosage adjustment of repaglinide.

PMID: 18447665 [PubMed – indexed for MEDLINE]

2型糖尿病の患者では多くの薬物がレパグリニドと相互作用し、低血糖を引き起こすことが報告されている。しかし、我々の知る限りでは、これらの患者におけるクラリスロマイシンとレパグリニドとの相互作用はこれまで報告されていない。重度の低血糖症の治療のために入院した、末期腎疾患および2型糖尿病の良好なコントロール(ヘモグロビンA1c <7%)を有する80歳の男性を説明する。彼は過去2年間にレパグリニド0.5mgを1日3回投与していた。入院数日前にヘリコバクター・ピロリ感染のためにクラリスロマイシン500mgを2回/日投与しました。薬物投与開始から48時間以内に、彼は静脈内グルコース投与で解決した重度の低血糖を発症した。しかしながら、48時間後、患者は再び低血糖を経験し、反応しなかった。静脈内グルコース投与は再び問題を解決した。レパグリニドは中止され、それ以上の低血糖症は発生しなかった。臨床医は、この可能性のあるクラリスロマイシン – レパグリニド相互作用を知っていなければならない。特に、レパグリニドを服用しているクラリスロマイシン療法を開始している2型糖尿病の高齢者では、レパグリニドの投与量を調整するために血糖値を注意深く監視する必要がある。

脳梗塞/TIA後の心房細動には、抗凝固薬単剤で治療する場合がありますか?

Aさんは63歳男性です。脳梗塞/TIAの既往があり、以前から脳梗塞の再発予防の為に、抗血小板薬のシロスタゾール100mを服用していました。今回、心房細動が指摘され、シロスタゾール100mgは中止となり、リバーロキサバン15mgが新規に処方になりました。併用薬はオルメサルタン10mgとレボチロキシンS100μgの2剤のみです。この処方変更について考察します。

Aさんは心房細動による心原性脳梗塞の1次予防目的で、新規抗凝固薬(NOAC)が開始されました。心房細動が原因で起こる心原性脳卒中のリスクはCHADS2スコアによって推定し、評価されます。AさんのCHADS2スコアは、高血圧と脳卒中/TIAの既往がある事から3点で、脳卒中リスクは5.9%/年と推定され、高リスクに分類されます。2点(4.0%/年)以上でワーファリン(WF)による抗凝固治療が勧められます。WF服用による脳卒中リスクの相対リスク低下は、メタ分析1)から60%と報告されています。従って、CHADS2スコア3点では、WFにより3.6%/年の脳卒中を予防出来ることが予測されます。

1)Meta-analysis: antithrombotic therapy to prevent stroke in patients who have nonvalvular atrial fibrillation.

一方、JAST試験(低用量アスピリンvsプラセボ)、ACTIVE-W(DAPTvsWF)試験において、アスピリンやチエノピリジンと言った抗血小板薬には、心房細動に伴う脳梗塞の予防効果はないことが示されています2)。また、WASID 試験の結果において、頭蓋内血管狭窄がある非心原性の脳梗塞の脳卒中予防効果において、WFと抗血小板薬は効果が同等であり、WF内服患者に出血が多くみられました。

2)Japan Atrial Fibrillation Stroke Trial.(JAST) PMID: 16385088
3)ACTIVE Writing Group of the ACTIVE Investigators. Clopidogrel plus aspirin versus oral anticoagulation for atrial fibrillation in the Atrial fibrillation Clopidogrel Trial with Irbesartan for prevention of Vascular Events (ACTIVE W): a randomised controlled trial.  PMID:16765759

更に、BAT試験は、脳血管障害や心臓血管病にWFと抗血小板薬を投与する前向き観察研究で、重篤・重症な出血の年間発症率は、抗血小板薬単独で1.21%、抗血小板薬併用2.00%、WF単独2.06%、WFと抗血小板薬併用で3.56%であり、WFと抗血小板薬の併用がWF単剤治療に比べ出血イベントを1.5%/年増加させました。(NNH67)

4)Bleeding with Antithrombotic Therapy.(BAT)  

これらの知見から、心房細動のために抗凝固薬が不可欠な患者では、 効果と出血リスクを勘案して、アテローム血栓性脳塞に関しても抗凝固薬単剤での再発予防を図るのが先決との見解があります。

NOACに関しては、WFに比して頭蓋内出血は少ないとされますが、アテローム血栓性脳梗塞への有効性の報告がないため、今回のような患者にNOACの単剤使用がどこまで有効かは厳密には不明です。

患者のAさん固有の条件としては、高血圧で脳梗塞/TIAの既往があり、喫煙・飲酒習慣はありますが、糖尿病・脂質異常症がなく、比較的若年で(<65歳)、心筋梗塞の既往がない等、リスク因子は有るものも無いものもあります。出血リスクを評価するHAS-BLEDスコアは3~4点で高リスクであり、NOACであるアピキサバン単剤療法を考慮しても良いかも知れません。 以上を総合して、NOAC単剤で慎重に経過を観察しつつ、脳梗塞/TIAの再発があれば抗血小板薬を追加するような方針となるでしょうか。リスク要因である血圧のコントロールや過度の飲酒を避ける事等は今後も重要です。禁煙も望ましいでしょう。 参考文献『CORE JOURNAL 循環器 no2 2012 秋冬号』ライフサイエンス出版 P54-61「アテローム血栓性脳梗塞の既往がある心房細動に対し、強力な抗血栓治療を行うべきか?」企画 卜部貴夫 協力 名郷直樹

糖尿病の治療は厳格より中庸が良いですか?

こんにちは。今日は糖尿病のAさんの話をします。Aさんは67歳の男性、糖尿病の治療を受けています。脳卒中や心筋梗塞の既往はありません。治療の目安になる検査値は、本日もらった検査票でHbA1C7.2とのことです。薬の確認が終わったところで、Aさんから「正常値は5とか6とかって書いてあるけど、治療について、どれくらい頑張れば良いのかな」と、相談を受けました。

処方はSU剤のグリメピリド1mg、DPP4阻害薬のアログリプチン25mg、レニン・アンジオテンシン系阻害薬のバルサルタン80mg、スタチンのプラバスタチン10mgです。

Aさんの疑問に答えるために、論文を検索して、台湾の観察研究を見つけました1)。

【サマリー】2型糖尿病患者で、HbA1c7.0-8.0%、収縮期BP130-140、LDL-C 100-130の群が総死亡率が最も低かった。12643人のコホート研究。

これをみると、効果が最大になりそうなHbA1Cの目標値は、ずいぶん緩やかです。他の臨床研究でも、厳格治療は重症低血糖リスクが上がり、死亡率も上昇すると言う報告が散見されます。熊本スタディと言う臨床研究で、HbA1Cを7未満にすることで、網膜症や腎症と言った微小血管障害をある程度予防する効果が知られていますが、心筋梗塞のような大血管障害に関して、血糖値を厳格に管理することによる治療効果はあってもごく僅かのようです2)。

ガイドラインである「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」でも、65歳以上75歳未満でSU剤を使用している場合は、HbA1C7.5未満、下限6.5と設定されています。Aさんの年齢になれば、微小血管障害を予防する治療の利益は、若年の方に比べて相対的に低くなっているので、重症低血糖を予防するためには緩やかなコントロールの方がBetterと思われます。

いかがだったでしょうか。ご家族の健康を守るためのご参考になさって下さい。

1)All-cause mortality in patients with type 2 diabetes in association with achieved hemoglobin A(1c), systolic blood pressure, and low-density lipoprotein cholesterol levels. PMCID: PMC4210124 PMID: 2534771
2)「CQ3 糖尿病に対する厳格な血糖管理の効果は?」 CORE Journal 循環器 no.1 2012



肺MAC症化学療法について。特に透析の場合。

70代男性Aさんは、呼吸器内科から非結核性好酸球症の治療を受けています。

リファンピシンカプセル150mg 3カプセル 1日1回朝食後(※注:添付文書からは食前の空腹時がbetter)
エタンブトール塩酸塩250mg錠  2錠 1日1回昼食後 月・水・金の透析日の透析後
クラリスロマイシン錠200mg 1錠 1日1回朝食後

非結核性抗酸菌症の原因菌の80%以上をM.avium complex(MAC)が占めています。処方内容から、Aさんは肺MAC症の治療を受けているのではないかと考えられます。

肺MAC症化学療法ですが、基本はリファンピシン、エサンブトール、クラリスロマシンの3剤併用を行います(R・E・CAM:アール・イー・カムと略称されます)。単剤では効果が弱く、特にクラリスロマイシン単剤では数ヶ月以内に耐性菌が発生する為、注意が必要です。

学会推奨の国内の標準療法は、以下のようになります。
REF 10mg/kg/day 分1
EB  15mg/kg/day 分1
CAM 15mg/kg/day 分1または分2
(日本結核病学会非結核性好酸球症対策委員会/日本呼吸器学会感染症・結核学術部会)

また、透析の場合の用量については、以下のようになります。
REF 10mg/kg/day 1日1回 HD患者も非HD患者と同じ(透析性x)。
EB     10~15mg/kg/dayを48h毎、HD患者はHD日はHD後に投与(透析性○)。
CAM  1回200mgを1日1回(透析性x)。
(腎機能低下時の主な薬物投与量一覧 改定38版 2014年)

以上から、最初に挙げたAさんの処方内容は、おそらく肺MAC症に対するR・E・CAMの処方(透析時)であると推定されます。


CKDにおいて乳酸アシドーシスのリスク上昇があると言う結果は得られなかった。

前回のブログで、腎機能低下している患者にメトホルミンを投与する場合は注意が必要と書きました。2002年にCKDと言う概念が提唱され、腎臓病診療の標準化がなされています。「ビグアナイド薬の適正使用に関するRecommendation」においては、eGRR<30mL/min/1.73m^2の患者には投与禁忌とされていますが、腎機能がそこまで低下していない患者において、メトホルミンを投与すると、乳酸アシドーシスの発症は増加するのでしょうか。

CKDへのメトホルミン投与を評価したメタ分析が報告されています1)。この検討では、CKDにおいて乳酸アシドーシスのリスク上昇があると言う結果は得られませんでした。このメタ分析の結論は、以下のように要約されます。

①標準化eGFR45-60mL/min/1.73m^2で、腎機能が安定していれば、メトホルミンは使用可能である。
②腎機能が不安定であったり、増悪傾向があれば、メトホルミンの使用は避けるべきである。
③徐々に腎機能悪化し、それが糖尿病が原因と考えられる場合、標準化eGFR30-45mL/min/1.73m^2程度まではメトホルミンの継続は可能である。ただし、腎機能に応じた減量は必要である。
④標準化eGFR<30mL/min/1.73m^2では、メトホルミンは使用しない方がよい。

以下に、引用文献の英語・日本語(機械翻訳)アブストラクトを掲載しておきます。

1)[JAMA.2014 Dec 24-31;312(24):2668-75]PMID:25536258
出典「ホスピタリストのための内科診断フローチャート」

See comment in PubMed Commons below
JAMA. 2014 Dec 24-31;312(24):2668-75. doi: 10.1001/jama.2014.15298.
Metformin in patients with type 2 diabetes and kidney disease: a systematic review.
Inzucchi SE1, Lipska KJ1, Mayo H2, Bailey CJ3, McGuire DK4.
Author information
1Section of Endocrinology, Yale University School of Medicine, New Haven, Connecticut.
2Health Sciences Digital Library and Learning Center, University of Texas Southwestern Medical Center, Dallas.
3School of Life & Health Sciences, Aston University, Birmingham, United Kingdom.
4Division of Cardiology, University of Texas Southwestern Medical Center, Dallas.
Abstract
IMPORTANCE:
Metformin is widely viewed as the best initial pharmacological option to lower glucose concentrations in patients with type 2 diabetes mellitus. However, the drug is contraindicated in many individuals with impaired kidney function because of concerns of lactic acidosis.

OBJECTIVE:
To assess the risk of lactic acidosis associated with metformin use in individuals with impaired kidney function.

EVIDENCE ACQUISITION:
In July 2014, we searched the MEDLINE and Cochrane databases for English-language articles pertaining to metformin, kidney disease, and lactic acidosis in humans between 1950 and June 2014. We excluded reviews, letters, editorials, case reports, small case series, and manuscripts that did not directly pertain to the topic area or that met other exclusion criteria. Of an original 818 articles, 65 were included in this review, including pharmacokinetic/metabolic studies, large case series, retrospective studies, meta-analyses, and a clinical trial.

RESULTS:
Although metformin is renally cleared, drug levels generally remain within the therapeutic range and lactate concentrations are not substantially increased when used in patients with mild to moderate chronic kidney disease (estimated glomerular filtration rates, 30-60 mL/min per 1.73 m2). The overall incidence of lactic acidosis in metformin users varies across studies from approximately 3 per 100,000 person-years to 10 per 100,000 person-years and is generally indistinguishable from the background rate in the overall population with diabetes. Data suggesting an increased risk of lactic acidosis in metformin-treated patients with chronic kidney disease are limited, and no randomized controlled trials have been conducted to test the safety of metformin in patients with significantly impaired kidney function. Population-based studies demonstrate that metformin may be prescribed counter to prevailing guidelines suggesting a renal risk in up to 1 in 4 patients with type 2 diabetes mellitus–use which, in most reports, has not been associated with increased rates of lactic acidosis. Observational studies suggest a potential benefit from metformin on macrovascular outcomes, even in patients with prevalent renal contraindications for its use.

CONCLUSIONS AND RELEVANCE:
Available evidence supports cautious expansion of metformin use in patients with mild to moderate chronic kidney disease, as defined by estimated glomerular filtration rate, with appropriate dosage reductions and careful follow-up of kidney function.

Comment in
Metformin Use in Type 2 Diabetes Mellitus With CKD: Is It Time to Liberalize Dosing Recommendations? [Am J Kidney Dis. 2015]
Metformin should not be contraindicated in patients with type 2 diabetes and mild to moderate renal impairment. [Evid Based Med. 2015]
PMID:
25536258
PMCID:
PMC4427053
DOI:
10.1001/jama.2014.15298
[PubMed – indexed for MEDLINE]
Free PMC Article

以下、Googleによる機械翻訳。

抽象
重要性:
メトホルミンは、2型糖尿病患者のグルコース濃度を低下させるための最善の初期薬理学的選択肢として広く見られている。しかし、この薬物は、乳酸アシドーシスの懸念から、腎機能障害を有する多くの個体において禁忌である。

目的:
腎機能障害を有する個人におけるメトホルミン使用に関連する乳酸アシドーシスのリスクを評価すること。

証拠開示:
2014年7月、私たちは、1950年から2014年までの間、ヒトのメトホルミン、腎臓病、乳酸アシドーシスに関する英文記事をMEDLINEおよびCochraneデータベースで検索しました。レビュー、手紙、論説、症例報告、小文字シリーズ、トピック分野に直接関係しなかったか、または他の除外基準を満たした原稿。元々の818項目のうち、薬物動態学/代謝研究、大規模症例シリーズ、後ろ向き研究、メタアナリシス、および臨床試験を含む65件がこのレビューに含まれた。

結果:
メトホルミンは腎臓から排除されるが、薬物レベルは一般的に治療範囲内にとどまり、軽度から中等度の慢性腎疾患(推定糸球体濾過率、1.73m 2あたり30〜60mL /分の推定値)で使用すると乳酸濃度は実質的に上昇しない。メトホルミン使用者における乳酸アシドーシスの全発生率は、研究によって約3人/10万人年から10人/10万人年で変化し、一般に糖尿病患者全体のバックグラウンド率と区別できません。慢性腎臓病のメトホルミン治療患者における乳酸アシドーシスのリスクの増加を示唆するデータは限られており、腎機能が著しく低下した患者のメトホルミンの安全性を試験するためのランダム化比較試験は行われていない。人口ベースの研究では、メトホルミンが、2型糖尿病患者4人中1人(殆どの報告では、乳酸アシドーシス率の増加に関連していない)における腎臓リスクを示唆する優良ガイドラインに反して処方される可能性があることが示されています。観察研究は、その使用のための慢性腎臓禁忌を有する患者においてさえも、大血管の結果に対するメトホルミンの潜在的利益を示唆している。

結論と関係:
利用可能な証拠は、推定糸球体濾過率によって定義されるように、軽度から中等度の慢性腎疾患患者におけるメトホルミン使用の慎重な拡大を援助し、適切な用量の減少および腎機能の慎重なフォローアップを支援する。

メトホルミン服用中の乳酸アシドーシスの粗発症率は3.3人/10万人年であった。

メトホルミンは国内外で糖尿病の第一選択薬です。副作用として乳酸アシドーシスが有名ですが、危険因子はあるのでしょうか。また、乳酸アシドーシス発症の頻度はどの程度なのでしょう。

「ビグアナイド薬の適正使用に関する委員会」が、2012年2月1日にビグアナイドを安全に使用するための勧告(ビグアナイド薬の適正使用に関するRecommendation)を発表しました(2016年5月12日改訂)。その中で 次のことが述べられています。① 標準化eGFRが30mL/min/1.73m^2未満の患者には投与禁忌である事、脱水、ショック、急性心筋梗塞、重症感染症の場合などやヨード造影剤の併用などではeGFRが急激に低下することがあるので注意を要する事、腎血流量を低下させる薬剤(レニン・アンジオテンシン系の阻害薬、利尿薬、NSAIDsなど)の使用などにより腎機能が急激に悪化する場合があるので注意を要する事、②シックデイの際には脱水が懸念されるので、いったん服薬を中止し主治医に相談する事、③ 経口摂取が困難な患者や寝たきりなど全身状態が悪い患者には投与すべきではない事、④ 原則として75歳以上の高齢者では新規の投与は推奨しない事など。

また、頻度については、英国のデーターベースを用いたコホート研究で、メトホルミン服用中の乳酸アシドーシスの粗発症率は3.3人/10万人年であったと言う報告があります。発症には、急性心不全、尿路性敗血症、循環血液量減少、けいれん発作、急性腎不全と言った、機知の乳酸アシドーシスの危険因子が並存していました。以下に、論文アブストラクトと、本文の乳酸アシドーシスの項目の機械翻訳を掲載します。
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[要旨]

目的:乳酸アシドーシスは、メトホルミンの使用に関連している。低血糖症はSU剤を使用する主要な問題である。この研究の目的は、2型糖尿病患者の乳酸アシドーシスと低血糖のリスクを経口抗糖尿病薬を用いて比較することである。

研究デザインと方法:この研究は、経口抗糖尿病薬を使用している2型糖尿病の患者を同定するために、英国に拠点を置く一般実践研究データベースを用いたネステッド・ケースコントロール分析である。研究集団内では、乳酸アシドーシスおよび低血糖症のすべての事例が同定され、低血糖症例被験者は、年齢、性別、一般診療、診断された日付に基づいて4人までの対照患者とマッチさせた。

結果:研究対象者50,048人の2型糖尿病患者のうち、現在使用されている経口抗糖尿病薬の乳酸アシドーシス6例が同定され、メトホルミン使用者の間で10万人あたり3.3件、SU剤の使用者の間で10万人あたり4.8件の粗発生率が確認された。乳酸アシドーシスの危険因子として知られている関連合併症は、すべての症例において同定することができた。低血糖を起こしたケース2,025人と、マッチさせたコントロールの7,278人が同定された。SU剤の使用は、低血糖の重大な上昇リスクと関連していた。現時点のメトホルミンの使用と比較して、SU剤の現在の使用に対する調整オッズ比は2.79(95%CI 2.23-3.50)であった。

結論:経口抗糖尿病薬の現在の使用中の乳酸アシドーシスは非常にまれであり、並存する疾患と関連していた。血糖降下のエピソードは、SU時の使用者の間ではメトホルミンの使用者よりも実質的に多くみられた。

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Diabetes Care. 2008 Nov;31(11):2086-91. doi: 10.2337/dc08-1171. Epub 2008 Sep 9.

Metformin, sulfonylureas, or other antidiabetes drugs and the risk of lactic acidosis or hypoglycemia: a nested case-control analysis.

Bodmer M1, Meier C, Krähenbühl S, Jick SS, Meier CR.
Author information
•1Division of Clinical Pharmacology and Toxicology, University Hospital Basel, Basel, Switzerland.

Abstract

OBJECTIVE:
Lactic acidosis has been associated with use of metformin. Hypoglycemia is a major concern using sulfonylureas. The aim of this study was to compare the risk of lactic acidosis and hypoglycemia among patients with type 2 diabetes using oral antidiabetes drugs.

RESEARCH DESIGN AND METHODS:
This study is a nested case-control analysis using the U.K.-based General Practice Research Database to identify patients with type 2 diabetes who used oral antidiabetes drugs. Within the study population, all incident cases of lactic acidosis and hypoglycemia were identified, and hypoglycemia case subjects were matched to up to four control patients based on age, sex, practice, and calendar time.

RESULTS:
Among the study population of 50,048 type 2 diabetic subjects, six cases of lactic acidosis during current use of oral antidiabetes drugs were identified, yielding a crude incidence rate of 3.3 cases per 100,000 person-years among metformin users and 4.8 cases per 100,000 person-years among users of sulfonylureas. Relevant comorbidities known as risk factors for lactic acidosis could be identified in all case subjects. A total of 2,025 case subjects with hypoglycemia and 7,278 matched control subjects were identified. Use of sulfonylureas was associated with a materially elevated risk of hypoglycemia. The adjusted odds ratio for current use of sulfonylureas was 2.79 (95% CI 2.23-3.50) compared with current metformin use.

CONCLUSIONS:
Lactic acidosis during current use of oral antidiabetes drugs was very rare and was associated with concurrent comorbidity. Hypoglycemic episodes were substantially more common among sulfonylurea users than among users of metformin.

PMID:18782901PMCID:PMC2571051DOI:10.2337/dc08-1171
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乳酸アシドーシス

我々は、乳酸アシドーシスの記録されたコードを有する14人の患者を同定した。医療記録のマニュアルレビューの後、ケトアシドーシス、呼吸性アシドーシス、または非酸性高浸透圧不全を有するため、7人の患者を除外した。 5人の患者が現在のメトホルミン使用者であり、1人の患者(No.4)は過去のメトホルミン使用者として分類され、1人は現在のグリクラジド使用者であった(表1)。現在、経口抗糖尿病薬を使用している6人の被験者のうち、5人は乳酸アシドーシスの既知の危険因子(急性心不全、尿路性敗血症、循環血液量減少、けいれん発作、急性腎不全)の急性増悪に苦しんでいた。 7例中2例が死亡した(No.1、No.5)。メトホルミン使用者数、処方箋枚数、およびメトホルミン処方あたりの平均錠剤数に基づいて、メトホミン使用者における乳酸アシドーシスの粗発生率は、10万人年あたり~3.3人であると評価した。スルホニルウレアの現在の使用中の乳酸アシドーシスの粗発生率は、10万人年あたり~4.8であった。ケース(症例)数が小さいため、正式な分析は行われなかった。
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Lactic acidosis
We identified 14 patients with a recorded code for lactic acidosis. After manual review of the medical records, we excluded seven patients because they had ketoacidosis, respiratory acidosis, or nonacidotic hyperosmolar dysfunction. Five patients were current metformin users, one patient (no. 4) was classified as a past metformin user, and one was a current gliclazide user (Table 1). Among six case subjects with current use of oral antidiabetes drugs, five suffered from acute worsening of known risk factors for lactic acidosis, namely acute heart failure, urosepsis, hypovolaemia, seizure, or acute renal failure. Two of seven patients died (nos. 1 and 5). Based on the number of metformin users, prescriptions, and average number of tablets per metformin prescription, we assessed a crude incidence rate of lactic acidosis in metfomin users of ∼3.3 per 100,000 person-years. The crude incidence rate of lactic acidosis during current use of sulfonylureas was ∼4.8 per 100,000 person-years. Due to the small case number, no formal analyses were conducted.

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コレステロールが下がっても、薬は続けないといけませんか?

こんにちは。今日はコレステロールの薬を飲んでいるAさんの話です。Aさんは73歳女性。高血圧と脂質異常症で通院中です。標準体型で腎機能は保たれています。合併症や既往はありません。カウンターで薬の確認が終わった後、おもむろにバッグから血液検査の検査票を取り出して話し始められました。

「悪玉コレステロールのLDL109、善玉コレステロールのHDL46と、今までになく低くなっていてね。それでも薬を飲み続けないといけないか、主治医にも相談したんだけれど、はかばかしい答えが返って来なかったの。主人に合わせてササミなんかをメインに動物性脂肪を減らしたり、食事を気をつけた生活を3ヶ月続けたせいと自分では思うの。血圧も上が110とか120くらいまで下がっているわ。(検査票から腎機能は正常、糖尿病や脳梗塞、心筋梗塞の既往はないことは確認ずみ)。出来れば薬を飲みたくないんだけれど、あなたは率直にどう思う?」

治療契約は医師としか結べない為、Aさんには判断材料を伝えて、次回診察時に主治医の先生ともう一度相談して頂くことにしました。以下、Aさんにお伝えした内容です。

・スタチンのクリニカルパスについて
現在のガイドラインではLDL180程度でスタチン系の薬を開始し、レギュラースタチンのメバロチンによってLDLは20%程度下がる。合併症や既往がなければ、Aさんの年齢ではLDL140が治療の目安になる。

・非薬物療法の効果について
食事や運動などによってLDLは15%程度下がる。動物性脂肪の摂取により体内でコレステロールが合成されるので、避けるのは正解。

・コレステロール低下させる意義について
動脈硬化の進展を阻止し、脳梗塞・心筋梗塞を予防するのが意義だが、欧米人に比して日本人は非常に低リスクのため、糖尿病や腎症など合併症や脳梗塞・心筋梗塞の既往がなければ未治療でも発症による心筋梗塞の発症リスクは10年で1%未満。

・スタチンの利益と不利益について
糖尿病や腎症の合併、脳卒中や心筋梗塞の既往があれば、利益は相対的に大きくなるが、なければ利益は小さい。不利益は稀な筋傷害の他、恒久的に薬のコストがかかること。かけすての保険のようなものと考えてよい。LDL100 HDL40程度に降下による不利益はおそらくないだろう。

・スタチンの服用について
半量にすれば、スタチンのLDL低下効果は減量前の6割程度になる。隔日服用はLDLは低下するが脳卒中や心筋梗塞予防のエビデンスはない。

いかがだったでしょうか。ご家族の健康を守る参考になさってください。


糖尿病で尿蛋白が+1だったけれど、腎症になっている?

こんにちは。今日は糖尿病のAさんの話をします。Aさんは糖尿病の薬を飲み始めて9年になる、45歳の男性です。薬は、メトホルミン750mg/日、グリメピリド2mg/日、ロサルタン50mg/日です。HbA1C6.4、血圧は診察時132/81と良好との事。糖尿病手帳を出しながら、「今日は尿蛋白が1+だったけど、大丈夫かな」と言われました。尿蛋白+1は、どんな意味を持っているのでしょうか。

尿蛋白定性1+は、おおよそ尿中蛋白30mg/dLに相当します。一般の人においては、水分をあまり摂らずに濃くなった尿、すなわち濃縮尿において尿蛋白1+は珍しいことでなく、病的な意味がない事もよくあります。1) 逆に病的な蛋白尿が希釈により±になることもあります。

このように尿蛋白定性の意義は尿の濃縮度(尿比重)により異なりますが、尿蛋白1+であれば、46%の確率で0.5g/日(≒g/gCr)以上の顕性蛋白尿と言う報告があります。2) 日本の疫学研究である、JDDM(Japan Diabetes Clinical Data Management Study)によると、日本人2型糖尿病患者の31.6%が微量アルブミン尿であり、10.5%が顕性腎症でした。一般的には、糖尿病を発症して血糖コントロールが不良なままであると、10~15年後には顕性蛋白尿が出現するとされています。

腎症の病期については、300mg/gCrの尿中アルブミン3)、または0.5g/gCrの持続蛋白尿があれば顕性蛋白尿と見なされます。 Aさんは血糖コントロールは良い方ですが、糖尿病罹病が9年以上あるので、糖尿病に伴う早期腎症~顕性腎症の可能性があるかも知れません。尿中蛋白量が少なくても、アルブミン尿が増加している事もありますので、今後尿中微量アルブミンの検査があればチェックが必要です。4)

また、腎機能の指標であるeGFRが100を超えていれば、早期腎症期に特徴的な糸球体過ろ過が起こっている可能性もあります。

Aさんは既に腎保護作用のあるRAS阻害薬ロサルタン5)を服用しているので、薬物治療の外では減塩が好ましいと考えられます。具体的には、塩分1日量を7~8g程度に減らす事が推奨されています。治療では、今後もHbA1C7.0未満の良好なコントロール、診察時の血圧を130/80未満を目標にコントロールして行くことも課題です。

いかがだったでしょうか。ご家族の健康を守るためのご参考になさって下さい。

1)30歳以下の若い人では体位性蛋白尿と言って体動によって軽度の蛋白尿が出現する場合がありますが、これは生命予後や腎機能には影響がありません。安静時に蛋白尿が消失するので、早朝第一尿で鑑別が可能です。早朝尿の検査が難しければ、来院時の検体と、その後2時間以上安静にしてもらって取った検体を比較することで、体動による尿蛋白と確認出来ます。

2)Am J Kidney Dis. 2005 May;45(5):833-41

3)尿中アルブミン量(mg/L)を尿クレアチニン(g/L)で割った、アルブミン指数[mg/gCr]は、随時尿でも24時間蓄尿によく相関する数値です。尿中蛋白1+を対象に、3回中2回が30~299mg/gCrであれば、微量アルブミン尿が出ている、早期腎症と判定されます。

4)1日尿蛋白量の推定には随時尿による尿蛋白/クレアチニン比が有効です。尿クレアチニン排泄量を1gと仮定すると、次式が成り立ちます。

尿蛋白排泄量(g/日)≒随時尿蛋白濃度/尿クレアチニン濃度x尿クレアチニン排泄量
=随時尿蛋白濃度/尿クレアチニン濃度[g/gCr]

ただし、この式から分かるように、筋肉量が少ない場合や末期腎不全ではクレアチニン排泄量が低下(尿クレアチニン排泄量<1)し、過大評価しやすくなります。反対に、筋肉量が多い場合はクレアチニン排泄量が多く(尿クレアチニン排泄量>1)、過小評価しやすくなりますので、解釈には注意が必要になります。尿蛋白/クレアチニン比が0.2g/gCr未満の場合は正常範囲、3回続けてチェックしてこの基準以下なら有意な蛋白尿がないと判断出来ますが、糖尿病患者の場合は早期腎症を見逃してしまうので、微量アルブミン定量を測定します。

5)RENAALに組み込まれた顕性腎症のある2型糖尿病患者のうち、日本人96症例に対する事後(post hoc)のサブグループ解析では、ロサルタン投与群はプラセボ投与群に比して血清クレアチニンの倍化、末期腎不全、死亡と言った複合エンドポイントの相対リスクを45%減少させ、有意な蛋白尿の減少も認められました。


糖尿病だと、コレステロールの基準は厳しくなりますか?

こんにちは。今日は糖尿病のAさんの話をします。Aさんは48歳の男性、体格は標準、喫煙習慣があります。血圧は140/90程度。糖尿病の薬のメトホルミン500mg/日、血圧の薬のバルサルタン80mg/日を服用していましたが、今回、コレステロールの薬のピタバスタチン2mgが追加となりました。

「それ程コレステロールは高くないはずなんだけどなあ」と言いながら、検査票を差し出されました。見せてもらうと、悪玉コレステロールのLDLは140、善玉HDL42でした。確かにそれ程高い数値ではありません。Aさんはコレステロールの薬を本当に飲まないといけないのでしょうか。

皆さんも会社の検診など受ける機会があると思います。一般の検診でコレステロールの治療を勧められるのはLDL180程度ですが、これは糖尿病の既往のない人に限った話です。過去の疫学調査から、糖尿病の人は糖尿病でない人と比べて、心筋梗塞や脳卒中が起こりやすいことが分かっています。1)このため、一般の人より低い数値をLDLの治療目標とします。2)糖尿病では、LDL<120(ないし<100)が、治療目標となります。糖尿病でない人と同様に、心筋梗塞や脳梗塞を予防する効果が報告されています。3)

Aさんに今回追加となったピタバスタチンは、ストロングスタチンと呼ばれ、悪玉コレステロールが-40%程度下がることが添付文書に書かれています。Aさんは、今回の薬を服用することで、LDL84程度まで降下することが予想されます。そして、心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクをベースラインの2/3程度にする効果が予想されます。

心筋梗塞など、冠動脈疾患のベースラインリスクは、吹田スコアと呼ばれるスコアリングで推定することが出来ます。Aさんの場合、年齢38点、男性0点、喫煙5点、糖尿病6点、血圧4点、LDL7点、HDL-5点、腎機能0点で、合計55点、表を参照すると、この場合10年間の冠動脈疾患発症リスクは2-9%未満で、中程度リスクと予想されます。

つまり、糖尿病などでAさんと同程度のリスクを有する方が100人いれば、10年のうちに心筋梗塞など起こさないで済むのは91~98人ですが、スタチンを飲み続ける事で、94~99人の人が心筋梗塞などを起こさないで済むと推定されます。

スタチンを服用することで発生する対抗リスクは、横紋筋融解症があります。有名な有害事象ですが、最近の研究では発症はごく稀です。10万人がスタチンを服用して、年間に発症しない人数は9万9999人以上です。4)

専門家の立場で利益・不利益を判断する場合、イベント発症確率を重視しますので、糖尿病でベースラインのリスクが高いのであれば、スタチンを飲む利益はあると判断するでしょう。

いかがだったでしょうか。ご家族の健康を守るために、ご参考になさって下さい。

1)日本の疫学研究であるJDCS(Japan Diabetes Complication Study)の9年次中間報告によると、2型糖尿病患者の冠動脈疾患・脳卒中の発症率は10年リスクに換算すると9.6%、7.6%であり、久山町一般住民の各々3倍、2倍でした。

2) JDCSでは2型糖尿病患者の冠動脈疾患発症に関する最大の危険因子はLDLでした。LDL100mg/dL未満の心疾患の発症リスクに比較して、160mg/dL以上の場合は3.6倍になりました。糖尿病患者がLDL100mg/dLをカットオフ値とする立場の論拠のひとつです。ただ、薬でLDLを下げる事で、実際に死亡率が下がるかは、臨床試験の結果を知らねばならず、また別の機会にお話します。

3)英国で行われたCARDSスタディは糖尿病と心血管リスクを有する患者にアトルバスタチンとプラセボを投与して、脂質低下療法の効果を評価しています。スタチン投与群の心血管イベントは有意に低く(37%減少)、全死亡も低下傾向(27%減少)を示した為、試験は早期終了されました。PMID:15325833

4) アトルバスタチン、プラバスタチン、およびシンバスタチンの単独療法で、横紋筋融解症の発症は、0.44/10,000人年でした。ただ、スタチンにフィブラートを併用すると、特に高齢の糖尿病患者でリスクが増加するようです。特にフィブラートと組み合わせたセリバスタチン(本邦未発売)は、年間約10人の治療患者のリスクをもたらしたと報告されています。PMID:15572716